[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]
LC-OFC Laseramorphous Head
ソニーは音質向上を目指し、1986年11月以降発売の全モデル(注1)に、LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッドを採用。
デジタル時代への新たな解答として、ソニーの35年に及ぶ磁気ヘッドの基礎研究から生まれた「レーザーアモルファスヘッド」。
これは、アモルファス磁性合金が持つ優れた磁気特性を高度な加工技術で生かし切った、まさにデジタル時代の高性能ヘッドです。
ソニーは、このヘッドの完成度をさらに高めるため、ヘッド巻線にLC-OFC(線形結晶無酸素銅)を採用。
・LC:Linear Crystal(リニアクリスタル)
・OFC:Oxygen Free Copper(無酸素銅)
LC-OFCは、第一種無酸素銅(純度99.995%以上)の結晶を巨大化して結晶境界の数を減らし、容量リアクタンスによる歪(ひず)み発生を激減させたものです。
これにより、信号ロス、特に中高域のロスも大幅に改善でき、音楽の微妙なニュアンスや、雰囲気感の再現力を一段と高めました。
ソニーは、このLC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッドを、カセットデッキ全機種に搭載。
デジタルソースのクオリティをフルに生かした録音/再生に不可欠の基本技術になっているのです。
①TC-K555ESX(1986年11月以降発売)の、独立懸架3ヘッド方式用、LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッド
②TC-WR950(1986年11月以降発売)の、LC-OFC巻線レーザーアモルファス録再ヘッド
③LC-OFC(上)と、通常のOFC(下)の結晶状態
①TC-K333ESR(1988年発売)の、独立懸架3ヘッド方式用、LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッド
②TC-RX80(1988年発売)の、LC-OFC巻線レーザーアモルファス録再ヘッド
LC-OFC(リニアクリスタル無酸素銅)とは、第一種無酸素銅の結晶を熱処理により巨大化し、線材にする過程で引き伸ばしているため、結晶境界の数が少なく、容量リアクタンスによる音楽信号の劣化の少ない無酸素銅で、通常のOFC 1mあたり5万個を超える結晶が、LC-OFCにすることにより、数十個程度となります。
LC-OFCを採用したものでは、スピーカーコードなどが良い評価を受けています。
再生ヘッドのコイルには、0.1mm以下の線材を10m以上巻くので、LC-OFC線材による音質の向上は飛躍的なものです。
注1:「1986年11月以降発売の全モデルに」とあるが、これは当時の話であり、その後、「PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド」や、コストダウンのために「SD(Super High Density=ハードパーマロイのSONYの呼称)ヘッド」、「P(パーマロイ)ヘッド」が採用された機種もある。
PC-OCC Laseramorphous Head
その後、ヘッド巻線に高純度無酸素銅(PC-OCC)を採用した「PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド」が登場。
PC-OCC:Pure Copper by Ohno Continuous Casting process(単結晶状高純度無酸素銅)
# Ohno:大野篤美 (PC-OCCの製法の開発者)
PC-OCCの銅の純度については公表されていないが、ES機のESL(1990年)以降、最終のKA(1995年)までにも使われていることから、PC-OCCと遜色ないものと思われる。
カセットリッドでの表記
TC-RX50やTC-RX55、TC-RX70のように、カセットリッドに「LC-OFC LASERAMORPHOUS HEAD」と書かれている機種もあれば、TC-RX77やTC-RX79、TC-RX711、TC-RX715、TC-RX1000Tのように、単に「LASERAMORPHOUS HEAD」となっているものもある。
↑TC-RX50(1988年) LC-OFC
↑TC-RX55(1989年) LC-OFC
↑TC-RX70(1990年) LC-OFC
↑TC-RX77(1991年) ここで「LC-OFC」が消えた
↑TC-RX79(1992年)
↑TC-RX711(1993年)/TC-RX715(1994年)/TC-RX1000T(1994年)
単に「LASERAMORPHOUS HEAD」となっているものは、PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッドであるが、TC-RX1000Tに関しては不明だ。
・TC-R302(1986年):非採用
・TC-R502(1986年):LC-OFC
・TC-R303(1987年):LC-OFC
・TC-RX50(1988年):LC-OFC
・TC-RX51(1988年):LC-OFC
・TC-RX55(1989年):LC-OFC
・TC-RX70(1990年):LC-OFC
・TC-RX77(1991年):PC-OCC
・TC-RX79(1992年):PC-OCC
・TC-RX711(1993年):PC-OCC
・TC-RX715(1994年):PC-OCC
・TC-RX1000T(1994年):不明(レーザーアモルファスヘッドではある)
ES機の場合は、1990年発売のESL以降、PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッドとなっている。
・1989年:TC-K222ESG/TC-K333ESG/TC-K555ESG:LC-OFC
・1990年:TC-K222ESL/TC-K333ESL/TC-K555ESL:PC-OCC
・1991年:TC-K222ESA/TC-K333ESA/TC-K555ESA:PC-OCC
・1993年:TC-K222ESJ/TC-K333ESJ/TC-K555ESJ:PC-OCC
・1995年:TC-KA3ES/TC-KA5ES:PC-OCC
但し、TC-KA7ESだけは、純度99.9999%の6N材を使用した6N巻線レーザーアモルファスヘッドが使われており、ヘッドのシールドケースには謎の金メッキが施されている。
関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
TC-K700S(1993年)やTC-K710S(1995年)、TC-RX300(1996年)のように、ヘッドの材質については何も書かれていない機種もある。
↑(左)TC-K710SとTC-K700S(右)
・TC-K700S(1993年):SD(Super High Density=ハードパーマロイのSONYの呼称)
・TC-K710S(1995年):SD(Super High Density=ハードパーマロイのSONYの呼称)
・TC-RX300(1996年):SD(Super High Density=ハードパーマロイのSONYの呼称)
SONYの比較表によると、TC-RX300は、確かにレーザーアモルファスヘッドでは「ない」のだが、何かは示されていない。
↑「レーザーアモルファスヘッド」が「-」となっている
関連:カセットデッキ仕様・機能比較表 (SONY)
取扱説明書に「SD」とあるので判明した次第。
TC-RX2000Tは、取扱説明書に「Pヘッド」とあるので、パーマロイヘッドだね。
↑TC-RX2000T(2003年)
関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]
カセットリッドを見ると「LC-OFC」がないね、「LASERAMORPHOUS」がないね、ということだが、ヘッドの種類をカセットリッドに明示し、ハッキリさせるべきではなかったか?
まぁ、ハッキリ書いてしまうと、密(ひそ)かに行ったコストダウンがバレてしまう可能性が高く、「どうせお宅(タク)らの耳では分からんでしょ?」ということで、ボカした方が安全、と踏んだのかもしれない。
TC-RX70→TC-RX77のように、表目には同じ「CASSETTE STABILIZER」としながら、カセットホルダーの引込機構を廃した(=コストダウン)例もあるので、SONYは裏で何をやってくるか分からず、非常に危険である。
↑TC-RX70の、カセットホルダーの引込機構
双方とも「CASSETTE STABILIZER」とあり、同じように見えるが…
↑(左)TC-RX70とTC-RX77(右)
TC-RX70にはあった引込機構が、TC-RX77にはない!
↑(左)TC-RX70とTC-RX77(右)
また、海外モデルには、TC-K470のような「HIGH DENSITY HEAD」とある機種もあり、その素性がよく分からない。
↑TC-RX470
関連:[SONY] TC-RX470とTC-K470の比較 [海外モデル]
いずれにしても、「どうせお宅(タク)らの耳では分からんでしょ?」
関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
関連:[SONY] 廉価の3ヘッド機(TC-K600,TC-K700S,TC-K710S) [カセットデッキ]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
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