カセットデッキのアジマス調整の方法
経年により、ヘッドの角度がズレてしまい、音質に影響が出るので、これを調整する必要がある。
↑右端がアジマス
テストテープがあればいいのだが、既に入手困難なので、自作する必要がある。
用意するもの
・パソコン
・WaveGene(ソフトウェア)
・WaveSpectra(ソフトウェア)
・新品のカセットテープ
・信用できるカセットデッキ(無理)
・LINE INとLINE OUT(RCA)のあるUSB DAC(例:SBDMUPX)
関連:[Creative] SBDMUPX(Sound Blaster Digital Music PX) レビュー [SCMS]
テストテープの作成
信用できるカセットデッキのヘッド消磁と、クリーニングを行う。
関連:ヘッド部のクリーニング
カセットデッキのLINE INと、USB DACのLINE OUTをつなぐ。
質の高い、新品のカセットテープを用意する。
長さは10分(片面5分)、ノーマルポジションで十分。
磁気研究所の中華製など、質の低いものは不可。
関連:[磁気研究所] 100円ショップの90分テープ(HDAT90N1P) [HIDISC]
関連:[磁気研究所] 劣悪とウワサのHIDISCのカセットテープ HDAT60N10P2(60分) [HIDISC]
テープをデッキに入れ、早送りと巻き戻しを行い、巻き直しておく。
CALIBRATIONができる場合は済ませておく。
・DOLBY NR:OFF
・DOLBY HX PRO:OFF
・MPX FILTER:OFF
・INPUT:CD DIRECT
OFFにできない機種やCD DIRECTにできない機種はそのままでOK。
WaveGeneで、サイン波、3000kHz(3kHz)、-10dB、モノラルを出し、カセットデッキに送る。
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SONYの本来のアジマス調整用のテストテープ(P-4-A100)は、10kHz、-10dBであり、
7-819-016-11 P-4-A100 TEST TAPE
3kHz、-10dBは、テープ速度調整&ワウ・フタッター測定用(WS-48S)。
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「ピー」という音が出るので、これをカセットデッキで録音する。
片面の録音が終わったら、録音終了。
「3kHz -10dB」などのラベルを貼付し、爪を折って、ケースに入れて保管する。
これはマクセルのURで作ったものだが、マクセルのURはおすすめしない。
マクセルのURは、令和時点でも容易に新品が手に入るテープだが、TDKのAE-10Fで作ったものと比べると、非常に不安定であった。
昔の未開封新品のカセットテープは、オークションでも価格が高騰しているが、10分テープは(短いので)人気がなく、安価で手に入るので、未開封新品を何本か手に入れておくとよいだろう。
アジマス調整
WaveSpectraでリサジュー図形が表示できるようにする。
カセットリッド(カセットホルダー前の化粧板)を外す。
# 外さないと、アジマス調整用のネジが回せない。
作成したテープを再生し、USB DACのLINE IN経由でパソコンに送る。
WaveSpectraのリサジュー図形を見る。
テープを再生したまま、リサジュー図形を見て、ヘッドのアジマス調整を行う。
右肩上がりの直線になるよう、ヘッドそばのネジを回す。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
テープの両端付近は安定しないので、テープ中ほどまで進めて行う。
リサジュー図形が安定するまでしばらくかかることもある。
多少ふらつくのは仕方がない。
完全に直線にならないのは仕方がない。
サービスマニュアルでも、直線から円(90度)までは「Good」となっている。
右肩下がりになっている場合は「No Good」なので、右肩上がりを目指す。
回すべきネジは機種により異なるので、以下を参照のこと。
テープパスチェック
120分テープ(=薄い)で作った、テープパスチェック用カセットを再生し、テープが喰われなければOK。
アジマス調整することにより、テープ走行が狂って、テープを噛んだり、巻き込まれることがある。
この場合は、アジマス以外のネジや、消去ヘッド、送り側のテープガイドなども狂っているということになる。
# 素人さんがいじった機種で見られる。
本来は、テープパスのチェック後、アジマス調整を行う。
テープパスのチェックには、ミラーカセットを使うべきだが、ミラーカセットも既に入手困難だ。
調整後、ネジの緩み止め剤を付けて終了。
関連:[SONY] ヘッドのアジマス調整後の緩み止め剤 [カセットデッキ]
アジマス調整するとテープが喰われたり、最良点を目指すもネジがそれ以上回らないといった意味不明な事案もあるが、他のネジのズレ、ネジ山の潰れ、メカの歪(ゆが)みなど、様々な原因が考えられる。
緩み止め剤がネジ穴に入った場合、ネジ山の潰れやネジ穴の埋まりが発生する。
ネジ山の潰れは互換ネジへの交換を行い、ネジ穴の埋まりは薬品で溶かす。
SONY機はES機であっても、ネジも受け側も、耐久性は高くない。
ネジの受けがプラスチックの場合、受け側(=ネジ穴)が削れて調整不可となる場合もある。
この場合は、以後の調整は不可となるが、接着剤で完全に止めてしまうか…
リサジュー図形(アジマス調整前)
リサジュー図形の実際を見てみよう。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、同一のTC-K222ESAで再生(=自己録再)。
テープを作成した同一のデッキであっても、リサジュー図形は直線と円の間で変化する場合がある。
右肩上がりから円に変化する時、高音が出なくなるのが分かるだろう。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-K222ESJ(アジマス未調整)で再生。
デッキが異なるので、自己録再の時よりは悪い。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-K710S(アジマス未調整)で再生。
TC-K710Sで再生すると、右肩上がりの直線にはならず、常に口が開いているか、逆に右肩下がりになっている。
TC-K222ESAを信用できるとすれば、TC-K710Sはアジマス調整が必要だと分かるだろう。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-RX77(アジマス未調整)で再生。
TC-RX77で再生すると、完全に右肩下がりになっており、アジマス調整が必要。
なお、オートリバース機のアジマス調整は、FWD(正方向)とREV(逆方向)で、2個のネジを回す必要がある。
リサジュー図形(アジマス調整後)
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-K222ESJ(アジマス調整後)で再生。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-K710S(アジマス調整後)で再生。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-RX77(アジマス調整後)で再生(Forward)。
↑TC-K222ESAで作成したテープを、別機種のTC-RX77(アジマス調整後)で再生(Reverse)。
いずれの場合も、0度-90度の範囲(Good)に収まったが、口が開くのは直らない。
まぁ、自作のテストテープなので…
リサジュー図形(アジマス調整後)まとめ
↑TC-K222ESAで作成したテープを、各機種(アジマス調整後)で再生。
TC-K710Sだけが別の振舞をしているように見えるが、1分付近の様子を見ると、TC-K710Sもこの時に直線になるようにすれば、全機とも同じ振舞になる?
謎の現象
なお、再生直後は必ずBADで、しばらくするとGOODになる、謎の現象も確認された。
関連:[謎] 安定までに時間が掛かるリサジュー図形 [TC-K222ESA]
関連:[アジマス] 謎のリサジュー図形を追う [カセットデッキ]
よくある質問と答え
Q.信用できるカセットデッキでテストテープを作り、そのデッキで再生(=自己録再)してリサジュー図形を見ると、おかしな図形になっているのですが…
A.カセットデッキなどという過去の遺物は今すぐ投げ捨てろ!
Q.作成したテストテープでアジマスを調整して「Good」にした後、別の新品のテープで同様にテストテープを作成して確認すると、「No Good」のリサジュー図形が出てくるのですが…
A.カセットデッキなどという過去の遺物は今すぐ投げ捨てろ!
テープ録音中
テープへの録音中、3ヘッド機でモニターが可能な場合、録音中のモニターで、LとRのレベルが頻繁に異なる場合は、既におかしい。
↑R(右)が大きい
モノラルなのに左/右が異なるのは、デッキかテープがおかしい。
他のテープで試してみるか、基板上のVRで左右を合わせるか。
市販の音楽テープ
市販の音楽テープを使い、高音が最もよく出るポイントにアジマス調整をする手もあるが、これはあまり信用ならない。
というのは、その方法で合わせたデッキをテストテープで調べると、おかしなリサジュー図形となっていることがあるからだ。
人の聴感はいい加減なものなので、やはりリサジュー図形で判断するのが適切だろう。
関連:[KENWOOD] アジマス調整時の思わぬ障害 [X-VH7]
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