[SONY] TC-FX500R(1982年発売)のレビュー [カセットデッキ]

2023年8月1日



TC-FX380(1984年発売)からさらに2年遡る、謎のカセットデッキレビュー(笑)

関連:[SONY] TC-FX380(1984年発売)のレビュー [カセットデッキ]

動作動画

動画中の5分45秒付近でオートブランクスキップ(後述)が発動している。

TC-FX500R

1982年に発売された、SONYのカセットデッキである、[SONY] TC-FX500Rを手に入れた。

TC-FX500R_カタログ

価格は54,800円。

末尾の「R」はリバースの「R」だと思われる。

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1982年8月]

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1982年11月]

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1983年1月]

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1983年6月]

1982年(昭和57年)

・SONYが世界初のCDプレーヤー「CDP-101」発売(1982年10月1日)

CDP-101_カタログ
↑CDP-101 168,000円

・鈴木善幸首相退陣表明→中曽根康弘へ
・「森田一義アワー 笑っていいとも!」放送開始(→2014年3月31日放送終了)
・ホテルニュージャパン火災
・NECが「PC-9801」発売
・東北新幹線 大宮駅-盛岡駅間開業
・国鉄のリニアモーターカーが世界初の有人浮上走行実験に成功
・中央自動車道が全線開通
・米映画「E.T.」日本で公開
・森永製菓「おっとっと」発売
・電電公社がカード式公衆電話を設置、同時にテレホンカードも発売(電電公社は1985年4月1日に民営化されNTTへ)

・あみん「待つわ
・岩崎宏美「聖母たちのララバイ
・細川たかし「北酒場
・松田聖子「赤いスイートピー
・忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック
・嶋大輔「男の勲章
・中森明菜「少女A
・高樹澪「ダンスはうまく踊れない

SONYの売り文句①

デジック・デッキ
デジタル+ロジック=デジック

カセットのA面からB面へ、ノンストップで音楽再生。
オートリバース機ならではの便利さです。
しかも、余分な待ち時間をなくし、次から次へと音楽が聴けるオートブランクスキップや、
今聴いている曲か次の曲の頭出しができるAMS(オートマチック・ミュージック・センサー)など。
カセットリスニングがより楽しくなります。

また、「夢の合金」と話題を集めているアモルファスを用いたレーザーアモルファスヘッドをロートバイラテラル方式搭載したリバースメカニズムや、ドルビーNR B/Cタイプ搭載。
その再生音は、ソニーのカセットデッキ技術に裏付けられた美しい音質。
音楽は、リバースデッキでより自由に、より美しく聴く時代です。

曲と曲の間の余分な待ち時間をなくしたオートブランクスキップ・再生リバース

再生時に無信号部が長く続くと、次の曲の頭まで屋は送りし素早く再生状態になるオートブランクスキップ機能を装備。
この動作は、スイッチONで全て自動的に行われるので、退屈な空白時間に気をもむこともありません。
また、いちいち操作をし直す手間も省かれます。
特にリバース機の場合、A面のラストの曲が終わって、まだかなりテープの残りがある時でも、手際よくB面の1曲目から再生スタートします。
まさにリバース機では必要不可欠な新機構と言えます。

ノーマル/リバース方向とも均一な音質のロートバイラテラルヘッド方式

オートリバース機では、テープの走行方向に応じて何らかのヘッドの操作が必要になります。
TC-FX500Rでは、オープンリールデッキで実績を持つロートバイラテラル(回転)ヘッド方式を採用。
これは、テープのトラックとヘッドのギャップが往復とも同一チャンネルになり、往復での音質の変化がありません。
また、複雑なリバース機構が簡略化されるので、メカニズムも極めてシンプルな構成。
信頼性や耐久性にも優れています。

高性能テープをより高性能にするレーザーアモルファスヘッド

水やガラスのように特定の結晶構造を持たない非結晶合金で、高い磁束密度、優れた磁気リニアリティを持つ「アモルファス」を、磁気ヘッドのコア材に使用。
最新鋭のレーザー加工技術を駆使して開発したレーザーアモルファスヘッドです。
素材の良さと加工精度の高さが相乗して、聴感丈のSN比をはじめ、諸特性が大幅に向上。
テープの持ち味を十二分に引き出します。

長い割に内容がショボイ(笑)

SONYの売り文句②

ソニーが造るとやっぱり違う。
音質プレイ機能に的を絞った再生リバースデッキ。

ロゴ_TC-FX500R

A面からB面へ、ノンストップのフルトラック・リスニング。
再生オートリバースの便利さは、1度使ってみると手離せない魅力があります。
デッキ操作から解放されてテープ1巻分音楽に熱中できるのはもちろん、例えばナガラ族なら、推理小説のクライマックスでテープを裏返しにする不興もありません。
この有難い再生リバース機能がTC-FX500Rの特長です。

しかも、リバース・リスニングをさらに楽しいものにする数々の機能を装備。
前後の曲の頭出しができるAMS(オートマチック・ミュージック・センサー)や、オートプレイ機能、そして余分な待ち時間をなくした新機能オートブランクスキップなどなど。
音楽を聴く楽しさを拡げます。

もちろん、その音楽はソニー最新のデッキ技術に裏付けられた美しい音質。
「夢の合金」と話題を集めるレーザーアモルファスヘッドの搭載、ドルビーNR B/Cタイプの搭載により、音を汚す歪(ひず)みやノイズを著しく低減しています。

TC-FX500R、デッキが進歩すると人間はますます自由に音楽を満喫できるのです。

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リバース・プレイをさらに楽しく、多彩にする機能の数々。
カセットリスニングは、ますます先進的になる。

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長い無信号部分は飛ばして次の曲へ。
新機能オートブランクスキップ。

恋人とのデートなら待ち時間もまたそれなりに楽しいものですが、これがカセット・リスニングとなると話は別。
曲と曲の合間があまりに長いのはいただけません。
例えば、A面のラストの曲が終わって、まだかなりテープの残りがある場合など、B面の1曲目がスタートするまで退屈な空白時間がたっぷり。
再生リバース機能の良さも半減、といったところです。
そこでTC-FX500Rでは、新機能オートブランクスキップを搭載。
スイッチをONにすると、再生モードの時、長い無信号部分が続けば、次の曲まで早送りし、改めて再生スタートさせます。
余分な待ち時間をなくしたオートブランクスキップ機構、再生リバース機の必需品となりそうです。

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選曲操作をスピーディーにした4パターンのAMS、ノーマル方向のオートプレイ。

今聴いていた曲をもう一度聴きたい。
気に入らない曲は飛ばしてお目当ての曲だけを聴きたい。
そんな時、素晴らしい威力を発揮するのがAMS(オートマチック・ミュージック・センサー)です。
前後の曲の頭をスピーディーに探し出し、自動的に演奏をスタートさせます。
操作は、PLAYボタン(ノーマル、リバースとも)を押しながら、続いてFFボタン又はREWボタンを押すだけ。
実に簡単操作です。
4つのパターンが行え、ボーカルやギター、キーボードの練習などにも便利なAMS、再生リバース機能の良さを一段と引き立てます。
また、ノーマル方向のみのオートプレイも可能。
テープを巻き戻し、一旦ストップした後、自動的に再生スタートさせる機能です。
操作は、REWボタンを押しながら、PLAYボタンを押すだけ。
これまた、簡単この上もありません。

ノーマル方向で次の曲の頭出しを行う時は、ノーマル再生を押しながら→→を押します。
ノーマル方向で今聴いていた曲の頭出しを行う時は、ノーマル再生を押しながら←←を押します。

リバース方向で次の曲の頭出しを行う時は、リバース再生を押しながら←←を押します。
リバース方向で今聴いていた曲の頭出しを行う時は、リバース再生を押しながら→→を押します。

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離れた場所からでも、ノーマル、リバース両方向のリモコンプレイ。

リバースデッキの楽しさを拡げるもう一つの特長が、別売リモコンユニットRM-70(7,000円)を使用してのリモートコントロール。
再生リバースをはじめ、合計13(注1)の操作が行えます。
また、別売リモコンユニットRM-65(3,000円)を使用して、ソニーのシンクロリモコン端子付きのプレーヤー、又は再生専用デッキTC-PB5とのシンクロプレイも可能にしました。

プレーヤーあるいはTC-PB5の演奏スタートとTC-FX500Rの録音スタートのタイミングをピッタリ一致させ、演奏が終了するとデッキはREC MUTEを経て録音ポーズでスタンバイとなる、大変便利な機能です。

(注1)プレイ、リバースプレイ、録音、早送り、巻き戻し、ストップ、ポーズ、REC MUTE、AMS×4、オートプレイ

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使いやすさを高めるために、細部にも最新の神経を配る。
それがソニーの思想です。

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ロジックコントロールのフェザータッチ・オペレーション。

振れる感覚のフェザータッチ・オペレーションがさらに一歩前進。
よりセンシティブ、より軽快な操作フィーリングを実現しています。

もちろん、早送りや巻き戻しからストップポジションを経ずにダイレクトに再生ポジションへチェンジできるなど、ロジックコントロールならではの操作性の良さ、信頼性の高さも兼ね備えています。

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LEDインジケーター付きオートテープセレクター。

使用するテープを、TYPE I(ノーマル)か、TYPE II(CrO2)か、TYPE IV(メタル)か、自動的に判別し最適ポジションにセットできます。
テープタイプはインジケーターで表示します。
なお、TYPE III(Fe-Cr)はTYPE Iに、また、一部検出孔のないメタルテープはTYPE IIにセットされますので、この場合はテープセレクターにより、正しいポジションに切替えできます。

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タイマースタンバイ機能。

別売オーディオタイマーを使用し、連続留守録音やおやすみ、お目覚めリスニングが楽しめます。

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オートスペース付きREC MUTE機能。

4秒間の無音録音を行った後、自動的に録音スタンバイになる機能。
適度なブランクが簡単に作れます。

TC-FX500R

その他の特長

・ロングストロークスライドRECボリューム
・LEDピークレベルメーター
・ディレクションインジケーター
・高出力ヘッドホン端子
・マイクロホン入力端子

ソニー最新のデッキ技術を凝縮。
高い基本性能とピュアサウンドを実現しています。

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ノーマル方向、リバース方向とも均一な音質を生むロートバイラテラルヘッド方式。

リバース機の絶対条件は、ノーマル方向、リバース方向とも均一な音質が得られることです。
当たり前と言えば当たり前ですが、しかしこれがそう簡単ではありません。

往復再生させるためには、走行方向のチェンジももちろん必要ですが、ネックとなるのはヘッドギャップを走行方向に応じたトラックに切り替える操作、トラック数に合わせ4ギャップにする方式やヘッドをスライドさせてLch、Rchを切り替える方式などが考えられますが、完璧な均一化は不可能です。
そこでソニーは、ここに10年もの間オープンリールデッキで培ってきたロートバイラテラル(回転)ヘッド方式を導入。

①ヘッドが走行方向に応じて180度回転するので、テープのトラックとヘッドのギャップが往復とも同一チャンネルになる。

②リバース機でありながら、走行方向によるLch/Rchの切替スイッチが不要、といった往復均一特性が得られています。

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夢の合金「アモルファス」が音楽を楽しく再生。
レーザーアモルファスヘッド搭載。

30年を超えるソニーの磁気ヘッド技術の歩み。
その最先端の技術成果として生み出されたのが、レーザーアモルファスヘッドです。
「アモルファス」は、水やガラスのように特定の結晶構造を持たない非結晶合金で、高い磁束密度、
優れた素材特性で古くから夢の合金として注目されてきました。
ソニーは、この「アモルファス」を磁気ヘッドのコア材に使用。
最新鋭のレーザー加工技術を応用し、極めて高性能なレーザーアモルファスヘッドを開発したのです。
素材の良さに加工精度の高さが相乗効果をもたらして、SN比がぐんと向上したことで、あらゆるテープの持ち味を十二分に引き出します。
ソニーの伝統技術が生きる高性能メカニズムとともに、TC-FX500Rの美しい音質を支えているのです。

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もはやテープノイズは可聴レベルを下回ってしまった。
ドルビーNR Cタイプを内蔵。

アーティストが思いを込めたバラードの囁きに「シャーッ」というノイズが!
テープに宿命的に付きまとうヒスノイズは、音楽再生の大敵です。
これを低減するために開発されたドルビーNR Bタイプは、コンパクトカセットを現在のようなハイファイソースに引き上げた立役者の一つでしょう。
このBタイプを改良・発展させたニューシステム、ドルビーNR Cタイプ。
5kHzの高域で20dBのノイズ改善効果を持ちます。
ちなみにこれは、Bタイプの約3倍に相当し、ノイズレベルをOFFジの約10分の1に低減します。
TC-FX500Rには、この新旧両機能を併せ持つドルビーNR B/Cタイプを搭載。
音楽の美しさを守ります。

紙面を強引に埋めるためだけの文言ばかり(笑)

ヘッド

レーザーアモルファスヘッド。

ヘッド_TC-FX500R

関連:[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]

ピンチローラーはおそらく当時のものだが、掃除すれば使えそう。

なお、TC-FX500Rのヘッドにはテープガイドがない。

カセットリッド

窓が広い。

カセットリッド_TC-FX500R
↑LASERAMORPHOUS HEAD

爪が太いので、後の機種のように爪が細くてスグに折れるということはないだろう。

テープ窓_TC-FX500R

テープ窓には銀色のシールが貼られているだけで、光らない。

内部

再生含め他の操作は可能だったが、再生中の動作音が大きいので、分解する。

内部_TC-FX500R

基板が古臭いね…

基板_TC-FX500R

メカ部を外すには前面パネルを外す必要があるが、先に底板を外す必要がある。

底板を外した基板裏面_TC-FX500R

メカ部と基板の接続はコネクタだけでなく直ハンダもあり、メカがフリーにならないという最悪の設計。

基板の裏にも何やらケーブルがハンダ付けされており、事前に底板を外して記録しておかないと、切れたら元通りにするのは不可能という、最悪な設計。

基板裏にもケーブル_TC-FX500R

基板の一部を外さないとメカ部が動かせない、最悪な設計。

メカ部に絡み付いたケーブル群に注意しながらメカ部を分解しなければならないという、最悪な設計。

メカ部前面_TC-FX500R

メカ部前面を保護/養生して進めないと、各所に擦って傷だらけになってしまう。

カセットリッドの窓が広いので、傷が付くと見え、非常に不快である。

メカ部(表)_TC-FX500R
↑メカ部(表)

メカ部(裏)_TC-FX500R
↑メカ部(裏)

モーターはマブチの「EG-510FD-2BF」で、12V 2400RPMのもの。

EG-510FD-2BF_TC-FX500R

この1つのモーターで全てを動かしている。

フライホイールは2個で、厚みがある。

2個のフライホイール_TC-FX500R

フライホイールの中央には、ギアが付いている。

フライホイール_TC-FX500R

キャプスタンの軸受けは小さく貧弱で不安。

キャプスタンの軸受け_TC-FX500R

キャプスタンの表側のグリス漏れ防止用のワッシャーは、元からない?

2個の電磁石(ソレノイド)が見える。

ソレノイド_TC-FX500R

メカは2年後のTC-FX380と似たところがあり、TCM-150である。

関連:[SONY] TC-FX380(1984年発売)のレビュー [カセットデッキ]

売り文句の「フェザータッチ・オペレーション」は、タクトスイッチによるものだが、本機の操作部には薄型のタクトスイッチが使用されていた。

タクトスイッチ_TC-FX500R

タクトスイッチに接点復活剤を流し込む。

タクトスイッチ_TC-FX380

接点復活王

関連:接点復活王(ポリコールキング,サンハヤト)

ゴムベルト

本機で使用されているゴムベルトは3本。

・平型:キャプスタン(フライホイール) 折長120mm
・角型:メカ部(横)
・角型:カウンター

モーターには、平型と角型の両方を掛ける。

プーリーは、プラスチックではなく金属。

プーリー_TC-FX500R

根元側に平型、先端側に角型を掛ける。

本機はリバース機なので、平型は「σ(シグマ)」型に掛ける。

突起に仮に掛けておき、あとでピンセットで掛ける、よくある方法。

平ベルトの表面の摩擦が少ないと感じたので、ヤスリで削るが、引っ張って磨いたため、伸びてしまった!

ということでそのベルトは廃棄し、手元にあった、安物の中華製のベルトを使う。

関連:[中華] ゴムベルト [AliExpress]

キャプスタンベルトを交換したら、速度調整が必要。

モーター背面の穴にマイナスドライバー(2.0mm)を挿して回す。

質の低い中華製のベルトを使うも、再生すると気にならない。

本機はフライホイールが太いので、フラツキを吸収しているのだろうか。

メカ部後方_TC-FX500R

メカ部(横)の角型ベルトは、若干キツ目が良い。

カウンター用は、右側のリールとカウンターに掛ける。

右側のリール_TC-FX500R

リールを隠す目隠板は、ベルトを掛けた後で閉めると良い。

カウンターが回らないとテープ終端と判断され止まってしまうので、カウンターを使わないとしてもベルトは必須。

カウンター裏面_TC-FX500R

角型は、以下の小袋の中に数本使えるのがあった。

関連:ゴムベルト カセットレコーダー修理・保守・交換用

上述したようにメカはTC-FX380に似るので、そちらも参照のこと。

関連:[SONY] TC-FX380(1984年発売)のレビュー [カセットデッキ]

メーター

メーターはLEDであり、FL管ではない。

メーター_TC-FX500R

視認性は悪くないものの、さすがに粗すぎるし、LとRが横に並んでいるので、左右にズレがあっても気付きにくい。

カウンター

回転式。

カウンター_TC-FX500R

右隣のRESETボタンを押すと「000」にリセットされる。

本機はTC-FXシリーズ「デジック・デッキ」であり、

関連:[SONY] ES/K/FX/R/RX/WR/WE/TXシリーズ [カセットデッキ]

「デジタル+ロジック=デジック」なのだが、TC-FX6(1981年)のようなリニア電子カウンター(分.秒)は本機にはなく、


↑「一目で分かるところが、『デジック・デッキ』のいいところです」

一目で分からない!どこがデジタルなのかも分からない!!

コストダウンのしすぎ(=ケチりすぎ)と悲惨なデザインで哀れな機種となってしまったTC-FX500Rは、翌年にはTC-FX505Rへチェンジ!

TC-FX505R_カタログ
↑TC-FX505R(1983年) 55,000円

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1983年8月]

TC-FX505Rは1983年のグッドデザイン賞受賞!

REC LEVEL

REC LEVELはスライド式。

REC-LEVEL_TC-FX500R

意外にもガリはなかった。

背面

背面は銀色。

LINE_IN-OUT_TC-FX500R

LINE INとOUTのみ。

前面左下部に「REMOTE」端子(リモコン接続用)がある。

REMOTE_TC-FX500R

別売のリモコンユニットであるRM-70(7,000円)が接続できる。

ハンダチェック

底板を外した状態で基板裏面を観察、ハンダ割れがないかを調べる。

表を見た時に銅色のヒートシンクが付いた部品が3個あり、それらは発熱するので、ハンダ割れが起こりやすい。

・大基板(裏面から見た時に左):Q308とQ311
・小基板(裏面から見た時に右):IC502

裏面を確認しながら表の部品を揺らすと、Q311のハンダが脆(もろ)かった。

Q311_TC-FX500R

3個全てに再ハンダした。

LINE INとOUTのハンダ割れはなかった。

調整

モノラルテープを再生してもPB LEVELが左右で一致しない(メーターで同じにならない)ので、PB LEVELを調整。

場所は、基板手前にある銀色の半固定抵抗。

RV101_TC-FX500R
↑RV101

・左:RV101
・右:RV201

テープ速度は、3kHzのテープを再生してチェック。

モーター背面の穴にマイナスドライバー(2.0mm)を挿して回す。

だが、正方向で合わせるも、逆方向では遅くなる、意味不明な事案。

正方向のテープ速度_TC-FX500R
↑正方向(3004Hz)

逆方向のテープ速度_TC-FX500R
↑逆方向(2967Hz)

当然、正/逆個別の設定はできないので、ピンチローラーの不良を疑うしかない。

事実、ワウ・フラッターも逆方向が悪い。

アジマス調整も行う。

関連:カセットデッキのアジマス調整の方法

調整ネジは、正方向はヘッド右側のネジ、逆方向は左側のネジ。

# 後のRXシリーズとは逆なので注意。

マイナスドライバー(2.0mm)を使う。

# 後のRXシリーズはプラスドライバーなので注意。

関連:カセットデッキのアジマス調整用ネジの場所

だが、正方向でアジマス調整し、逆方向もアジマス調整すると、正方向がズレる意味不明な事案。

あと、逆方向の再生レベルが明らかに小さい。

正方向_リサージュ図形_TC-FX500R
↑正方向

逆方向_リサージュ図形_TC-FX500R
↑逆方向

とにかくこの個体、正方向と逆方向の差が、あらゆる要素で大きい!

発売当時は問題なかったのだろうが、39年前の機材。

これはダメかも分らんね…(3年後)

その他

AUTO REVERSE_TC-FX500R

「AUTO REVERSE」ドヤぁ!

・レベルメーターはLED(FL管ではない)
・カウンターは回転式
・再生オートリバース(録音時のリバースは不可)
・オートリバースを切替SWの類がないので、「A面再生→(リバース)→B面再生→終了」という流れしかない。
・REC LEVELはスライド式
・操作ボタンの「停止」が異常に大きい
・再生方向はカセットリッド下部に表示
・ヘッドホン端子やマイク端子は本体中央下部にある。
・ヘッドホン端子は金メッキではなく、音量調整不可。
・電源が入っている時は、ピークメーターの一番左は常に点灯している。

録音と一時停止はボタンが光るが、早送りと巻き戻しは光らないので、どちらに回っているか目視では分からない(テープ窓も光らないので認識困難)。

テープが動いていない時(一時停止を除く)は、モーターは回転しないので、待機時は静かだが、動作時はうるさい。

複数のギア(の歯車)にグリスを塗布することで、多少は静かになった気がするが、グリスの粘度により抵抗が増すので動作が重くなるし、正方向再生と逆方向再生での音が異なり、正方向には不快な成分(ウァ~ン…ウァ~ン…という周期的な音)が多いという、意味不明な事案。

カセットを入れなくても、ホルダーを閉じれば、再生/早送り/巻き戻しが機能するが、仕様?

カセットを入れて再生中もOPENボタンで取り出せるが、仕様?

底面の脚は、驚くほど小さく貧弱!

底面の脚_TC-FX500R

TC-FX380のような最廉価モデルならまだしも、54,800円でコレ?

左上のSONYのロゴは部品ではなく印刷!

SONYのロゴ_TC-FX500R

関連:[SONY] エンブレムの種類と交換 [カセットデッキ]

電源ボタン周囲の緑は単なる部品で、光っているわけではない。

電源ボタン周囲の緑_TC-FX500R

デザインは最悪かもしれないが、1990年代の新しいカセットデッキばかり使ってきた当方からすると、シルバーかつこのデザインは斬新だ(笑)

デザインが似た機種に、同年のTC-FX33がある。

TC-FX33_カタログ
↑TC-FX33(1982年) 37,800円

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1982年8月]

TC-FX500Rより17,000円安いが、TC-FX500Rからオートリバースやレーザーアモルファスヘッドを抜いた機種?

リバースが再生のみの理由

リバースが再生のみなのは、消去ヘッドが回転しないため。

再生録音リバース機は、録再ヘッドだけでなく消去ヘッドも回転するが、本機は録再ヘッドしか回転しない。

リバースヘッド_TC-RX55
TC-RX55のヘッド(再生録音リバース機)

リバースヘッド_TC-FX500R
↑TC-FX500Rのヘッド

TC-FX500Rは録再ヘッドと消去ヘッド(左の黒いヤツ)が離れており、回転するのは中央部分にある録再ヘッドだけなのが分かるだろう。

録音でテープを送る時は、録再ヘッドを通る前に、消去ヘッドを通らなければならない。

なので、リバース時には、当然消去ヘッドも回転させなければならない。

消去ヘッドが回転しないTC-FX500R…何故こんなことにした?

ロケットオープン対策

取り出しボタンを押すと、カセットホルダーが勢いよく飛び出してしまうのが、「ロケットオープン」だ。

短気な人には向くかもしれないが、その勢いでプラスチックが割れてしまう危険がある。

「ロケットオープン」の原因は、ピストン機構にあるゴムリングの劣化だ。

カセットホルダーを外し、ピストンの先にあるゴムリングを新品に交換する。

ゴムリング_TC-FX500R

ゴムパッキンとして、ホームセンターの水道関連置き場にあるだろう。

なければ、付いていたゴムリングをペンチで何度も揉んで、柔らくすれば使えることもある。

ゴムリングを揉む_TC-FX500R

ピストンが通る穴に変な油分がないよう、綿棒で内壁を掃除しておく。

ピストン内壁_TC-FX500R

開く速度が遅い場合は、ゴムリングにグリスを付けて調整するが、意図したものにするのは困難なのは、考えるまでもない。

関連:[SONY] ダンパー(ピストン)のゴムリング交換 [カセットデッキ]

ピンチローラーの交換

ピンチローラーの交換は、少し面倒。

ピンチローラー_TC-FX500R

カセットホルダーを外し、黒いワッシャーを外し、ピンチローラー一式を抜く。

ピンチローラー一式_TC-FX500R

この時、付属する小さいバネに注意。

右側は奥から手前に打ち抜く。

打ち抜いたピンチローラー_TC-FX500R

同様に左側も打ち抜こうとするが抜けず、手前から奥に打つと抜けたが?

写真のように、穴を開けた木板の上でやると良い。

ピンチローラーのサイズは、RXシリーズ同様、左右とも13/8/2mmだ。

関連:[SONY] ピンチローラーの交換(型式と大きさ) [カセットデッキ]

問題点

問題点は上記でいくつか書いているが、その時はピンチローラーが当時品のままだったので、ピンチローラーを新品に交換した。

だが、依然として以下の問題が生じている。

①正方向と逆方向の再生で走行音が違う。

正方向の走行音には「ウァ~ン…ウァ~ン…」という甲高い成分があり不快。

テープを入れなくても音の差があるので、テープの問題ではない。

②正方向と逆方向の再生で走行速度が違う。

正方向よりも、逆方向が遅い。

③テープ速度がフラつくことがある。

逆方向再生に限り、テープ速度がフラフラと変化する。

謎なのは、逆方向の最初の方は問題なくても、途中からフラフラになる。

逆方向のテープ終端だと、テープがかろうじて動いているレベルにまで低下する。

巻き取り側のテープ量が増えると負荷が増えこうなるのか?ということで、テープ量の少ない30分テープでも、終端になるとフラフラになる。

が、逆方向でもさほどフラつかないこともあり、振舞が不明。

テープを巻き直ししても同じ。

アイドラー上の(角ベルトがかかっている)プーリーを外し、軸にグリスを塗布しても同じ。

比較的容易に外せる大ギアを外し、軸にグリスを塗布しても同じ。

ベルトのテンションを疑い、キャプスタンベルトをキツめ(折長110mm→102mm)に交換しても同じ。

本機は、モーターに2本のベルトがかかっているので、互いに作用してしまうという弱点がある。

例えば、角ベルトにキツめを使うと、回転が遅くなり、その影響でキャプスタンベルトの流れも遅くなり、テープ速度が下がってしまう。

この点が気になるが、正規のゴムベルトの長さが不明なのでどうしようもうない。

正方向時には問題なく、逆方向で問題となる点に注目する。

オートリバース機はたいていそうだが、「σ(シグマ)型」に掛けるため、左右のフライホイールに対する、キャプスタンベルトの接触面積が異なる。

左側(表から見ると右側=正方向)にはしっかり掛かっているが、右側(表から見ると左側=逆方向)には、撫(な)でる程度にしか触れていない。

これにより、正方向はOK、逆方向はNGになる考えたのだが、ベルトをキツめに交換しても変わらないのは、上述の通り。

# 後のRXシリーズでも掛け方は同じだが、この点が改良されたとか。

これは、全バラ(メカ部の全分解)しかないかね…

本機のメンテナンス設計は非常に悪く、コネクタではなく基板に直ハンダのケーブルがメカ部につながっている有様なので、全バラは非常に面倒。

サービスマニュアルも手に入らない。

後継のTC-FX505Rのサービスマニュアルも手に入らず、TC-FX510Rのサービスマニュアルは手に入るがメカが違う。

仕様

・トラック方式:4トラック 2チャンネル
・ヘッド:録再(レーザーアモルファス)×1 消去(センダスト)×1
・モーター:DCサーボモーター×1
・周波数特性:30-17kHz±3dB(メタルテープ)
・周波数範囲:20-18kHz(メタルテープ)
・ワウ・フラッター:0.07 Wpeak、0.05% WRMS
・歪率:0.5%(DUAD)
・SN比:55(EIAJ)-58db(ドルビーOFF、ピークレベル、メタルカセット)、71db(ドルビーC)
・入力:マイク、LINE IN、リモコン
・出力ジャック:LINE OUT、ヘッドホン
・電源:AC100V 50/60Hz
・消費電力:11W
・大きさ:幅430x高さ105x奥行275mm
・重量:約4.7kg

機種選択

リバースは再生のみ、しかも繰り返し不可、回転式の古臭いカウンター、メーターがLEDと、趣味や懐古、コレクターを除けば、今さら本機を選ぶ理由はない。

ソレノイドによる瞬間的な動作音はまだしも、テープの走行音が大きいので、それも不快である。

海外機

TC-FX500Rは海外でも発売されているが、日本にはない機種として、TC-FX44という、TC-FX500Rのリバースを廃した、片方再生の機種がある(発売は同年の1982年)。

当然ながら、本体中央の「AUTO REVERSE」の文字はない。

TC-FX33よりは機能が上。

後継機

本機(TC-FX500R)の型式的な後継機は、2年後の1984年に発売された、TC-FX510R(TC-FX380と同年)。

TC-FX510R_カタログ
↑TC-FX510R(1984年) 59,800円

関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1984年8月]

5,000円の値上げ。

カウンターがリニア(実時間)、7セグLEDによる表示になった。

テープ窓が橙色に光るようになった。

ディレクションモードスイッチが付き、片面だけの録再、両面の録再、両面の連続再生(最大5回まで)が選べるようになった。

だが、このデザインの悪さ(笑)

にもかかわらず、この機種、グッドデザイン賞だが…どこが「グッド」なの?

さらに、消費電力が11W→21Wと、2倍になっている!

関連:カセットデッキの消費電力と電気代

次に取り上げる機種は、さらに遡(さかのぼ)り、いよいよ1970年代に突入するのかは分からない…

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Posted by nakamura