FL管(蛍光表示管)について

2023年7月18日



FL管(蛍光表示管)

カセットデッキの表示部である、FL管(蛍光表示管)。

点灯FL管_TC-RX1000T

サービスマニュアルでは、「INDICATOR TUBE(表示管)」「FLUORESCENT(蛍光)」などと表示されている部品だ。

液晶と比較した際の利点は、表示そのものが光るため、視野角に優れ、コントラスト比が高く(ハッキリ見える)、かつ、応答速度が速いこと。

なので、素早く動くピークレベルメーターには向いている。

欠点は、消費電力が高いこと。

カセットデッキは電池ではなく電灯線で使うので、消費電力の点は無視できるだろう。

FL管_TC-RX1000T

FL管は、蛍光灯同様、中は真空なので、割れると光らなくなってしまうから、衝撃を与えないように注意が必要。

FL管をよく見ると、端が黒くなっており、「焦げた?」と思ってしまうが、これは製造工程でのものなので、問題ない。

FL管の端
↑右下が黒くなっているが、これで正常。

FL管は、蛍光灯同様、劣化により、徐々に暗くなっていく。

暗くなったFL管は回復しないが、FL管の前にある窓(ウィンドウ)を交換することで、見た目の明るさを変えることは可能。

ウィンドウの比較
↑天井のライトに透かすと、窓の色が違う!

関連:FL管の窓(ウィンドウ)について

個人的には、TC-K700STC-K710SのFL管(1-517-163-11)「TAPE」の「緑色」がお気に入りであるが、個体差なのかは分からないが、この緑色が暗くなっている場合がある。

TAPE_FL管_TC-K710S

この写真では明るく写っているが、当方所有のTC-K710Sも暗くなっている。

TAPE以外の表示は明るいので、緑色固有の問題?

FL管に付いているダイオード(1N4148M,8-719-987-63)を新品に交換しても、改善しない。

TC-K700SとTC-K710SのFL管は「1-517-163-11」で同じだが、

BJ161GK_1-517-163-11

基板が異なるので、入れ替えるならFL管のみを交換する必要がある。

FL管と基板_TC-K700S_TC-K710S

しかし、37本の足のハンダを外す必要があり、それを2本、つまり74箇所の除去、さらに交換後、74箇所のハンダ付けが必要!

1-517-163-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-517-163-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

付けるのはまだマシだが、外すのが大変!

素早くやらないと、ハンダの熱がFL管の内部に伝わり、FL管が故障する可能性が高まる。

FR301-81

上のような、電動のハンダ吸取器があればラクだが…

TC-R502

TC-R502(1986年)

古い機種だが、ピークメーターは長い。

FL管_TC-R502
↑-40から+10

カウンターは実時間(リニア)である。

TC-K501ES(1985年)と同じFL管である。

1-519-340-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-519-340-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

両機とも2ヘッド機だが、録音レベルキャリブレーションを搭載しているので、そのための「REC CAL」のパターンが右下にある。

パターンには「FILTER」があるが、これはTC-K501ESのもので、TC-R502はMPXフィルター非搭載なので、点灯することはない。

関連:[SONY] TC-K501ESとTC-R502の比較 [オートリバース]

TC-K600/TC-K500R

TC-K600(1988年) 3ヘッド機
TC-K500R(1989年) オートリバース機

FL管_TC-K500R
↑-40から+10

1-519-491-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-519-491-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

3ヘッド機とオートリバース機で同じFL管だと問題では?と思われるが、TC-K600にはCALIBRATION機能がなく、MONITOR(TAPE/SOURCE)は可能だがツマミの位置だけで判断するので、FL管には影響がない。

関連:[SONY] 廉価の3ヘッド機(TC-K600,TC-K700S,TC-K710S) [カセットデッキ]

TC-RX50/TC-RX55/TC-RX70

TC-RX50(1988年)とTC-RX55(1989年)、TC-RX70(1990年)のFL管は、部品の型式は異なるが、表示項目は同じ。

FL管_TC-RX50
↑TC-RX50(-20から+8)

FL管_TC-RX55
↑TC-RX55(-20から+8)

FL管_TC-RX70
↑TC-RX70(-20から+8)

1-519-447-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑TC-RX50(1-519-447-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)

ダブルデッキであるTC-WR810(1989年)も、同じ「1-519-447-11」を使用している。

1-519-493-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑TC-RX55/TC-RX70(1-519-493-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)

表示項目は同じだが、カウンターはTC-RX50/TC-RX55は単なる数字、TC-RX70は実時間(リニア)である。

ピークメーターが非常に短く、スペースのないダブルデッキならまだしも、シングルデッキでこれはダメでしょう…

TC-RX77/TC-RX79

TC-RX77(1991年)
TC-RX79(1992年)

FL管_TC-RX77
↑TC-RX77(-30から+8)

FL管_TC-RX79
↑TC-RX79(-30から+8)

1-519-658-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑TC-RX77(1-519-658-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)

1-519-722-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑TC-RX79(1-519-722-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)

差異は後述。

TC-RX711/TC-RX715/TC-RX1000T/TC-RX2000T

TC-RX711(1993年)
TC-RX715(1994年)
TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産)

FL管_TC-RX711_TC-RX715_TC-RX1000T
↑-30から+8

1-517-155-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

TC-RX2000T(2003年)も同じFL管を使っているものの、部品の流用であり、機能的に点灯しない部分が多い。

関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]

TC-K700S/TC-K710S

TC-K700S(1993年)と、その後継であるTC-K710S(1995年)は、FL管が同じであり、表示内容に変化はない。

FL管_TC-K710S_TC-K700S
↑-30から+8

1-517-163-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-517-163-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

上述したように、右下の「TAPE」は緑色に光る。

関連:[SONY] 廉価の3ヘッド機(TC-K600,TC-K700S,TC-K710S) [カセットデッキ]

TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESA

TC-K222ESG(1989年)
TC-K222ESL(1990年)
TC-K222ESA(1991年)

FL管_TC-K222ESA
↑-40から+10

・TC-K222ESG:1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
・TC-K222ESL:1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
・TC-K222ESA:1-519-560-21 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

表示内容が豊富。

TC-K222ESJ

TC-K222ESJ(1993年)

FL管_TC-K222ESJ
↑-40から+10

1-517-139-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-517-139-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

表示内容が減少し劣化、どうしてこうなった?(後述)。

表示内容の減少①

後継機種で、FL管の表示内容が減少する場合があるので注意!

TC-RX77(1991年)では表示されていたDOLBY NRの種類だが、後継のTC-RX79(1992年)では追い出された例。

FL管_TC-RX77
↑TC-RX77

FL管_TC-RX79
↑TC-RX79

中央下部の「JUST FADE OUT」の追加により、TC-RX77ではその場所にあったDOLBY NRが表示できなくなったのだ。

よって、DOLBY NRの選択状態は、ツマミで判別するしかない。

「JUST FADE OUT」を使わない人にとっては、最悪である。

重要項目が追い出されるというバカさ加減だが、FL管はSONYの製造ではなく、フタバ(双葉電子工業)に発注する必要があり、毎年新機種を出すような状況下では、大きく作り変えるのは無理だったのだろう。

表示内容の減少②

FL管の表示内容減少は、ES機にも見られる。

(TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESA)→TC-K222ESJは、表示内容が4項目も減少している!

FL管_TC-K222ESA
↑TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESAのFL管

TC-K222ESJがセンターメカになったことで、FL管が小型になったとは言っても、表示させる場所があるにもかかわらず、表示しない罠!

FL管_TC-K222ESJ
↑TC-K222ESJのFL管

左下等に空きスペースはあるが、DOLBY NR、MPX FILTER、Dolby HX PRO、CD DIRECTのパターン自体がないことが分かるだろう?

よって、ボタンの状態で判別するしかないが、目視では判別困難!

MPX FILTER_HX PRO_CALIBRATION_DIRECT_TC-K222ESJ
↑ONかOFFかスグに分かるか?

暗所では、まず分からない。

DOLBY NRの種類やMPX FILTERのON/OFFは、廉価3ヘッド機のTC-K700S/TC-K710Sでも表示されるので、ES機が下位機種に劣るという惨状!

関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]

TC-K222ESJ/TC-K333ESJ/TC-K555ESJのDolby表示がFL管にない理由

まず、上位機種について書く必要がある。

TC-K333ESAのFL管と、後継機でDolby Sが追加されたTC-K333ESJ/TC-K555ESJのFL管(蛍光表示管)の部品番号は、以下の通り同じである。

・TC-K333ESA(海外モデル:TC-K990ES)
 FLT601 1-519-629-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
 FLT881 1-519-630-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

・TC-K333ESJ/TC-K555ESJ
 FLT601 1-519-629-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
 FLT881 1-519-630-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

1-519-629-11
↑1-519-629-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

TC-K333ESAにはDolby Sはないので、このFL管(1-519-629-11)にはDolby B/Cのパターンはあるが、Dolby Sのパターンはない。

ESAのFL管(1-519-629-11)が余っていたのか、新規に作るのが面倒(カネがかかる)だったのかは知らないが、FL管を「流用」したということになる。

Dolby B/Cの時だけ光らせて、Dolby Sの時だけ光らせない(パターンがないので不可)というのはさすがにダメなので、Dolby全てを表示しないということにしたのだろう。

そして、TC-K222ESJのFL管は別部品だが、

・TC-K222ESJ(海外モデル:TC-K909ES)
 FLT601 1-517-139-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT

上位機種であるTC-K333ESJ/TC-K555ESJで光らないのに、下位機種であるTC-K222ESJで光るのはおかしいので、FL管(1-517-139-11)には、流用ではないのにもかかわらず、Dolbyのパターンが全くない。

FL管_TC-K222ESJ
↑TC-K222ESJのFL管

このようなつまらない理由で、ESAで表示された内容がESJで表示されないというのは、全くバカげている!

なお、TC-K333ESJ/TC-K555ESJのFL管については、流用していた(1-519-629-11/1-519-630-11)が尽きたのか、後になって、点灯しないパターンが元から無い「ESJ専用FL管」に置き換わった。

フタバが撤退

なお、SONY機のFL管を製造していたフタバ(双葉電子工業)は、2021年12月の受注を以て、蛍光表示管と蛍光表示管モジュール事業から撤退した。

関連:蛍光表示管および蛍光表示管モジュール事業からの撤退に関するお知らせ (双葉電子工業)

消費電力の大きいFL管は時代遅れであり、液晶や有機ELが主流なので仕方がないが、このFL管の輝きが、カセットデッキに於いては重要なのだ!

問題は、既存のカセットデッキのFL管が、いつまで光り続けるかだ…

関連:[SONY] TC-RX715とTC-RX1000Tの比較 [兄弟機]

関連:[SONY] ピンチローラーの軸の劣化 [カセットデッキ]



Posted by nakamura