[SONY] TC-RX715とTC-RX1000Tの比較 [兄弟機]

2022年12月15日



動作動画

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TC-RX715とTC-RX1000T

TC-RX715TC-RX1000Tは兄弟機である。

TC-RX1000Tは「全国点字図書館協議会推奨」として登場した機種であり、録音図書を作るカセットデッキとして、1994年から2003年8月まで生産された。

関連:カセットデッキで録音図書を作る

だが、そのためだけに新たに機種を用意するのはコスト的に合わないので、TC-RX715を「流用」したものと思われる。

TC-RX715の基板上にも、TC-RX1000Tの文字が見られる。

TC-RX715の基板

基板が共通化されている証拠だろう。

TC-RX715にピッチコントロール機能が追加されたのがTC-RX1000Tであるが、TC-RX715では可能だったメタルテープ(TYPE IV)の録音が不可となっている(再生は可能)。

ピッチコントロール機能の有無があるので、キャプスタンモーターが異なる。

TC-RX715:MMI-6S2LK
TC-RX1000T:MMI-6H2LWK

関連:[SONY] キャプスタンモーター(MMI-6S2LKS/MMI-6S2LK/MMI-6H2LWK) [カセットデッキ]

TC-RX1000Tの背面には、マイク/ライン入力のステレオ/モノラル切り替えスイッチがあるので、使用前にチェックしておくこと。

ステレオ_モノラル切替_TC-RX1000T

これがモノラルになっていると、当然ながらステレオ録音ができなくなる。

前面のマイク端子には、LEFT(MONO)とRIGHTの端子がある。

マイク端子_TC-RX1000T

その表記から、LEFTにだけ挿すと自動でモノラルになるのかと思いきや、モノラルのマイクをLEFT(MONO)だけに挿した場合、裏面のステレオ/モノラル切り替えスイッチもモノラルにしないと、左だけしか音が入らないので注意。

1994年前後の情報

TC-RX1000Tは、元は「TC-RX715T」として出てくる予定だった。

TC-RX1000T_カタログ
↑TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産)

価格はオープンだが、39,800円程度(TC-RX715と同等)。

TC-RX1000Tの発売は、1994年6月末から開始。

限定生産のため、店頭展示はなく、取り寄せとなる。

発売直後は、以下のような問題が報告された。

1.新品でも雑音が入る。
2.回転が微妙におかしい。

1は、新品なので、ヘッドの磁化ではない。

2は、ピッチコントロール機能の問題?

録音レベルが下がるという事象があり、某所がSONYに問い合わせをしたところ、「あり得ない」との回答。

# TC-RX715と同じなら、確かにあり得ない。

ノーマルテープでも若干録音レベルが下がることが確認できたが、SONYのテープでは生じなかった。

TC-RX1000Tは2003年に製造中止となり、後継機として出たのがTC-RX2000Tである。

TC-RX2000T_カタログ
↑TC-RX2000T(2003年)

関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]

関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]

ヘッドは同一?

コストカットのため、TC-RX1000Tには廉価版のヘッドが使われており、それが理由でメタルテープ非対応なのか?と思われるも、実際はどうなのか?

ヘッド_TC-RX715_TC-RX1000T

試しに、TC-RX715とTC-RX1000Tのヘッドを入れ替えてみたが、問題なく動いた。

どうも、ヘッドは同一?

TC-RX715とTC-RX1000Tのカセットリッドは同じで、「LASERAMORPHOUS HEAD」と書いてあるから、

TC-RX711_TC-RX715_TC-RX1000T_のカセットリッド

両機とも、レーザーアモルファスヘッドは間違いないが、TC-RX715のPC-OCC巻線に対し、TC-RX1000Tのそれは不明。

関連:[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]

わざわざメタルテープ非対応のヘッドを用意した方が、逆にコストが上がってしまうだろうから、巻線も含め、同一である可能性が高い。

(リーフスイッチによる)テープ検出でメタルテープと判別すると、録音ができないようにしている、つまり、ソフト的にメタルテープの録音ができないようにしているだけなのか?

関連:[SONY] リーフスイッチの不良と修理 [カセットデッキ]

なお、TC-RX1000TのFL管内には「TYPE IV」のパターンがあるが、点灯することはない。

FL管_TC-RX711_TC-RX715_TC-RX1000T

関連:FL管(蛍光表示管)について

ヘッドと同じく、FL管も流用されているのが分かる。

「TYPE IV」が点灯しなくても、先述のように、メタルテープの再生は可能だ。

ならば、なぜメタル録音不可にしたのかという点だが、「全国点字図書館協議会推奨」という、業務用的な機種であるため、メタル使用でヘッドがすり減って「業務に支障が出た!」という苦情を避けるため?

まぁ、ヘッド摩耗を避けるためなら、メタルの「再生」も不可にしないと意味がないが、再生を阻止するのは普通あり得ない(安物のラジカセでも、音質はともかくメタルを再生することは可能)から、許容しているだけだろう。

令和に入り、メタルテープの入手が困難である状況に於いては、「メタル録音不可」は、さほどデメリットにはならない。

オーディオ用コンデンサ(TC-RX715)

PB(PlayBack)
・C118 ELNA 50V 10uF
・C218 ELNA 50V 10uF

POWER
・C708 ELNA 25V 4700uF
・C711 ELNA 16V 3300uF

SYSCON
・C807 ELNA 50V 4.7uF

オペアンプ(TC-RX715)

PB(PlayBack)
・IC301 NEC C4570C (PB EQ AMP)
・IC305 JRC 4558D (AMS AMP)
・IC306 JRC 4558D (METER AMP)

ヘッドホン
・IC602 三菱 M5218AL (HEADPHONE AMP)

オーディオ用コンデンサ(TC-RX1000T)

TC-RX1000TはTC-RX715の流用機なので、ロットにより変わる可能性がある。

PB(PlayBack)
・C118 ELNA 50V 10uF
・C218 ELNA 50V 10uF

POWER
・C708 ELNA 25V 4700uF
・C711 ELNA 16V 3300uF

SYSCON
・C817 ELNA 25V 22uF

オペアンプ(TC-RX1000T)

PB(PlayBack)
・IC301 NEC C4570C (PB EQ AMP)
・IC305 JRC 4558D (AMS AMP)
・IC306 JRC 4558D (METER AMP)

ヘッドホン
・IC602 三菱 M5218AL (HEADPHONE AMP) 4本×2列ではない

製造打切年等(TC-RX715)

・製造打切年:2001年3月
・補修用性能部品保有期間:6年
・修理対応終了年:2007年3月

修理対応終了年から15年以上経過しており、SONYは修理を受けない。

関連:[SONY] 製造打切年/補修用性能部品保有期間/修理対応終了年 [オーディオ]

製造打切年等(TC-RX1000T)

・製造打切年:2003年8月
・補修用性能部品保有期間:6年
・修理対応終了年:2009年8月

修理対応終了年から10年以上経過しており、SONYは修理を受けない。

関連:[SONY] 製造打切年/補修用性能部品保有期間/修理対応終了年 [オーディオ]

中古市場での見られ方

TC-RX715はTCM-200のメカを搭載した最後のまともなオートリバース機、に対して、TC-RX1000Tは「点字図書館~」もあり、その劣化版と見られているフシがある。

だが、上述のように、メタルテープ録音不可な点を除けば、TC-RX1000Tもオートリバース機としては優秀である。

TC-RX1000TがTC-RX715よりも安く手に入るなら、TC-RX1000Tを選ぶことも考えてみよう。

音質のチューニング

ヘッドが同じでも、チューニングで音質が変えられている可能性がある。

精査したわけではないが、TC-RX715の方が、高音がよく出るような気がする。

TC-RX1000Tは録音図書作成機なので、人の声がハッキリ聴ければよく、高音はさほど必要ではない。

ラジオの音質調整によくある、「NEWS/MUSIC」「TONE:LOW/HIGH」のような感じだ。

高音がよく出ると、人の声は聴きづらい/聴き疲れるため、あえて高音を抑えている可能性がある。

音楽用途で選ぶなら、TC-RX715の方が安全かもしれない。

また、TC-RX1000Tは、1994年から2003年まで長期に渡って生産されていたため、時期により内部(=部品)が変わっている点にも留意したい。

基板の色_TC-RX1000T
↑(左)前期と後期(右)

関連:[SONY] TC-RX1000Tの前期型と後期型 [カセットデッキ]

注意点①

両機とも、カセットデッキとしては新しい部類である。

TC-RX715:1994年発売
TC-RX1000T:1994年から2003年8月まで生産

だが、フライホイールの劣化、及び、アイドラーのギア欠けが見られた。


フライホイールの劣化は、軽度なものなら動作はするが、偏芯のため、テープ送りの不安定さが増してしまう。

重症になると、フライホイールが裏面の金属板と接触し、異音の発生、最悪の場合は回転不可のため、再生/録音不可。

フライホイールが裏面の金属板と接触

関連:[SONY] フライホイールの劣化(ひび割れ) [カセットデッキ]

アイドラーのギア欠けは、テープ操作ができなくなるため致命傷。

関連:[SONY] アイドラー(X-3356-641-1)のギア欠け [TC-RX1000T]

劣化するフライホイール、ギアが割れるアイドラー、このような劣悪な部品を積極的に採用するのが、世界のSONYである。

新しい機種とはいっても27年以上経過しているから仕方がないとも思えるが、ヒビの入る金属と割れるギアというのは、正直どうなの?

新品部品の入手は無理なので、中古機から取るしかないが、その中古機の部品が正常である保証はない。

フライホイールもアイドラーも外からは見えず、多少の劣化であれば動いてしまうので…

一種の「掛け」であるが、中古のカセットデッキを扱うなら、そのくらいの「コスト」は必要となる。

注意点②

兄弟機なので、部品はほとんど同じであるが、キャプスタンモーターは異なるので注意。

・TC-RX715:MMI-6S2LK
・TC-RX1000T:MMI-6H2LWK

ピッチコントロール機能の有無が、その理由である。

キャプスタンモーターに関しては、以下記事も参照されたい。

関連:キャプスタンモーター(MMI-6S2LKS/MMI-6S2LK/MMI-6H2LWK)

TC-RX1000Tには、手前左側に、ピッチコントロール用の基板が追加されている。

録音/再生だけでなく、標準(4.8cm/s)/低速(2.4cm/s)が分かれており、合計4つの半固定抵抗がある。

ピッチコントロール用の基板_TC-RX1000T

そのため、モーター裏面の可変抵抗1ツのTC-RX715と比較し、TC-RX1000Tはテープ速度調整が非常に面倒なので注意。

TC-RX1000Tの製造打切

TC-RX1000Tの製造打切は2003年8月だが、2002年12月の時点で、TC-RX1000T製造中止の情報があった模様。

ろくおん通信_第128号_2003年2月15日
ろくおん通信 第128号(2003年2月15日)

そして翌年、後継機のTC-RX2000Tが発売された。

TC-RX2000T_カタログ

関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]

TC-RX2000T

2003年に発売された、「全国点字図書館協議会推奨」の後継機種であるTC-RX2000Tであるが、

TC-RX2000T

・オートリバースなし
・オートキャリブレーションなし
・BALANCEなし
・録音はノーマル(TYPE I)のみの対応

そしてなんと、DOLBY NRもない!

TC-RX2000T

という具合に、「流用」から「劣化」にシフトしているので、買うならよく検討すべきである。

関連:[SONY] TC-RX715のメイン基板 [1994年発売]

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関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]

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Posted by nakamura