カセットデッキのアジマス調整用ネジの場所

2022年10月24日



テープとヘッドの角度(Azimuth,アジマス)がズレていると、音がこもったりする。

Height_Declination_Depth_Azimuth
↑右端がアジマス

アジマスは時間が経つとズレていくので、時々調整する必要がある。

アジマス調整の前に、

・テープパスの調整
・ヘッドやキャプスタンなどの掃除
・ヘッドの消磁
・ピンチローラーの交換

を行っておく。

関連:テープパスチェック用カセットの作成と調整

テープパスの調整は、テープに傷が付いたり巻き込んだりしないように、テープの流れを確認する作業である。

ヘッドが汚れていると音が悪くなるので、掃除をしておく。

オートリバース機のヘッド

関連:ヘッド部のクリーニング

ヘッドが帯磁していると、音が悪くなるので、消磁をしておく。

ピンチローラーが痛んでいると、音が波打ってしまい、アジマス調整ができないので、先に交換しておく必要がある。

古いピンチローラーは掃除をしてもダメ。

ヤスリで表面を削っても、その精度がないと、偏芯して音がフラついてしまう。

新品に交換するのが確実。

関連:[SONY] ピンチローラーの交換(型式と大きさ) [カセットデッキ]

アジマス調整

カセットリッド(フタ)を取り外す。

カセットリッド_TC-K710S_TC-K700S

カセットホルダーを開いた状態で上に引くと外れる。

閉じた状態で無理に外そうとすると、爪が割れてしまうので注意。

市販の録音済の音楽テープを再生し、その状態でヘッドのネジを回し、最も高音が出るようにする。

# 落語やクラシックよりも、J-POPの方が高音が含まれているので適。

プラスドライバー(#1)を使う。

ヘッドの帯磁を防ぐため、磁石機能のない(磁気を帯びていない)ドライバーを使うこと。

オートリバース機のヘッドのアジマス調整ネジ
↑側面にあるのがアジマス調整用のネジ

アジマス調整用のネジの位置は、以下の通りである。

オートリバース機

TC-R302(1986年)
TC-R502(1986年)
TC-R303(1987年)

TC-RX50(1988年)
TC-RX51(1988年)
TC-RX55(1989年)

TC-RX70(1990年)
TC-RX77(1991年)
TC-RX79(1992年)

TC-RX711(1993年)
TC-RX715(1994年)
TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産) など

オートリバースなので、アジマス調整のネジは2箇所ある。

アジマス調整_オートリバース機

・表面(FWD):左下
・裏面(REV):右下

TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55はネジがかたく、無理に回すとネジ山を舐めるので、柄の太いドライバーで回す必要がある。

関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]

3ヘッド廉価機

TC-K700S(1993年)
TC-K710S(1995年)

アジマス調整_3ヘッド廉価機

向かって右下の1箇所。

このネジは、ヘッドを上げた状態でも、ケーブルに隠れて見えにくい場合があり、1つ上のネジと間違えやすいので注意。

関連:[SONY] TC-K710Sの分解とTC-K700Sとの比較 [カセットデッキ]

3ヘッドES機

ESG以降の機種

TC-K555ESG(1989年)
TC-K333ESG(1989年)
TC-K222ESG(1989年)

TC-K555ESL(1990年)
TC-K333ESL(1990年)
TC-K222ESL(1990年)

TC-K555ESA(1991年)
TC-K333ESA(1991年)
TC-K222ESA(1991年)

・TC-K555ESJ(1993年)
TC-K333ESJ(1993年)
TC-K222ESJ(1993年)

TC-KA3ES(1995年)
TC-KA5ES(1995年)
TC-KA7ES(1995年)

アジマス調整_3ヘッドES機

向かって左下の1箇所。

アジマス調整を終えたら、緩み止め剤を付けて完了。

関連:[SONY] ヘッドのアジマス調整後の緩み止め剤 [カセットデッキ]

これをしないと、振動でネジが緩み、再びズレてしまう。

メカをケース(筐体)に組み込んだ状態では緩み止め剤の塗布は困難なので、面倒だが外した方が良い。

ネジ山が潰れたら

廉価機でも、ES機であっても、ヘッド周辺に使われている黒いネジは、炭素鋼(=鉄+炭素)の安物である。

硬さがないので、何度も回していると、ネジ山が徐々に削れ、回せなくなってしまう。

削れて回せなくなる前に、M2サイズのネジを入手し、交換しよう。

頭の形状はナベ、長さは5mmであるが、機種により異なる可能性があるので、取り出して測っておく。

# 一般的に、ネジの長さには、頭は含まない。

炭素鋼のネジも売られているが、再び削れてしまうので、銀色のステンレスネジ(SUS304)にした方が、硬くかつ錆びず、良好である。

M2ネジ_SUS304_5mm
↑M2ネジ SUS304 5mm

関連:ステンレス鋼 SUS304 M2 5mm 60本

プラスネジだとナメてしまうとか、友達に差を付けたい(謎)なら、以下のような六角穴のネジもある。

六角ソケットヘッドキャップネジ

関連:ステンレス鋼 SUS304 六角ソケットヘッドキャップネジ M2 5mm 55本

SUS304は完全には磁化されないわけではないが、炭素鋼よりは磁化されにくいので、その点でも適するだろう。

炭素鋼のネジとSUS304のネジ
↑(左)炭素鋼のネジとSUS304のネジ(右)

なお、緩み止め剤に高強度(永久固定)のものを使ってしまうと、ネジが外せなくなり、ドリルでネジを破壊するしかなくなるので、使用厳禁だ。

関連:カセットデッキのアジマス調整の方法

関連:[謎] 安定までに時間が掛かるリサジュー図形 [TC-K222ESA]

関連:[KENWOOD] アジマス調整時の思わぬ障害 [X-VH7]



Posted by nakamura