[SONY] TC-RX55(1989年発売)のレビュー [カセットデッキ]
動作動画
関連:[SONY] TC-RX55(1989年発売)のレビュー [カセットデッキ]
TC-RX55
1989年に発売された、SONYのカセットデッキである、TC-RX55を手に入れた。
価格は36,900円で、前機種のTC-RX51やその前のTC-RX50の39,800円から、2,900円下がった。
関連:[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
1989年(昭和64年/平成元年)
・1月7日:昭和天皇崩御(昭和64年→平成元年)
・2月13日:リクルート創業者の江副浩正が逮捕(リクルート事件)
・2月24日:大喪の礼(たいものれい)
・2月28日:富士通が「FM TOWNS」発表
・4月1日:消費税法施行(3%)
・4月1日:仙台市が日本で11番目の政令指定都市に移行
・4月11日:神奈川県川崎市高津区の竹やぶで1億円の札束が発見される
・4月17日:横山やすしが乗用車を運転中ミニバイクと衝突、吉本興業は横山との契約を解除
・4月21日:ゲームボーイ発売
・4月25日:竹下登首相がリクルート事件の責任で辞任表明
・4月30日:名寄本線・天北線がこの日限りで廃止
・6月2日:竹下内閣が総辞職
・6月3日:宇野内閣発足
・6月24日:ひばり死去(52)、7月6日に女性として初の国民栄誉賞を受賞
・7月11日:中森明菜がマッチの自宅で(略)
・7月23日:第15回参議院議員通常選挙で土井たか子委員長率いる日本社会党が第一党に、自民党大敗で宇野宗佑首相辞意表明
・8月10日:海部内閣発足
・9月1日:ジャスコ→イオン
・9月28日:TBS「ザ・ベストテン」が放送終了、12年の歴史に幕
・9月29日:横綱・千代の富士に相撲界では初となる国民栄誉賞
・10月9日:千葉市に幕張メッセが開場
・10月9日:C-C-Bが日本武道館でのライブを最後に解散
・11月4日:オウム真理教による坂本弁護士一家●●事件発生
・12月29日:東証の大納会で日経平均株価が史上最高値の38,957円44銭(同日終値38,915円87銭)を記録するが、これを最後に翌年の大発会から株価は下落へ転じ、バブル景気は崩壊へ
・1月1日:BARBEE BOYS「目を閉じておいでよ」
・1月25日:浅香唯「TRUE LOVE」
・4月19日:浜田麻里「Return to Myself」 ’89カネボウ化粧品 夏のキャンペーンソング
・4月21日:プリンセス・プリンセス「Diamonds」 ソニーのカセットテープCMソング
・7月5日:Wink「淋しい熱帯魚」(第31回 日本レコード大賞 大賞受賞)
・9月6日:工藤静香「黄砂に吹かれて」
・9月27日:浅香唯「DREAM POWER」
掲載カタログ
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1989年4月]
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1989年6月]
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1989年10月]
1989年6月の「カセットデッキ 総合カタログ」に、上位機種(17,900円高)となるTC-K500Rが「新発売」として登場している。
↑TC-K500R(1989年) 54,800円
関連:[SONY] TC-K500R(1989年発売)のレビュー [カセットデッキ]
詳細
メカデッキはTCM-170で、ソレノイド(電磁石)を用いた機種。
↑銅線巻きの部品がソレノイド
PM901 1-454-456-11 SOLENOID, PLUNGER
テープ窓は光らず、扉は手動式。
・オートリバース(クイックリバースはない)
・LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッド
関連:[SONY] クイックリバース(QUICK REVERSE)機能 [カセットデッキ]
関連:[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]
・DOLBY HX PRO搭載(前機種のTC-RX51では非搭載)
・MPX FILTER搭載(前機種のTC-RX51では非搭載)
・スーパーバイアスを採用(TC-RX50時点で搭載)
・テープセレクトが自動(前機種のTC-RX51では手動)
・FL管(但し小さい)
・ドルビーB/C
・リモコン受光部あり
・AMS(オートマチックミュージックセンサー)なし(次機種のTC-RX70から搭載)
付属するワイヤレスリモコンはRM-900Sであるが、RM-J501やRM-J510が使えた。
当然ながら、扉開閉や電動REC LEVEL、DISPLAY MODEなど、TC-RX55に機能がないものは動作しない。
関連:[SONY] ワイヤレスリモコン(RM-J701/RM-J702/RM-J703/RM-J710/RM-J501/RM-J510) [カセットデッキ]
・サイズ:幅430×高さ120×奥行285mm
・消費電力:16W(前機種から3W増加)
奥行は
・TC-RX50:225mm
・TC-RX51:255mm
・TC-RX55:285mm
と、30mmずつ増えてきている。
次機のTC-RX70と同じ大きさであり、天板は流用できる。
状況
電源は入り、FL管も点灯するが、テープを入れても動作しない。
ということで、開けてみる。
内部
基板が斜めになっている!(仕様)
メイン基板と前面基板、前面端子、REC LEVELが、ケーブルではなく針金でつながっているという、変な設計。
よって、FL管を拭くために前面基板を外そうとすると、メイン基板も外さなければならない。
逆に、ハンダ割れチェックのためにメイン基板を外そうとすると、前面基板も外さなければならない。
前面基板を外すためには、前面パネルは当然のこと、REC LEVELツマミも外す必要がある。
REC LEVELツマミを引き抜いて、内部にあるナットを外す。
当然ながら、針金をクネクネしていると金属疲労で断線、及びハンダ割れが生じるので、極力曲げないように。
メカ部
メカデッキ:TCM-170RB11
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
TC-RX50のメカ部に、基板を1枚足したような感じ。
その足し方も、やはり針金で繋がっているという、変な設計。
ここはソケット式で抜けはするが…
メカ部と基板をつなぐケーブルが短いため、仮組みで動作させようとすると大変。
ゴムベルトは残っていたが、かなり伸びていて機能していない。
分解してゴムベルトを交換する。
が、フライホイールの片方に、劣化によるひび割れが…
フライホイールの溝にも、多数のひび割れが見られる。
関連:[SONY] フライホイールの劣化(ひび割れ) [カセットデッキ]
関連:[SONY] フライホイールの劣化(ひび割れ) [TCM-170]
流石はSONY、要所要所に容易に劣化する素材/部品を使用し、的確に「ソニータイマー」を発動させる、これが世界に誇る日本の技術である!
ゴムベルトを交換する。
TC-RX50のところでも書いたが、本機はリバース機であり、左右のキャプスタン(=フライホイール)が互いに逆に回転しないとならないので、以下のように「σ(シグマ)」型に掛ける。
ベルトは右の突起に仮にかけておき、
後でピンセットでモーターに掛ける、よくある方法。
ゴムベルトは、角ベルトで断面1mm、折長110mm(=直径70mm)あたりが妥当な感じ。
仮組して操作するも、モーターが止まったりして不安定。
IC703(-7V)が、ハンダ割れでグラグラな状態だった。
基板を取り出し、裏面を観察。
明らかにダメなIC703、怪しいIC701、念のためIC702とLINE IN/OUTに、再ハンダを行った。
・IC701:8-759-604-29 IC M5F7805
・IC702:8-759-604-86 IC M5F7807
・IC703:8-759-604-90 IC M5F7907
IC701、IC702、IC703は強烈に発熱するので、仮組で動作させる場合、熱を逃がす状態にしないと危険!
↑このまま動かすと危険!
この3本脚の部品(レギュレータ)は、たいてい背面に接触するように設計されているが、本機は上述のように基板が斜めになっているので、本体底面中央あたりに熱を逃がすようになっている。
ヘッドは、TC-RX70/TC-RX77/TC-RX79と同じように見えるが、クイックリバースのセンサーがない。
モーターは33E2L12Cで、この1個で全てを動かしている。
905 X-3343-408-1 MOTOR ASSY (M901)
「881021」とあるので、1988年製?
# TC-RX70以降の新メカだと、モーターは3個。
ゴムベルトを交換したら、テープスピードの調整が必要。
調整箇所は、モーター裏面にある穴の、細長い方(LOW)。
↑時計回転で速くなる
穴の内部が見えないが、プラスドライバー(#0)を入れて回す。
もう一つの穴(HIGH)でも調整できるが、これを速くすると早送り巻き戻しも速くなり、テープ終端での衝突が大きくなり、テープが切れる恐れが出てくる。
メカ部はTC-RX50と類似しているので、以下記事も参考に。
関連:[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
ピンチローラー
ピンチローラーは、白い軸が腐って抜ける低質なものではなく、黒い軸だった。
関連:[SONY] ピンチローラーの軸の劣化 [カセットデッキ]
前面基板
上述のように、メイン基板とつながっている。
前面パネルに取り付けられているが、ネジの位置を記録しながら外すこと。
穴があるものの、ネジのない箇所があるためだ。
前面基板を外す際、透明部品をなくさないように注意。
この部品は固定されていないので、気を付けないと紛失する。
タクトスイッチに接点復活剤を流し込む。
REC LEVELにも、ガリを避けるため、同様に接点復活剤を流し込む。
カセットリッド
DOLBY HX PRO搭載(前機種のTC-RX51では非搭載)なので、「HX PRO」が目立つ。
「AUTO REVERSE」と書かれている部分にホコリが入ると取れない。
カセットリッド、及びホルダーはプラスチックなので、爪が容易に割れ、カセットリッドが固定できなくなるのは、上述の「ソニータイマー」の一種である。
ダンパー
ホルダーは回転式ダンパーなので、取り出し時に高速で開く「ロケットオープン」にはならない。
3-319-224-31 DAMPER, SMALL
しかし、ダンパーの油が漏れ、徐々にロケット化していくのも、上述の「ソニータイマー」の一種である。
FL管
FL管は小さく、TC-RX51や、その前のTC-RX50と同じ。
↑FV238G
FL501 1-519-493-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
カウンターは実時間ではなく単なる数字であり、1カウント=1秒ではない。
大きさは次機のTC-RX70でも同じだが、TC-RX70では時間表示が実時間になっている。
FL管の表面と、前面パネル内側の窓も拭いておく。
背面
LINE INとOUTしかない。
メカ部比較
上述したように、TC-RX50のメカ部に、基板を1枚足したような感じ。
↑(左)TC-RX50とTC-RX55(右)
TC-RX55の方は、テープ検出用のリーフスイッチが2本追加されているのが分かるだろう。
↑(左)TC-RX50とTC-RX55(右)
関連:[SONY] リーフスイッチの不良と修理 [カセットデッキ]
フライホイール(と一体のギア)も同じであるが、ギアの色が違う。
↑(左)TC-RX50とTC-RX55(右)
モーターも同じ(33E2L12C)、ゴムベルトも同じ。
デザイン
TC-RX50/TC-RX51から一新され、ボタン配置も見た目も格段に良くなった。
TC-RX50/TC-RX51では、操作ボタンが縦2列に並んでいたからね。
↑TC-RX50
ボタンの並びは、以下の通り。
(左) 巻戻|停止|逆方向|正方向|早送|録音|一時停止|REC MUTE (右)
個人的には、巻戻と停止が逆の方がよかった。
操作ボタンは大きく、次機種のTC-RX70よりも大きく押しやすい。
それでありながら、TC-RX70のような、(デザイン的な)謎の窮屈感はないので優秀。
PAUSEの橙色がイイ感じ。
# TC-RX70では白色となり廃止。
流石はSONY、内部はコストダウン+ソニータイマーの安物でも、見た目だけは優秀。
一部のコアなマニア以外にとっては、音質などどうでもよく、見た目が良ければ売れるというのが分かっている(笑)
だが、やはり安物、カセットホルダーを閉めた際に、右側が浮いてしまう問題が露呈。
カセットホルダーの開閉ツメが左側にしかなく、かつ、ホルダーがプラスチックの為だろう。
真正面から見ると気付きにくいが、上部や側面から見るとよく分かる。
メカやホルダーがほぼ同じTC-RX50でも右側が浮いてはいるが、それほどでもない。
TC-RX50のホルダーは、メカ部ではなく前面パネルに付いているのが理由?
その他
いつもは電動メカ(TCM-200)を使っているので、それと比べることになるが…
モーター1個なので動作は緩慢、ソレノイドの動作音がガチャガチャとうるさい。
後年の廉価メカ(TCM-190)であるTC-RX300(1996年)よりも、さらに遅い感じ。
いつものクセで、再生途中で取り出しボタンを押してしまう。
(TCM-200の電動メカなら、取り出しボタンを押すと、再生停止→扉OPENとなり、何ら問題ない)
しかし、電源を切った後でもテープが取り出せるのは利点。
録音ボタンを「押しながら」再生を押さないと録音されない。
(TCM-200の電動メカだと、録音ボタンの後に再生ボタンで録音開始)
↑CDP-597から録音中
関連:[SONY] CDP-597(1991年発売)のレビュー [CDプレーヤー]
テープ窓は銀色のシールが貼られているだけで光らず、暗い所ではテープ残量が見えない。
テープの種別検出ができるようになった(オートテープセレクター)。
旧機種のTC-RX50は、電源が入っていると、操作をしていなくてもモーターが回転していたが、TC-RX55は操作しないと回転しないので、待機時は静かである。
だが、テープを動かすと「ゴー」という音がし、筐体内で響いて不快なのは、TC-RX50と同様。
なお、次機のTC-RX70からはメカが一新されたが、待機時も常時モーターが回転するようになっている。
リバースONの状態でテープ終端に達すると、クイックリバースがないので、音がない状態がしばらく続いた後、ソレノイドによる「ガチャッ!」という大きな音がするのでビックリする。
カウンターは実時間ではなく、進度は非常に速く、なんだか急(せ)かされているようで、見ていて落ち着かない。
FL管の表示項目が少なすぎる。
カウンターとレベルメーターのみで、動作状況やテープ種別は枠外。
REC LEVELは、LR統合型。
(外がL、内がR)
マイク端子あり(LEFTとRIGHT)
ヘッドホン端子があるが、音量調整は不可。
前面端子は金メッキではない。
手動扉なので手で閉めることになるが、指紋が気になる?
再生モードが2種類しかなく、A面→B面で終了、というモードがない。
3モードとなるのは、TC-RX70(1990年)からである。
電源SWは透明のプラ板で保護されてはいるが、
トランス直結なので感電に注意。
コンセントを抜かない限り、触れると感電する。
なお、TC-RX50ではこんな危険な設計にはなっていないので、売値を2,900円下げたとはいっても、先の針金といい、それ以上にケチっていると思われる。
前面パネルはプラスチック。
# TC-RX70からアルミ。
メカ部は前面パネルに付いているので、何度も脱着していると、ネジ穴がバカになり、メカ部が固定できなくなる。
アジマス調整
ネジがかたく、無理に回すとネジ山を舐めるので、柄の太いドライバーで回す必要がある。
アースの接続場所
分解の際に記録しておけば不要だが、念のために記しておく。
モーターから出ているアースは、モーター上の以下の位置に接続する。
ここは土台がプラスチックなので何の意味が?と思ってしまうが、ネジにより外装につながっている。
分解の際に完全に外れる黒いアース線は、ソレノイドの上にある、メカを押さえる金属棒と、放熱板の片方に接続する。
↑メカの上を押さえる金属棒
↑放熱板の片方
放熱板は当然ながら、その下の外装につながっている。
ヘッドホン端子付近にあるアース線は、基板固定用の金属棒に接続する。
接続後に、この金属棒と外装の導通を確認すると確かにつながっているのだが、本機の前面パネルはプラスチックなのに何故?
と思って接続を外し、ヘッドホン端子付近にあるアース線と外装の導通を確認すると、既につながっている!
ということは、これは接続しなくてもいいのでは?
録音ができない場合
再生はできるが、録音ができない場合。
録音時のモニターは可能だが、再生してみると録音されていない(以前の音も残っている)場合。
以下を確認すること。
TC-RX55のメイン基板からメカ部には、以下の4本のケーブルが伸びている。
・白(9極)
・白(5極)
・白(4極)
・黒(5極)
このうち、白(4極)が曲者で、本来は外側の基板(HX PRO BOARD)の「CNP83」に挿さっているのだが、中基板(MD(B) BOARD)の「TP83」にも挿さってしまう。
↑(正)CNP83
↑(誤)TP83
「TP83」に挿すと、再生はできるが、録音ができない。
つまり、「TP83」には何も挿さないのが正解。
なら、何故「TP83」があるのかというと、おそらく、TC-RX50/TC-RX51時代の名残。
実際にTC-RX50を見てみると、似たような場所に「CNP83」が存在する。
TC-RX50時代にはDOLBY HX PROがなかった(=外基板がなかった)ので、ここに挿すのが正解だった。
TC-RX50の基板には「REC IN」と書いてあるので分かりやすいのだが、TC-RX55には何の記載もないのも、間違う原因。
まぁ、分解時にキチッと記録して外せば、こんなヘマはしないだが。
また、外側の基板(HX PRO BOARD)の「TP91」には、挿すものがないので、何も挿さないのが正解。
録音だけでなく、再生にも問題がある場合は、中基板にあるリレーをチェック。
↑MATSUSHITA DF2-DC12V AG8023
録音ボタンを押した際、このリレーから「カチッ」と音がするかを確認してほしい。
音がしない場合、このリレーの故障だ。
このリレーは、以下のES機にも使われており、故障すると、録音再生時に不具合が生じる。
・TC-K333ESX(1987年)
・TC-K555ESX(1986年)
・TC-K333ESR(1988年)
・TC-K555ESR(1988年)
代替品:OMRON G5A-234P-53系、RS 819-8984
代替品はどちらも古いので、供給終了になっている。
謎のカタカタ音
ベルト交換及び速度調整後、リバースモードで再生テストをしていると、逆方向の再生時、カタカタと音がする事案。
再生開始直後はしないが、数秒すると音がし始める。
テープの問題かと思ったが、どのカセットでも生じる。
正方向では生じない。
音の発生源がハッキリしないので、この種の不良は非常に面倒!
左側のピンチローラーが原因かと思ったが、手で回しても抵抗や段差なく回るので、そうでもないようだ。
メカを分解し、ピンチローラーの上にある黄色いギアを外し、グリスを塗布したりして組むと、カタカタ音は消えた。
このギアを手で回しても抵抗はないので、結局、何が原因だったのか不明!
だが、カタカタ音はなくなったものの、今度は逆方向の再生時のテープ速度が不安定で、明らかにワウ・フラッターが大きい事案。
フライホイールが劣化で歪(ゆが)み、どこかに擦っていると疑い観察するも、それはない感じ。
あと、回転体となると、リールしかない。
リールを引き抜くと、根元に残ったグリスの粘度が高く、抵抗になっていると思われるので、軸穴も含め完全に拭き取り、
固着しにくいシリコングリスを塗布。
この場所は抵抗がより小さい方が良いので、粘度のより低いセラグリスの方が良いかも。
関連:タミヤ セラグリスHG
ほぼ閉塞区域なので、飛び散りによるグリス切れもないだろうし。
この時に、回転検出のセンサーも掃除する。
これにて、逆方向の速度が遅い問題は解決したが、リールで直接テープを引いているわけではなく、直接引いているのはキャプスタンなので、リールの掃除で直るのは変だが、本メカはリールもテープ速度に影響する?(未確認)
気になるので、新品のピンチローラーに交換したが、それでもワウ・フラッターが微妙…
次機のTC-RX70からメカが一新され、フライホイールのベルトも角型から平型に変わったが、ワウ・フラッターの改善が主な目的か?
実際、仕様上の値も、TC-RX70から良くなっている。
ワウ・フラッター
・前メカ(TCM-CMAY):TC-R302/TC-R303:±0.1%Wpeak 0.07%WRMS
・当メカ(TCM-170):TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55:±0.13%Wpeak 0.09%WRMS
・次メカ(TCM-200):TC-RX70:±0.09%Wpeak 0.05%WRMS
TC-RX50にしろTC-RX55にしろ、TCM-170のメカを使った機種は、(フライホイールの割れがないとしても、)ワウ・フラッターが悪い。
発売当初は、聴感上ではそれほどでもなかったのかもしれないが、今となっては確認のしようがない。
TCM-CMAY→TCM-170
メカデッキにTCM-170を採用したTC-RX5xは、それ以前のTCM-CMAY採用機よりも性能が低い。
具体的には、モーターが2個→1個へと減少し動作緩慢となり、平ベルト→角ベルトでワウ・フラッター悪化。
TCM-170→TCM-200
関連:[SONY] TC-R302とTC-R303の比較 [オートリバース]
モーターが松下製に変わってたので、SANYOの33E2L12Cが元々低レベルなモーターなのか?
製造当初は良いが、モーターの劣化が早いとか。
仕様
・ヘッド:消去1、録再1
・モーター:DCサーボモーター×1
・SN比
56dB(Dolby OFF、ピークレベル、Metal-Sカセット)
71dB(Dolby NR C、ピークレベル、Metal-Sカセット)
・周波数特性:30Hz-18kHz ±3dB(EIAJ、Metal-Sカセット)
・周波数範囲:20Hz-19kHz(EIAJ、Metal-Sカセット)
・ワウ・フラッター:±0.13% Wpeak、0.09% WRMS
・歪率:0.5%(EIAJ、Metal-Sカセット)
・大きさ:幅430x高さ120x奥行285mm
・重量:3.9kg
・消費電力:16W
製造打切年等
・製造打切年:1989年12月
・補修用性能部品保有期間:8年
・修理対応終了年:1997年12月
修理対応終了年から25年以上経過しており、SONYは修理を受けない。
関連:[SONY] 製造打切年/補修用性能部品保有期間/修理対応終了年 [オーディオ]
海外モデル
・TC-RX55ES(1989年)
メカデッキ:TCM-170RB11
右下に「ES」のロゴがある。
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・TC-RX410(1989年)
メカデッキ:TCM-170RB13
ピークメーターがFL管ではなくLED、カウンターが回転式であり、TC-RX55の廉価版のような機種。
機種選択
上述したように、このメカデッキ(TCM-170)は、動作緩慢かつ動作音大。
翌年のTC-RX70からメカデッキがTCM-200に変わり、ソレノイドを廃し動作俊敏かつ静音になるので、TC-RX70を選ぶべき。
↑TC-RX70(1990年)
TC-RX55→TC-RX70での主な変更点
・メカ一新(TCM-170→TCM-200)により、俊敏かつ静音動作
・扉の電動化
・テープ窓が光る
・AMS(オートマチックミュージックセンサー)搭載
・クイックリバース搭載
・REC LEVELの電動化(FADERやARL:AUTO REC LEVELなど)
・DISPLAY MODE(FL管表示変更)の追加 ←TC-RX55は本体でもリモコンでも不可
・カウンターが実時間化
・消費電力が5W増加(16W→21W)
・価格上昇(36,900円→39,800円) ←今となっては関係ない
関連:[SONY] TC-RX55とTC-RX70の比較 [カセットデッキ]
できれば、その次の機種であるTC-RX77の方が、FL管が大きく、ヘッドホンの音量調整も可能なので、それを選びたい。
↑TC-RX77(1991年)
なお、TC-RX77の消費電力は、TC-RX55と同じ(16W)である。
平成元年当時、TC-RX55を使っていて思い入れがある人は別だろうが、当方にとって、このメカの系統(TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55)は、見た目はともかく、動作的にキツい。
関連:[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
モーターが1個だけ、平ベルトではなく角ベルトという、メカ(TCM-170)の貧弱さを実際に見てしまっているので、それもあろうが…
趣味や懐古、コレクターではなく、実用機を求めるなら、電動メカとなったTC-RX70以降を選んだ方が良い。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
関連:[SONY] TC-K500RとTC-RX55の比較 [1989年]
関連:[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
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