[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
SONYのカセットデッキの最上位機種群である、ESシリーズ。
ES:Extremely High Standard
それは、1965年以来、ソニーの高品位コンポーネントに受け継がれてきた称号です。
好みの領域を超えて、普遍の価値を持つ音を生み出したい。
オーディオ機器の存在を忘れて、心から音楽に浸れる上質な時間を届けたい。
そのために、回路構成やパーツ、機能、操作性の吟味はもちろん、設計者自らが深く音楽と親しみ、完成を磨く努力を惜しみません。
リスナーに、音楽とのかけがえのないひとときを。
オーディオ大好き少年(当時)たちは、このような文言にカンタンに騙されしまう(笑)
数字は「2→3→5→7」の順で上位となるが、
・ES機は欲しいがカネがない。
・2とそれ以外も、メカ部は同じなので音は変わらないでしょ?
・2以外は分解が面倒なので嫌!
・サイドウッド(笑)
などという人は、2を選択するのか?
TCM-200以前のES機
・1982年:TC-K555ES/TC-K666ES/TC-K777ES
ホテルニュージャパン火災、松田聖子「赤いスイートピー」
・1984年:TC-K333ES/TC-K555ESII
かい人21面相、杏里「悲しみがとまらない」
関連:[SONY] TC-K555ESIIとその開発 [1984年]
・1985年:TC-K501ES
つくば万博、レベッカ「フレンズ」
・1986年:TC-K555ESX/TC-K777ESII
フライデー襲撃事件、テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」
↑TC-K501ESは、ESでありながら、唯一のオートリバース機!
# 海外モデルでは、TC-RX70ES/TC-RX77ES/TC-RX79ESなど、ES付きのオートリバース機が多々ある。
・1987年:TC-K333ESX
ファイナルファンタジー発売、柴田恭兵「ランニング・ショット」
↑柴田恭兵も、2021年の8月で70歳!
関連:70歳になった俳優・柴田恭兵 (文春オンライン)
・1988年:TC-K333ESR/TC-K555ESR
ドラゴンクエストIII発売、Wink「愛が止まらない」
TCM-200以降のES機
本頁では、メカが新しくなった(TCM-200)以降の機種について記す。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
・TC-K222ESG:1989年
昭和天皇崩御(昭和64年→平成元年)、浜田麻里「Return to Myself」
・TC-K222ESL:1990年
スーパーファミコン発売、米米CLUB「浪漫飛行」
・TC-K222ESA:1991年
千代の富士引退、CHAGE and ASKA「SAY YES」
・TC-K222ESJ:1993年
細川内閣成立、class「夏の日の1993」
・TC-KA3ES:1995年
阪神・淡路大震災、Windows95、シャ乱Q「ズルい女」
TCM-200ではソレノイドを廃止して静音化、テープ窓点灯、電動で扉が閉まるなど、より使いやすくなった。
TC-K222ESG
発売:1989年
価格:59,800円
メカデッキ:TCM-200D2
TC-K333ESR(1988年発売)の後継であり、メカが新しくなった最初のES機。
メカ部は左(333/555はセンター)。
ボタンが角ばっているなど、デザイン的に古臭いが、後継のESLから変化してしまうので、80年代テイストを帯びたデザインが好きな人向け。
電解コンデンサが液漏れしていることが多いので要チェック。
音質:中音域がよく出る
海外モデル:TC-K850ES
兄弟モデル:TC-K333ESG/TC-K555ESG
TC-K222ESL
発売:1990年
価格:59,800円
メカデッキ:TCM-200D4
前モデル(ESG)の翌年に登場。
メカ部は左(333/555はセンター)。
デザインが今風(謎)になった。
キャプスタンの軸受け(巻取り側)に、サファイアを採用(Lapis)。
銅板(アースライン)のハンダ割れが多いので要チェック。
修理費用(2001年時点,税別)
・部品代:3,800円
・技術料:9,800円
2021年時点で、SONYは修理を受け付けていない。
海外モデル:TC-K870ES、TC-K770ES(Dolby HX PROのON/OFFボタンを抜いたもの?)
音質:低音域がよく出る
兄弟モデル:TC-K333ESL/TC-K555ESL
関連:TC-K222ESL
TC-K222ESA
発売:1991年
価格:60,000円
メカデッキ:TCM-200D10
前モデル(ESL)の翌年に登場。
メカ部は左(333/555はセンター)。
変化は、カセットリッドのデザイン程度なので、ESLの光沢のあるカセットリッドが嫌い!という人向け。
↑TC-K222ESAの基板
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パッドプレッシャーリダクション機構
ヘッド表面に、4ツの青い突起がある。
(説明は次項TC-K222ESJ参照)
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ESL同様、銅板(アースライン)のハンダ割れが多いので要チェック。
関連:[SONY] TC-K222ESAの分解修理と怪奇現象 [カセットデッキ]
音質:高音域がよく出る
海外モデル:TC-K890ES、TC-K790ES(Dolby HX PROのON/OFFボタンを抜いたもの?)
兄弟モデル:TC-K333ESA/TC-K555ESA
関連:TC-K222ESA
TC-K222ESJ
発売:1993年
価格:65,000円
メカデッキ:TCM-200D11
前モデル(ESA)の2年後に登場。
センターメカとなった(333/555もセンター)。
進化
・DOLBY S NRに対応。
・パッドプレッシャーリダクション機構を搭載。
劣化
・LINE INが1系統に減少。
・DOLBY NRの種類やMPX FILTERのON/OFF、Dolby HX PROのON/OFF、CD DIRECTがFL管に表示されなくなった。
・DISPLAY MODEスイッチが廃止。
何故か価格が5千円も上昇、DOLBY S NR代か、ボレると踏んだのかは定かではない。
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パッドプレッシャーリダクション機構
ヘッド表面に、4ツの青い突起がある。
SONY曰く、
「カセットハーフには、テープをヘッドに押し当てるためのパッドが備えられているが、クローズドループ デュアルキャプスタン方式では、この圧力が余分となり、かえってモジュレーションノイズを増やす問題があった。」
「ヘッドの表面に凸状のせり出し部分を設け、これがテープ走行方向左右のパッド両端部に当るようにすることで、余分なパッドの圧力がかからないようにする機構。」
「これは、クローズドループ デュアルキャプスタンの環境で効果的に働き、ループ内のテンションコントロールを主体とした理想的なテープコンタクトを実現することで、モジュレーションノイズを低減する。」
突起と言っても、ネジ緩み止め剤が固まったようなものが載っているだけであり、ヘッドの掃除で容易に取れてしまう程度のシロモノ(笑)
これが優秀な「ソニータイマー」を支える、日本の高度な技術である!
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CD DIRECT(入力のパススルー)ボタンはあるが、LINE INが1系統に減少、複数ソースの同時接続ができなくなった。
1993年の発売でありながら、AMS(オートマチックミュージックセンサー)が前後1曲しかできない。
# 同じく1993年発売の廉価3ヘッド機であるTC-K700Sは前後30曲。
センターメカにより、FL管が変わったが、表示される内容が大幅減少。
↑TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESAのFL管
FL管が小型になったとは言っても、表示させる場所があるにもかかわらず、表示しない罠!
↑TC-K222ESJのFL管
左下等に空きスペースはあるが、DOLBY NR、MPX FILTER、Dolby HX PRO、CD DIRECTのパターン自体がないことが分かるだろう?
よって、ボタンの状態で判別するしかないが、目視では判別困難!
↑ONかOFFかスグに分かるか?
暗所では、まず分からない。
DOLBY NRの種類やMPX FILTERのON/OFFは、廉価3ヘッド機のTC-K700S/TC-K710Sでも表示されるので、ES機が下位機種に劣るという惨状!
↑TC-K700S/TC-K710SのFL管
2年もの間、何をやっていたのだ?
という具合で、非常に中途半端な機種。
後継のKAシリーズは、最終ESにつき中古価格が異常高騰しているので、妥協できるならこの機種で手を打つかは、キミの判断だ!
↑TC-K222ESJの基板
関連:[SONY] TC-K222ESJのメンテナンス [カセットデッキ]
音質:平たい音
海外モデル:TC-K909ES、TC-K808ES(Dolby HX PROのON/OFFボタンを抜いたもの?)
兄弟モデル:TC-K333ESJ/TC-K555ESJ
関連:TC-K222ESJ
TC-KA3ES
発売:1995年
価格:65,000円
メカデッキ:TCM-200D15
前モデル(ESJ)の2年後に登場。
センター継続(KA5ES/KA7ESもセンター)。
最終のESモデルはTC-KA3ES/TC-KA5ES/TC-KA7ESとなったので、TC-KA3ESがTC-K222ESJの後継。
進化
・AMSが前後30曲に増加(マルチAMS)。
・キャリブレーション点が2点→3点(400Hz/3kHz/15kHz)になった。
・REC EQ CALが無段階調整可能に。
・リジッドハーフホールドメカニズム搭載。
・その他
復活
・FL管内の、DOLBY NR、MPX FILTER、Dolby HX PRO
劣化
・CD DIRECTボタンが廃止。
・カセットリッドのデザイン?
DISPLAY MODEスイッチは、廃止されたまま。
ゴールドとブラックモデルがある。
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リジッドハーフホールドメカニズム
カセットハーフが直接受ける振動や音圧を防ぐため、リジッドハーフホールドメカニズムを採用。
耐振性の高いファインセラミックコンポジット材を使用したカセットホルダーや、制振性に優れたソルボセインを使用したカセットスタビライザーはもとより、従来片側でロックしていたカセットホルダーを両サイドでロックするデュアルロックに変更し、さらにカセットスタビライザーの効果を確実なものとするために、カセットリッドが閉じてからスタビライザーがハーフに圧着するディレイドアクションスタビライザー機構により、テープをより確実に固定している。
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KAシリーズは、最終のESモデルなので、中古ジャンク品でも高い。
海外モデル:TC-KA6ES(Dolby HX PROのON/OFFボタンを抜いたもの?)
関連:TC-KA3ES
TC-KA7ES
発売:1995年
価格:120,000円
TC-KA7ESは、ツインLapisとして、キャプスタンの軸受けの両方にサファイアが使われており(KA3ES/KA5ESは片方のみ)、ヘッドには純度99.9999%の6N材を使用した6N巻線レーザーアモルファスヘッドが使われており、ヘッドのシールドケースには謎の金メッキが施されている。
関連:[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]
カラーはゴールドのみ。
スーパーバイアスは、KA5ESと同じ210kHz(KA3ESは160kHz)。
TC-KA7ESは、最終且つ最上位なので、ジャンク品でも15万円以上する(2021年8月時点)。
1995年発売時の価格は12万円(税別)なので、数字上は購入価格以上で売れることになる!が、上納金(例:ヤフオクなら1割)を考慮すると、やはり満たない。
中古価格
ご存じのように、中古カセットデッキの価格は高騰している。
(2021年8月時点)
ヤフオク、送料別、ジャンク品、付属品ナシ
・TC-K222ESG:1.1万円前後
・TC-K222ESL:1.2万円前後
・TC-K222ESA:1.3万円前後
・TC-K222ESJ:1.4万円前後
・TC-KA3ES:2.1万円前後(ゴールドモデル) 価格バラつき多し
2021年内でも、3月頃は、TC-K222ESGが送料込で1万円程度で手に入ったが、その後高騰し、送料別で1.2万円を超えることもある。
逆に、TC-K222ESL/TC-K222ESA/TC-K222ESJは、春に比べると、若干の下落傾向。
送料別で1.5万円程度していたTC-K222ESJが、8月には1.3万円程度で手に入ることもある。
TC-KA3ESはバラつきが大きく、ゴールドモデルで美品なら、3.2万円を超えることもある。
高騰の理由の一つに、外人のヒモ付きである、入札代行業者がある。
入札者の評価を見ると、評価が異常に多いので判別できる。
評価を見て、代行業者と判断したら、無理に競らないことだ。
海外モデルが日本で発売されていないのと同様、日本モデルは海外で出ていないことが多いので、外人がそれを狙いにきているのかは知らない。
外人が設定した予算を超えないと勝てないので、自分の設定価格を超えたら、流すべきだろう。
当然ながら、外人の「注文」がない限り、代行業者は入ってこないので、次回以降を狙うか。
ジャンク品であっても、程度(=外観)により価格が大きく変わるので、こまめにチェックするしかない。
新たに生産されない以上、玉数は減少する一方で、価格は高騰するように思えるが、求める人の数も減る(略)ので、いずれ落ち着く?
2010年前後なら、これらのES機でも、ジャンクなら千円程度、完動美品でも5千円程度で買えた事実を知ると、とても現在の相場で入札する気にはならない(笑)
老後二千万円問題を軽くクリアしているだろう、麻生太郎のような連中は、全部/全台/全て/あるだけ/ALL/根コソギ買い占めるがよい。
関連:[SONY] 3ヘッド機対決(比較) [TC-K222ESJ,TC-K710S,TC-K700S]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
関連:[SONY] Dolby S NR 対応機種 [カセットデッキ]
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