FL管(蛍光表示管)について
FL管(蛍光表示管)
カセットデッキの表示部である、FL管(蛍光表示管)。
サービスマニュアルでは、「INDICATOR TUBE(表示管)」「FLUORESCENT(蛍光)」などと表示されている部品だ。
液晶と比較した際の利点は、表示そのものが光るため、視野角に優れ、コントラスト比が高く(ハッキリ見える)、かつ、応答速度が速いこと。
なので、素早く動くピークレベルメーターには向いている。
欠点は、消費電力が高いこと。
カセットデッキは電池ではなく電灯線で使うので、消費電力の点は無視できるだろう。
FL管は、蛍光灯同様、中は真空なので、割れると光らなくなってしまうから、衝撃を与えないように注意が必要。
FL管をよく見ると、端が黒くなっており、「焦げた?」と思ってしまうが、これは製造工程でのものなので、問題ない。
↑右下が黒くなっているが、これで正常。
FL管は、蛍光灯同様、劣化により、徐々に暗くなっていく。
暗くなったFL管は回復しないが、FL管の前にある窓(ウィンドウ)を交換することで、見た目の明るさを変えることは可能。
↑天井のライトに透かすと、窓の色が違う!
個人的には、TC-K700SやTC-K710SのFL管(1-517-163-11)「TAPE」の「緑色」がお気に入りであるが、個体差なのかは分からないが、この緑色が暗くなっている場合がある。
この写真では明るく写っているが、当方所有のTC-K710Sも暗くなっている。
TAPE以外の表示は明るいので、緑色固有の問題?
FL管に付いているダイオード(1N4148M,8-719-987-63)を新品に交換しても、改善しない。
TC-K700SとTC-K710SのFL管は「1-517-163-11」で同じだが、
基板が異なるので、入れ替えるならFL管のみを交換する必要がある。
しかし、37本の足のハンダを外す必要があり、それを2本、つまり74箇所の除去、さらに交換後、74箇所のハンダ付けが必要!
↑1-517-163-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
付けるのはまだマシだが、外すのが大変!
素早くやらないと、ハンダの熱がFL管の内部に伝わり、FL管が故障する可能性が高まる。
上のような、電動のハンダ吸取器があればラクだが…
TC-R502
・TC-R502(1986年)
古い機種だが、ピークメーターは長い。
↑-40から+10
カウンターは実時間(リニア)である。
TC-K501ES(1985年)と同じFL管である。
↑1-519-340-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
両機とも2ヘッド機だが、録音レベルキャリブレーションを搭載しているので、そのための「REC CAL」のパターンが右下にある。
パターンには「FILTER」があるが、これはTC-K501ESのもので、TC-R502はMPXフィルター非搭載なので、点灯することはない。
関連:[SONY] TC-K501ESとTC-R502の比較 [オートリバース]
TC-K600/TC-K500R
・TC-K600(1988年) 3ヘッド機
・TC-K500R(1989年) オートリバース機
↑-40から+10
↑1-519-491-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
3ヘッド機とオートリバース機で同じFL管だと問題では?と思われるが、TC-K600にはCALIBRATION機能がなく、MONITOR(TAPE/SOURCE)は可能だがツマミの位置だけで判断するので、FL管には影響がない。
関連:[SONY] 廉価の3ヘッド機(TC-K600,TC-K700S,TC-K710S) [カセットデッキ]
TC-RX50/TC-RX55/TC-RX70
TC-RX50(1988年)とTC-RX55(1989年)、TC-RX70(1990年)のFL管は、部品の型式は異なるが、表示項目は同じ。
↑TC-RX50(-20から+8)
↑TC-RX55(-20から+8)
↑TC-RX70(-20から+8)
↑TC-RX50(1-519-447-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)
ダブルデッキであるTC-WR810(1989年)も、同じ「1-519-447-11」を使用している。
↑TC-RX55/TC-RX70(1-519-493-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)
表示項目は同じだが、カウンターはTC-RX50/TC-RX55は単なる数字、TC-RX70は実時間(リニア)である。
ピークメーターが非常に短く、スペースのないダブルデッキならまだしも、シングルデッキでこれはダメでしょう…
TC-RX77/TC-RX79
・TC-RX77(1991年)
・TC-RX79(1992年)
↑TC-RX77(-30から+8)
↑TC-RX79(-30から+8)
↑TC-RX77(1-519-658-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)
↑TC-RX79(1-519-722-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)
差異は後述。
TC-RX711/TC-RX715/TC-RX1000T/TC-RX2000T
・TC-RX711(1993年)
・TC-RX715(1994年)
・TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産)
↑-30から+8
1-517-155-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
TC-RX2000T(2003年)も同じFL管を使っているものの、部品の流用であり、機能的に点灯しない部分が多い。
関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]
TC-K700S/TC-K710S
TC-K700S(1993年)と、その後継であるTC-K710S(1995年)は、FL管が同じであり、表示内容に変化はない。
↑-30から+8
↑1-517-163-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
上述したように、右下の「TAPE」は緑色に光る。
関連:[SONY] 廉価の3ヘッド機(TC-K600,TC-K700S,TC-K710S) [カセットデッキ]
TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESA
・TC-K222ESG(1989年)
・TC-K222ESL(1990年)
・TC-K222ESA(1991年)
↑-40から+10
・TC-K222ESG:1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
・TC-K222ESL:1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
・TC-K222ESA:1-519-560-21 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-519-560-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
表示内容が豊富。
TC-K222ESJ
・TC-K222ESJ(1993年)
↑-40から+10
↑1-517-139-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
表示内容が減少し劣化、どうしてこうなった?(後述)。
表示内容の減少①
後継機種で、FL管の表示内容が減少する場合があるので注意!
TC-RX77(1991年)では表示されていたDOLBY NRの種類だが、後継のTC-RX79(1992年)では追い出された例。
↑TC-RX77
↑TC-RX79
中央下部の「JUST FADE OUT」の追加により、TC-RX77ではその場所にあったDOLBY NRが表示できなくなったのだ。
よって、DOLBY NRの選択状態は、ツマミで判別するしかない。
「JUST FADE OUT」を使わない人にとっては、最悪である。
重要項目が追い出されるというバカさ加減だが、FL管はSONYの製造ではなく、フタバ(双葉電子工業)に発注する必要があり、毎年新機種を出すような状況下では、大きく作り変えるのは無理だったのだろう。
表示内容の減少②
FL管の表示内容減少は、ES機にも見られる。
(TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESA)→TC-K222ESJは、表示内容が4項目も減少している!
↑TC-K222ESG/TC-K222ESL/TC-K222ESAのFL管
TC-K222ESJがセンターメカになったことで、FL管が小型になったとは言っても、表示させる場所があるにもかかわらず、表示しない罠!
↑TC-K222ESJのFL管
左下等に空きスペースはあるが、DOLBY NR、MPX FILTER、Dolby HX PRO、CD DIRECTのパターン自体がないことが分かるだろう?
よって、ボタンの状態で判別するしかないが、目視では判別困難!
↑ONかOFFかスグに分かるか?
暗所では、まず分からない。
DOLBY NRの種類やMPX FILTERのON/OFFは、廉価3ヘッド機のTC-K700S/TC-K710Sでも表示されるので、ES機が下位機種に劣るという惨状!
関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
TC-K222ESJ/TC-K333ESJ/TC-K555ESJのDolby表示がFL管にない理由
まず、上位機種について書く必要がある。
TC-K333ESAのFL管と、後継機でDolby Sが追加されたTC-K333ESJ/TC-K555ESJのFL管(蛍光表示管)の部品番号は、以下の通り同じである。
・TC-K333ESA(海外モデル:TC-K990ES)
FLT601 1-519-629-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
FLT881 1-519-630-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
・TC-K333ESJ/TC-K555ESJ
FLT601 1-519-629-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
FLT881 1-519-630-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑1-519-629-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
TC-K333ESAにはDolby Sはないので、このFL管(1-519-629-11)にはDolby B/Cのパターンはあるが、Dolby Sのパターンはない。
ESAのFL管(1-519-629-11)が余っていたのか、新規に作るのが面倒(カネがかかる)だったのかは知らないが、FL管を「流用」したということになる。
Dolby B/Cの時だけ光らせて、Dolby Sの時だけ光らせない(パターンがないので不可)というのはさすがにダメなので、Dolby全てを表示しないということにしたのだろう。
そして、TC-K222ESJのFL管は別部品だが、
・TC-K222ESJ(海外モデル:TC-K909ES)
FLT601 1-517-139-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
上位機種であるTC-K333ESJ/TC-K555ESJで光らないのに、下位機種であるTC-K222ESJで光るのはおかしいので、FL管(1-517-139-11)には、流用ではないのにもかかわらず、Dolbyのパターンが全くない。
↑TC-K222ESJのFL管
このようなつまらない理由で、ESAで表示された内容がESJで表示されないというのは、全くバカげている!
なお、TC-K333ESJ/TC-K555ESJのFL管については、流用していた(1-519-629-11/1-519-630-11)が尽きたのか、後になって、点灯しないパターンが元から無い「ESJ専用FL管」に置き換わった。
フタバが撤退
なお、SONY機のFL管を製造していたフタバ(双葉電子工業)は、2021年12月の受注を以て、蛍光表示管と蛍光表示管モジュール事業から撤退した。
関連:蛍光表示管および蛍光表示管モジュール事業からの撤退に関するお知らせ (双葉電子工業)
消費電力の大きいFL管は時代遅れであり、液晶や有機ELが主流なので仕方がないが、このFL管の輝きが、カセットデッキに於いては重要なのだ!
問題は、既存のカセットデッキのFL管が、いつまで光り続けるかだ…
関連:[SONY] TC-RX715とTC-RX1000Tの比較 [兄弟機]
関連:[SONY] ピンチローラーの軸の劣化 [カセットデッキ]
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