[SONY] リーフスイッチの不良と修理 [カセットデッキ]
リーフスイッチ
メカ部の、テープが収まる部分の上に、リーフスイッチが見られる。
リーフスイッチは、通常はOFFだが、テープで押し上げられることでONになるスイッチのこと。
薄い銅板から成るスイッチなのでLeaf(葉)と呼ぶのかは知らない。
テープの有無、誤消去防止ツメの有無、ハイポジ/メタルの検出に使われる。
リーフスイッチによるテープ種別の自動検出ができるようになったのは、RXシリーズではTC-RX55からで、
↑TC-RX55(1989年) 36,900円
それ以前のTC-RX50/TC-RX51では、手動で設定する必要があった。
↑TC-RX50(1988年) 39,800円
TC-RX50とTC-RX55のメカを比べると、テープ種別検出用のリーフスイッチが2本追加されているのが分かるだろう。
↑(左)TC-RX50とTC-RX55(右)
リーフスイッチの内部には2枚の薄い銅板があり、それが接触することで通電、ONとなる。
なので、接触面に錆が出ると、接触不良となり、テープの有無、誤消去防止ツメの有無、ハイポジ/メタルの検出が異常になったりする。
押されてONになるべきところが、接触不良によりOFFのままであったり、ON/OFFが頻繁に切り替わるなどの振舞をするためだ。
これによる不具合には、具体的には以下のようなものがある。
・テープを入れているのに、入っていないと認識され、何も操作できない。
・誤消去防止ツメがあるのに折っていると認識され、録音ができない。
・ノーマルテープを入れているのに、ハイポジやメタルと認識される。
・テープの種類が頻繁に切り替わる。
いずれにしろ、このような現象があると、カセットデッキをまともに使うことができないため、対策をする必要がある。
リーフスイッチの種類と数
リーフスイッチには、根元が黒色ものと、灰色のものの2種類がある。
↑上が黒色、下が灰色
黒色ものと、灰色のものは、テープ側の突起の位置が異なる。
リバース機の場合は、以下の5個。
・テープ有無検出用(灰):1個
・誤消去防止ツメ検出用(黒):2個(A面とB面)
・ハイポジ検出用(黒):1個
・メタル検出用(黒):1個
ES機など、非リバース機の場合は、以下の4個。
・テープ有無検出用(灰):1個
・誤消去防止ツメ検出用(黒):1個(A面のみ)
・ハイポジ検出用(黒):1個
・メタル検出用(黒):1個
但し、TC-RX2000Tのように、他機のメカ部を流用している場合は、本来は必要のないリーフスイッチが載っていることもある。
↑TC-RX2000Tのリーフスイッチ(右端は不要)
TC-RX2000Tはリバースがない(正方向のみ)のに、逆面側の誤消去防止ツメ検出用のリーフスイッチがある。
リーフスイッチのないメカを別途用意するよりは、流用した方が安上がり(=手間がかからない)というわけだ。
リーフスイッチの接点劣化
銅の表面は、空気中の酸素や硫黄により、酸化や硫化が生じ、接触不良を起こす。
リーフスイッチには保護用のカバーがあるが、密閉ではないため、酸化や硫化は防げない。
よって、長く使っていると、必ず接触不良が発生する。
接触不良の生じたリーフスイッチは、リーフスイッチを新品に交換すれば直るが、既にSONYは修理を受けておらず、交換用のリーフスイッチの入手も困難。
関連:[SONY] カセットデッキの修理について [サービスセンター]
よって、リーフスイッチを分解し、接点を磨く必要がある。
リーフスイッチには、保護用のカバーが付いており、これを外せるようになるまで、メカ部を分解する。
ゴムベルト交換の際にはメカ部の分解が必要なので、同時に行うのが良いだろう。
リーフスイッチはそもそも分解できる構造とはなっていないため、無理に分解すると、固定用の突起が破損、保護用のカバーが固定できなくなる。
↑赤印がリーフスイッチの突起
リーフスイッチの下側の隙間を、ピンセットやマイナスドライバー等で広げ、その間に保護用のカバーを引き抜くと、突起を折らずに抜ける。
↑マイナスドライバーをひねると保護用のカバーが開く
だが、実際にやってみると、これがなかなか難しい。
ピンセットやドライバーは滑るので、収縮チューブを巻くかし、滑りを防ぐなどの工夫が必要。
保護用のカバーを外したら、薄い銅板が2枚現れるので、先端にある接点を磨く。
↑右端の上下にある突起が、リーフスイッチの接点
目の細かいヤスリで磨く人もいるが、コピー用紙で十分。
まず、接点表面の汚れを取るため、接点ブライトを塗布する。
そのまま、1-2分置く。
コピー用紙を2つに折り、接点間に入れ、指で接点を摘まみ、紙を挟みながら、紙を動かす。
接点の導通を、テスターで調べる。
↑これはリーフスイッチを外した場合
導通時に音で知らせるタイプのテスターだと、磨く前には「プィ~…ピ..ピ..ピ…プィ~…プィ~」という不安定だった導通が、磨いた後は「ピー!」と快調になるのが分かるはずだ。
導通の確認後、保護用のカバーを戻す際も、同様に広げながら行う。
以下は1991年に発売されたES機であるTC-K222ESJの動画だが、リーフスイッチの件にも触れている。
固定用の突起を破損させてしまい、保護用のカバーが固定できなくなった場合は、上側の銅板の上面と、保護用のカバーを、接着剤で固定する。
テープを入れた際に動くのは下側の銅板なので、これでもなんとかなる。
但し、保護用のカバーが外せなくなるので、次回の接点磨きができなくなるが、それは何十年後?
磨いたままの接点だと、再び劣化してしまい、再度磨く必要が出てくるので、表面保護のために、接点復活王を塗布するのも良いだろうが、1滴でも多いくらい。
接点復活王は油状の液体なので、ホコリを寄せ集める危険性があるが…塗らない方が良い?
コンタクトグリスは粘度が高いので、塗らない方が良いだろう。
コンタクトグリスは、スライド接点用だ。
修理中にメカ部を落下させるなどでリーフスイッチが物理的に破損した場合、軽度の破損なら修正できるが、銅板が大きく曲がるなどして重症なら、修正は不可。
↑ここまで破損の破損はまずない(笑)
微妙な位置関係でON/OFFが行われるため、ペンチやピンセットでは修正しきれないのだ。
この場合は、ジャンク機を手に入れ、リーフスイッチを移植しよう。
なお、メカデッキがTCM-200のES機とリバース機のリーフスイッチは同じなので、流用が可能である。
例えば、ES機であるTC-K222ESJのリーフスイッチを手に入れるのに、高価なES機は必要なく、TC-RX715などのリバース機でよい。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
リーフスイッチが同じ部品の機種
・TC-K222ESG/TC-K333ESG/TC-K555ESG
・TC-K222ESL/TC-K333ESL/TC-K555ESL
・TC-K222ESA/TC-K333ESA/TC-K555ESA
・TC-K222ESJ/TC-K333ESJ/TC-K555ESJ
・TC-KA3ES/TC-KA5ES/TC-KA7ES
・TC-RX70
・TC-RX77
・TC-RX79
・TC-RX711
・TC-RX715
・TC-RX1000T
・TC-RX2000T
但し、リーフスイッチには、上述のように根元が黒色のものと灰色のものがあり、突起の場所が異なるので、黒色と灰色は互いに流用できない。
灰色のもの(テープ有無検出用)は、メカ1台につき1つしかないので、貴重ともいえる。
関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
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