[SONY] ゴムベルトの交換(型式と長さ) [カセットデッキ]
ゴムベルトが使われているカセットデッキは、ゴムベルトが加水分解で伸びて溶けて動作しなくなる。
空気に触れていると加水分解するので、未使用品であっても、古いカセットデッキだと交換が必要である。
ゴムベルトの劣化
ゴムベルトは劣化するものなので、それは仕方がない。
伸びた/切れた/溶けたゴムは、交換すればよい。
切れたら動作しなくなるのは当然だが、少し伸びたくらいだとどうなるか。
モードベルトなら、動作が切り替わらないことがあり、再試行すると切り替わるとか。
その程度なら、昭和のオカン/オバチャンのように、叩くと一時的に直ることもあろう。
動かないからと言って、謎の液体を内部に噴射するのは厳禁!
キャプスタンベルトなら、テープ速度が不安定になったり、片方の頭でテープ速度が低下するなど。
関連:[SONY] 反転すると速度低下する不具合 [TC-RX77]
ES機のゴムベルトであるのが、表面がサラサラになっているもの。
肌触りは非常に良いのだが(笑)、抵抗が生まれないので、滑ってしまう。
その状態で少しでも伸びると、何かに擦(す)るような「謎の異音」が出ることもある。
恐らく、フライホイールをサラサラのゴムベルトが「撫(な)でる」ことにより、細かい振動が生じているのだろう。
ゴムベルトは、緩(ゆる)いよりはキツめを選んだ方が良いが、限度はある。
ゴムベルトがキツいと、回転の際に抵抗になり、モーターに悪影響を与えるからだ。
ゴムベルトの交換後は、モーターの速度調整が必要になる機種もある。
古いゴムベルトにヤスリをかけて摩擦力を上げるという方法は、磨いたところで縮むわけではないし、磨く際にゴムを伸ばしてしまうことがあるので、交換した方が確実。
ゴムベルトの入手先
キャプスタンベルト(1本):2DMG-T6JB:ゴムベルト(平) φ70×0.5×5 ←折長110mm
税込336円(2022年10月時点)
326円(2017年12月)
キャプスタンベルト(1本):EEHD-0PP6:ゴムベルト(平) φ65×0.5×5 ←折長102mm
税込336円(2022年10月時点)
モードベルト(1本):4DPG-S6JL:ゴムベルト(角) φ22×1.6T
税込210円(2022年10月時点)
「仕入価格が大幅に上がった」ため、2022年7月より値上げされた。
163円(2017年12月)
角ベルト複数入(33本以上):ゴムベルト カセットレコーダー修理・保守・交換用
税込650円(2022年10月時点)
φ22のモードベルトや、TCM-170採用機(後述)のキャプスタンベルトに使えるものが入っていた。
ES機
TC-K222ESG(1989年発売)以降に使われているのは、キャプスタンベルトとモードベルトの2本。
・TC-K222ESG/TC-K333ESG/TC-K555ESG
・TC-K222ESL/TC-K333ESL/TC-K555ESL
・TC-K222ESA/TC-K333ESA/TC-K555ESA
・TC-K222ESJ/TC-K333ESJ/TC-K555ESJ
・TC-KA3ES/TC-KA5ES/TC-KA7ES
関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
・キャプスタンベルト:2DMG-T6JB ゴムベルト(平) φ70×0.5×5 ←折長110mm
・オリジナル:3-564-088-00(BELT(2),CAPSTAN) ←TC-K222ESG(1989年発売)
・オリジナル:3-364-600-01(BELT CAPSTAN) ←TC-K222ESJ(1993年発売)
↑純正ゴムベルト TC-K222ESA(1991年)
5mm幅がない時は、4mmでも問題ない。
↑互換ゴムベルト(4mm) TC-K222ESA(1991年)
・モードベルト:4DPG-S6JL ゴムベルト(角) φ22×1.6T
なお「φ70×0.5×5」とは、直径70mm、厚さ0.5mm、幅5mmの意味である。
TC-200系(TC-K700S/TC-K710S)
キャプスタンベルトとモードベルトの2本。
廉価3ヘッド機は、ES機とは異なり、キャプスタン(フライホイール)が片方(向かって右側)しかないので、キャプスタンベルトが若干小さい点に注意。
・EEHD-0PP6 ゴムベルト(平) φ65×0.5×5 ←折長102mm
・オリジナル:3-356-744-01 BELT(CAPSTAN V)
3mm幅は、モーターのプーリー部分で中央からズレるので、推奨しない。
・モードベルト:4DPG-S6JL ゴムベルト(角) φ22×1.6T
・TC-K700S(1993年発売)
・TC-K710S(1995年発売)
TCM-CMAY系
使われているゴムベルトは1本だけである。
平ベルト 折長105mm(=直径67mm)
TC-R502(1986年)
194 3-391-134-01 BELT, MAIN
関連:[SONY] TC-R502(1986年発売) レビュー [カセットデッキ]
TC-R303(1987年)
145 3-391-107-01 BELT, MAIN
TC-K500R(1989年)
関連:[SONY] TC-K501ESとTC-R502の比較 [オートリバース]
関連:[SONY] TC-R302とTC-R303の比較 [オートリバース]
関連:[SONY] TC-K500R(1989年発売)のレビュー [カセットデッキ]
TCM-170系(TC-RX5x)
・TC-RX50(1988年発売)
・TC-RX51(1988年発売)
・TC-RX55(1989年発売)
使われているゴムベルトは1本だけである。
↑TC-RX55
・角ベルト 断面1mm 折長110mm(=直径70mm)
以下のセットの中に何本か入っていた。
他機とは異なり、平型ベルトでは「ない」ので、この3機種はワウ・フラッターが悪い。
B面再生時にテープ速度が落ちがちなので、若干キツ目でも良いかもしれない。
交換方法は、以下参照。
関連:[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
TCM-200系(TC-RX7x/RX7xx)
キャプスタンベルトとモードベルトの2本。
・キャプスタンベルト:2DMG-T6JB ゴムベルト(平) φ70×0.5×5 ←折長110mm
・オリジナル:3-356-730-01 (CAPSTAN R2)
3mm幅は、モーターのプーリー部分で中央からズレるので、推奨しない。
・モードベルト:4DPG-S6JL ゴムベルト(角) φ22×1.6T
・TC-RX70(1990年発売)
・TC-RX77(1991年発売)
・TC-RX79(1992年発売)
・TC-RX711(1993年発売)
・TC-RX715(1994年発売)
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
TC-RX70(1990年発売)以降のRX7x/RX7xxは、ほぼ共通のメカ(TCM-200シリーズ)なので、キャプスタンベルトも同じ。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
点字図書機(TC-RX1000T/TC-RX2000T)
全国点字図書館協議会推奨のカセットデッキで、使われているのは、キャプスタンベルトとモードベルトの2本。
・キャプスタンベルト:2DMG-T6JB ゴムベルト(平) φ70×0.5×5 ←折長110mm
・オリジナル:3-356-730-01 (CAPSTAN R2)
3mm幅は、モーターのプーリー部分で中央からズレるので、推奨しない。
・モードベルト:4DPG-S6JL ゴムベルト(角) φ22×1.6T
・TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産)
・TC-RX2000T(2003年発売)
TC-RX2000Tはオートリバース機ではないが、フライホイールが2個あり、キャプスタンベルトはTC-RX1000Tと同じ。
↑TC-RX2000T(2003年発売)
関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]
TC-RX300
キャプスタンベルトとモードベルトの2本。
・TC-RX300(1996年発売)
2ヘッドのオートリバース機であるが、TC-RX7x/RX7xxとはメカが異なるので、キャプスタンベルトは小さめ。
・キャプスタンベルト:EEHD-0PP6 ゴムベルト(平) φ65×0.5×5 ←折長102mm
・モードベルト:4DPG-S6JL ゴムベルト(角) φ22×1.6T
TC-WR705S
電動式ではないダブルデッキで、キャプスタンベルトとモードベルトの2本。
・TC-WR705S(1994年発売)
・キャプスタンベルト:EEHD-0PP6 ゴムベルト(平) φ65×0.5×5 ←折長102mm
・オリジナル:3-359-417-01 平ベルト φ67.2×0.5×4
なお、ダブルデッキで開閉が電動式(メカがTCM-200シリーズ)のものは、800番台及び900番台の一部のみ。
ダブルデッキ
テープ窓が緑に光り、電動扉のモデル(800番台と900番台の一部)は、メカデッキがTCM-200なので、ベルトはTC-RX7x/RX7xxと同じ。
・TC-WR820(1990年)
・TC-WR870(1991年)
・TC-WR990(1992年)
・TC-WR905S(1994年)
・TC-WR965S(1995年)
・SRP-CT3W(TC-WR965Sの業務用バージョン)
・キャプスタンベルト:2DMG-T6JB ゴムベルト(平) φ70×0.5×5 ←折長110mm
・モードベルト:4DPG-S6JL ゴムベルト(角) φ22×1.6T
メカが2台搭載なので、必要なベルトの本数も倍となる。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
モードベルト
モードベルトは、以下の小袋の中のが使える。
φ22でなくても、φ20でも問題ない。
千石電商なら、太さは1.6mm角となるが、もう少し細い(1.2mmあたり)方が外れにくいので良。
折長
折長(おりちょう)は、円形のゴムベルトを2ツに折って、その長さを測ったもの。
円形ベルトの直径を正確に測るのは難しい(キレイな円を作れない)ので、折長というものがあるのだ。
折長、円周、直径には、以下の関係がある。
・折長×2=円周
・円周÷π(3.14)=直径
・直径×π(3.14)=円周
・円周÷2=折長
つまり、
・直径70mmだと、円周は219.8mm、折長は109.9mm
・直径65mmだと、円周は204.1mm、折長は102.05mm
となる。
厳密には、ゴムベルトの厚みを考慮する必要があるが、カセットデッキに於いては無視してよいレベルだ。
ベルトの大きさ
モードベルトはテープ走行に関係ないので、少し小さめのφ20でも問題ないが、キャプスタンベルトはテープ走行に影響を与えるので、大きさは上記に合わせたい。
φ70の箇所にφ65を使っても動作はするが、係る部品(モーターやキャプスタン)に負荷がかかり、異音や故障、寿命低下の原因になりかねない。
バンコードで自作
バンコード(丸ベルト)とは熱可塑性ポリウレタンでできたベルトで、加熱により簡単かつ強固に接合できるので、必要な長さのベルトが自由に作れる。
モードベルトをバンコードで自作する場合は、断面直径1.5mmのを75mmに切ったものを接合すると良い感じ。
円周75mm÷3.14=23mm(直径)
はんだごての先端にカッターの刃を取り付けて熱が伝わるようにし、刃を両端で挟むようにして溶かし、速やかにスライドして溶着する。
当然ながら、断面が円形なので、モードベルトは使えるが、キャプスタンベルトには使えない。
ベルト交換前
劣化したゴムベルトを除去する必要がある。
伸びている程度であれば除去は容易だが、溶けていると除去は苦労する。
以下に挙げるパーツクリーナーを染み込ませたティッシュで念入りに除去すること。
溶けたゴムが手や周囲に付くと困るので、新聞紙などを敷き、ゴム手袋などをするとよいだろう。
モードベルトを掛けるプーリーは溝が狭いので、綿棒にパーツクリーナーを染み込ませて除去する。
除去が不完全だと、新たに掛けたゴムベルトに付いて滑る原因となるので、できるだけ除去しておきたい。
ベルト交換後
キャプスタンベルト交換後、キャプスタンモーター(MMI-6S2LKS/MMI-6S2LK)の背面にある可変抵抗を回して速度を調整する必要がある。
TC-RX1000Tは、モーターが別型(MMI-6H2LWK)であり、背面に可変抵抗はない。
別基板にある半固定抵抗を回して速度を調整する。
クォーツロックサーボのES機やTC-K710Sは、調整する必要がないので楽。
速度調整に関しては、以下のページを参照のこと。
関連:[SONY] キャプスタンモーター(MMI-6S2LKS/MMI-6S2LK/MMI-6H2LWK) [カセットデッキ]
中華ゴム
1袋に大量に入っている中華製ゴムベルトは、材質が不均一でムラがあり、キャプスタンベルトに使うとワウ・フラッターが大きいので避けた方が良いが、
1本で250円程度の「高級な」中華製は、千石電商のものと大差なく、優秀。
テープ走行に関係のないモードベルトは、激安中華製でも問題ない。
同じく、ゴムが劣化するピンチローラーも、交換しておこう。
関連:[SONY] ピンチローラーの交換(型式と大きさ) [カセットデッキ]
関連:[SONY] カセットデッキの修理について [サービスセンター]
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