[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
TC-RX50
1988年に発売された、SONYのカセットデッキである、TC-RX50を手に入れた。
価格は39,800円である。
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1988年2月]
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1988年4月]
1988年/昭和63年
1988年は、ドラゴンクエストIII(ファミリーコンピュータ)が発売され、Wink「愛が止まらない」がリリースされた年である。
メカデッキはTCM-170で、ソレノイド(電磁石)を用いた機種。
↑銅線巻きの部品がソレノイド
テープ窓は光らず、扉は手動式。
・オートリバース(クイックリバースはない)
・LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッド
関連:[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]
・スーパーバイアスを採用
・FL管(但し小さい)
・ドルビーB/C
・リモコン受光部なし(内蔵は次機種から)
・AMS(オートマチックミュージックセンサー)なし(TC-RX70から搭載)
・サイズ:幅430×高さ120×奥行225mm
・消費電力:13W
・重量:3.8kg
同年にTC-RX51が発売されているが、リモコン(RM-900S)に対応したのが、TC-RX51だ。
↑TC-RX51(1988年)
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
メカがTCM-170の機種に触れるのは、今回が初である。
天板が光沢のあるタイプで、TC-RX70以降(ツヤ消し)とは異なる。
奥行きが短い。
さっそく開けてみると…
すごい安物感!
基板が前面についており、後年の廉価メカのTC-RX300(1996年)のような感じ。
基板は上下逆なので、下から見ると…
ざっと見ただけだが、コンデンサの液漏れはない模様。
ハンダ割れは未チェック。
ゴムベルトが溶けていたので、
メカ部を取り出し、除去作業に入る。
メカデッキ:TCM-170RB2
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
ゴムがネトネトになっていて、非常に面倒!
フライホイールに溝があるので、溝の中の残骸も除去する必要がある。
でないと、ワウ・フラッターが悪くなるだろう。
モーター側もネットリだったので、除去!
平型ではなく、角型のゴムベルトを使う。
角ベルトで断面1mm、折長110mm(=直径70mm)あたりが妥当な感じ。
159 3-343-426-01 BELT (CAPSTAN BELT SQUARE)
以下のセットの中に何本か入っていた。
モードギア等には、黒いグリスが使われていた。
モードギアのグリスは、後に全部洗い落とした。
↑162 3-343-470-01 GEAR(CAM GEAR)
以下がソレノイド(電磁石)である。
↑PM1 1-454-456-11 SOLENOID, PLUNGER
ゴムの掛け方であるが、以下は明らかに間違ってる(笑)
オートリバース機は、左右のキャプスタン(=フライホイール)が互いに逆に回転しないとならないので、「σ(シグマ)」型に掛ける以下が正解。
ベルトは右の突起に仮にかけておき、
後でピンセットでモーターに掛ける、よくある方法。
ゴムベルトを交換したら、モーターの速度調整が必要。
調整箇所は、モーター裏面にある穴の、細長い方(LOW)。
穴の内部が見えないが、プラスドライバー(#0)を入れて回す。
もう一つの穴(HIGH)でも調整できるが、これを速くすると早送り巻き戻しも速くなり、テープ終端での衝突が大きくなり、テープが切れる恐れが出てくる。
ピンチローラーは、白い軸が腐って抜ける低質なものではなく、黒い軸だった。
関連:[SONY] ピンチローラーの軸の劣化 [カセットデッキ]
交換はせず、アルコールで掃除し、再利用とした。
ヘッドは、TC-RX70/TC-RX77/TC-RX79と同じように見えるが、クイックリバースのセンサーがない。
関連:[SONY] クイックリバース(QUICK REVERSE)機能 [カセットデッキ]
モーターは、この1個しかない。
↑M1 X-3343-408-1 MOTOR ASSY(33E2L12C-1C)
「871226」とあるので、1987年製?
この1個のモーターで、録音再生、早送り/巻き戻しを動かしている。
# TC-RX70以降の新メカだと、モーターは3個。
回転式ダンパーなので、取り出し時に高速で開く「ロケットオープン」にはならない。
↑119 4-919-393-11 DAMPER
回転検出のセンサーがリールの奥にあるので、リールを分解して掃除する必要がある。
↑Q12 8-719-939-11 TRANSISTOR GP2S09-B
これが汚れて回転検出ができないと、止まってしまう。
リール裏のパターンを読んで、回転を検出しているのね。
回転が検出できないとテープ端と判断し、動作を止めるのだ(オートストップ)。
リール軸や根元に残っているグリスを拭き取り、新たなグリスを塗布。
この場所は抵抗がより小さい方が良いので、粘度が低いセラグリスが良いかも。
関連:タミヤ セラグリスHG
ほぼ閉塞区域なので、飛び散りによるグリス切れもないだろうし。
ボタンの不良や、REC LEVELのガリはないようだ。
接触不良がある場合は、接点復活剤を流し込んで対処する。
FL管は独立しており、ネジ2本で外れる。
FL管の表面と、
↑FLT501 1-519-447-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
内窓(前面パネルの裏)を拭く。
喫煙環境にあった場合など、汚れている場合があるからだ。
これらが汚れていると、FL管の表示が暗く見えてしまう。
背面左端には、ライン入力/出力がある。
金メッキではない。
本機ではハンダ割れはなかったが、RCAケーブルの抜き差しにより割れやすい箇所なので、念のため確認しておこう。
リモコンを使うには、裏面の「コントロールS」にRM-88(10,000円)の受光部を挿す必要がある。
受光部が内蔵され不要になるのは、上述したように、次機種のTC-RX51からである。
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
使った感想など
いつもは電動メカ(TCM-200)を使っているので、それと比べることになるが…
動作音(ソレノイドの音など)が大きく、筐体内の空洞に響いてガチャガチャうるさい。
動作の切り替えにモードギア(突起のある円盤)を使っているので、動作が始まるまでに無駄な動きが生じ、もたつくことがある。
(切り替えの種類によっては早いこともあるが)
後年の廉価メカ(TCM-190)であるTC-RX300(1996年)よりも、さらに遅い感じ。
いつものクセで、再生途中で取り出しボタンを押してしまう。
(TCM-200の電動メカなら、取り出しボタンを押すと、再生停止→扉OPENとなり、何ら問題ない)
しかし、電源を切った後でもテープが取り出せるのは利点。
録音ボタンを「押しながら」再生を押さないと録音されない。
(TCM-200の電動メカだと、録音ボタンの後に再生ボタンで録音開始)
電源が入った状態だと、テープが動いていなくてもモーターが回っており、回転音がする。
翌年に出たTC-RX55は、電源を入れただけの状態では、モーターは回転していないので静か。
# 後のTCM-200の機種は、操作していない時でもモーターが回っており、回転音がする。
テープ窓が広いのは良い(残量が見やすい)が、テープ窓は銀色のシールが貼られているだけで光らず、暗い所ではテープ残量が見えない。
テープの種別検出はできず、ボタンで指定する必要がある。
(検出用のリーフスイッチがない)
関連:[SONY] リーフスイッチの不良と修理 [カセットデッキ]
当然、テープと一致しないと、録音/再生に影響する。
カウンターは実時間ではなく単なる数字であり、1カウント=1秒ではない。
カウンターの進度は非常に速く、なんだか急かされているようで、見ていて落ち着かない。
操作ボタンが縦2列に並んでいるのは、好みが分かれるだろう。
デザインは、次機種のTC-RX51でも継承され、横並びになるのは、翌年のTC-RX55からである。
FL管の表示項目が少なすぎる。
カウンターとレベルメーターのみ。
テープ種別やドルビーはボタンを確認するしかない。
MPX FILTERはない(TC-RX55から搭載)。
REC LEVELは、LR統合型。
(外がL、内がR)
マイク端子あり(LEFTとRIGHT)
ヘッドホン端子があるが、音量調整は不可。
前面端子は金メッキではない。
扉に光沢があるので、手で閉めると指紋が気になる?
悪いゴムベルトではないはずだが、測定するまでもなくワウ・フラッターが悪い。
メカの基板中央のネジ受けが割れ、基板がネジで固定できなくなる欠陥。
154 3-343-404-01 SCREW (PTPWH 2X10)
# TC-RX300でもそうなる。
テープの回転検出により、テープ端で止まる(オートストップ)が、止まるまでが遅い。
再生モードが2種類しかなく、A面→B面で終了、というモードがない。
A面→B面で終了、というモードがない。
3モードとなるのは、TC-RX70(1990年)からである。
前面パネルはプラスチック。
# TC-RX70からアルミ。
メカ部は前面パネルに付いているので、何度も脱着していると、ネジ穴がバカになり、メカ部が固定できなくなる。
SONYのロゴが、部品ではなく印刷!
後継のTC-RX51以降に、個別部品(エンブレム)となる。
関連:[SONY] エンブレムの種類と交換 [カセットデッキ]
アジマス調整
ネジがかたく、無理に回すとネジ山を舐めるので、柄の太いドライバーで回す必要がある。
仕様
・ヘッド:消去1、録再1
・モーター:DCサーボモーター×1
・SN比
56dB(Dolby OFF、ピークレベル、Metal-Sカセット)
71dB(Dolby NR C、ピークレベル、Metal-Sカセット)
・周波数特性:30Hz-18kHz ±3dB(EIAJ、Metal-Sカセット)
・周波数範囲:20Hz-19kHz(EIAJ、Metal-Sカセット)
・ワウ・フラッター:±0.13% Wpeak、0.09% WRMS
・歪率:0.5%(EIAJ、Metal-Sカセット)
・大きさ:幅430x高さ120x奥行225mm
・重量:3.8kg
・消費電力:13W
機種選択
本機TC-RX50(1988年)と、TC-RX51(同年)、TC-RX55(1989年)は、同じメカデッキの機種(TCM-170)。
TC-RX50とTC-RX51は39,800円なので、リモコン内蔵のTC-RX51の方が良い。
そして、TC-RX55はテープの種類が自動検知できるようになり、ドルビーHXプロとMPXフィルターが追加、操作ボタンも整理され、さらに価格も3千円下がっている(36,900円)ので、選ぶならTC-RX55となる。
だが、翌年のTC-RX70からメカデッキが変わり電動になるので、39,800円と3千円高くなるが、TC-RX70を選ぶべき。
↑TC-RX70(1990年)
できれば、その次の機種であるTC-RX77の方が、FL管が大きく、ヘッドホンの音量調整も可能なので、それを選びたい。
↑TC-RX77(1991年)
当時、このメカデッキを使っていて慣れている(思い入れがある)人は別だろうが、当方にとって、この系統(TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55)は、見た目はともかく、動作的にキツい。
今回の分解により、メカ(TCM-170)の貧弱さを見てしまっているので、それもあろうが…
となると、さらに前のTCM-CMAY系(TC-R302/TC-R502/TC-R303/TC-RX80/TC-K500R/TC-K600)はもっとひどいのだろうかと思いきや、
↑TC-RX80(1988年)
メカデッキにTCM-170を採用したTC-RX5xは、それ以前のTCM-CMAY採用機よりも性能が低い。
具体的には、モーターが2個→1個へと減少し動作緩慢となり、平ベルト→角ベルトでワウ・フラッター悪化。
↑TC-RX55の角ベルト
関連:[SONY] TC-R302とTC-R303の比較 [オートリバース]
ということで、趣味や懐古、コレクターではなく、実用機を求めるなら、電動メカとなったTC-RX70以降を選ぼう。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
海外モデル
・TC-RX50ES(1988年)
オートリバース機。
何が「ES」なのか分からない(笑)
関連:[SONY] TC-RX55(1989年発売)のレビュー [カセットデッキ]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
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