[SONY] TC-R502(1986年発売) レビュー [カセットデッキ]
1986年に発売されたオートリバース機であるTC-R502について。
↑TC-R502(1986年) 69,800円
前年にオートリバースのES機であるTC-K501ESが出ており、TC-R502はその後継だが、ES機ではなくなった。
その差異は以下記事参照のこと。
関連:[SONY] TC-K501ESとTC-R502の比較 [オートリバース]
1986年(昭和61年)
・スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発(1月28日)
・ハレー彗星接近(2月9日)
・岡田有希子が以下略(4月8日)
・チェルノブイリ原子力発電所事故(4月26日)
・ドラゴンクエスト発売(5月27日)
・「太陽にほえろ!」が終了、14年4ヶ月の歴史に幕(11月14日)
・伊豆大島の三原山が噴火、全島民が島外に避難(11月15日)
・フライデー襲撃事件(12月9日)
・余部鉄橋の列車転落事故(12月28日)
・渡辺美里「My Revolution」(1月22日)
・国生さゆりwithおニャン子クラブ「バレンタイン・キッス」(2月1日)
・テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」(2月21日)
・吉幾三「雪國」(2月25日)
・アン・ルイス「あゝ無情」(4月21日)
・レベッカ「RASPBERRY DREAM」(5月2日)
・荻野目洋子「六本木純情派」(10月29日)
グッドデザイン賞
TC-R502は、1986年のグッドデザイン賞を受賞している。
↑TC-R502(1986年) 69,800円
関連:1986年 グッドデザイン賞 テープデッキ TC-R502
前モデルのTC-K501ESもグッドデザイン賞を受賞しているが、
↑TC-K501ES(1985年) 79,800円
関連:1985年 グッドデザイン賞 テープデッキ TC-K501ES
こんなレベルでグッドですか、そうですか。
再生の様子
カセット下にある、再生方向を示すLEDが異常に明るいが、高輝度型に交換しているためだ。
前面パネル
アルミではなくプラスチック。
後(TC-RX70以降)になると、オートリバース機でもアルミとなる。
カタログ
1986年4月の時点で掲載されている。
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1987年11月]
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1987年5月]
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1987年2月]
関連:[SONY] カセットデッキ 総合カタログ [1986年10月]
動作音
電源を入れた状態では、モーターは回っておらず、無音。
# TC-RX50は常時回っており、TC-RX55は回っておらず無音、TC-RX70以降は常時回っており、常時回っている機種は、回転音がする。
ソレノイド搭載なので、動作開始時に「ガチャッ」と音がする。
動作が若干遅い
一呼吸置いてから動き出す。
再生中に早送りを押すと、すぐには動き出さず、ガチャッと音がして止まった後、少し間を置いてから早送りとなる。
だが、ガチャガチャこねくり回すTCM-170機(TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55)よりは速い。
TCM-170は1つのモーターで全てを動かしているのに対し、TCM-CMAYは2つのモーターで処理しているためだ。
これが後のTCM-200で、3つのモーターとなり、迅速動作となった。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
カセットホルダーの質が低い
メカよりも、こちらが深刻。
ホルダーがせり出してくる機構だが、左側に負荷がかかって金属が削れてくる。
ホルダーを閉じる際に包丁を研ぐような感覚があるが、まさにそれ。
閉じる際に押すのはカセットリッドの左上だけであり、右上だとロックされない。
削れることもあってから、徐々に全体が歪(ゆが)んできて、ホルダー開閉がガタガタしてくる。
閉じてもロックされにくいので、深く押し込まないとダメだとか。
その押し込みによりさらに歪んでくるという、精密なソニータイマーが仕込まれている。
同年発売の下位機種であるTC-R302も、同じホルダーである。
ホルダーがせり出してこない造りとなったTC-R303やTC-R503(海外機)、TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55では、そのようなことは起こらない。
これは、回転式ダンパーが採用されたのが大きい。
↑251が回転式ダンパー(X-3391-151-1 DAMPER ASSY)
↑TC-RX50(4-919-393-11 DAMPER)
関連:[SONY] TC-RX50(1988年発売)のレビュー [カセットデッキ]
↑TC-RX70(3-712-786-41 DAMPER)
関連:[SONY] TC-RX70(1990年発売) レビュー [カセットデッキ]
カセットリッド
本機は電動扉ではなく、手で閉めるのだが、前面は指紋が目立つ透明プラスチック!
左上のピンに触れながら閉じると、指紋付着が回避できる。
透明プラスチックを固定している4本のピンは微小金属板でロックされているので、
ロックを外すとピンが抜けて透明プラスチックを外せる。
・4本のピン:3-330-003-01 PIN, STOPPER, CASSETTE WINDOW
・微小金属板:12 3-324-813-01 SPRING
水洗いすることで、内側に入り込んだホコリを除去できる。
金属板を外す際は、飛ばして紛失しないように注意。
リッド内側上部にある3つのツメが割れやすい。
リッドを外す/付ける際に貧弱なツメを上から下に押すので、折れて当然。
折れた場合は接着するのだが、それだとすぐに脱落するので、下の隙間に弾性のある部材を詰めて脱落を防止する。
ツメが折れて紛失した場合は厄介だね…
なお、テープ窓は光らず、橙色の紙が貼られているだけ。
テープ窓が広いのに、光らないので暗所では何も見えず。
ES機であったTC-K501ESは光ったのだが。
ゴムベルト交換
使われているゴムベルトは1本。
キャプスタンベルト(1本):EEHD-0PP6:ゴムベルト(平) φ65×0.5×5 ←折長102mm
関連:[SONY] ゴムベルトの交換(型式と長さ) [カセットデッキ]
モーターのプーリーに掛ける際、仮掛けしておき後で外して掛けるのではなく、掛けながら閉じる?ようで、非常にやりにくい。
テープ走行は、TCM-170機よりは安定している。
角ベルトのTCM-170に対し、TCM-CMAYは平ベルトだからだろう。
平ベルトの方が、フライホイールとの接触面積が大きく、安定して回転させられる。
速度調整とワウ・フラッターは後述する。
ピンチローラー
ピンチローラーを含む一式は、ネジで固定されている。
・左:163 X-3391-105-1 PINCH ROLLER ASSY
・右:161 X-3391-104-1 PINCH ROLLER ASSY
ピンチローラーを交換するには鉄棒(φ2mm)を打ち抜くのだが、鉄棒を固定する穴にヒビが入っている。
素材がプラスチックなので、経年でヒビが入るのだろう。
左右両方にヒビが入っていた。
この部分が崩壊すると、ピンチローラーが固定できずアウトとなる。
ピンチローラーが左右で異なる?
灰軸は直径13.1mm、白軸は12.8mm。
複数台のTC-R502で調べたが、やはり左右が違い、灰軸の方が大きい。
左側に付いているのが灰、右が白。
これは意図的なものなのか?
交換時は、両方同じ(外径13mm 幅8mm 軸内径2mm)で良いと思うが…
関連:[SONY] ピンチローラーの交換(型式と大きさ) [カセットデッキ]
ヘッド
LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッドを搭載。
関連:[SONY] LC-OFC/PC-OCC巻線レーザーアモルファスヘッド [カセットデッキ]
カタログに於いて、「ソニーは音質向上を目指し、1986年11月以降発売の全モデルに、LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッドを採用」(当時)としたが、
本機は本機は1986年10月のカタログに載っているので、上記宣言による搭載ではない。
FL管
古い機種だが、ピークメーターは長い。
↑-40から+10
表示内容は、
・ピークメーター
・カウンター(リニア 分:秒)
・MEMORY
・ドルビーの種類(B/C)
録音レベルキャリブレーションを搭載しているので、そのための「REC CAL」のパターンが右下にある。
↑REC CAL中
プリエンドウインカー機能(録音時にテープ終端が近付くと、カウンターの数字が点滅して知らせる)がある。
FL管のパターンに「FILTER」が見えるが、これはTC-K501ESのものであり、TC-R502はMPXフィルター非搭載なので、点灯することはない。
なお、FL管内の表示の一部に暗い/不点灯がある場合は、後述するトランジスターの劣化/故障を疑おう。
録音レベルキャリブレーション
「REC CAL」を押しながら「REC」を押すと発動。
内蔵オシレーターからの基準レベル信号を約10秒間録音→録音開始位置まで巻戻し→約10秒間の再生→巻戻し という一連の動作を自動的に行う。
約10秒間の再生中に、LとRのツマミを回して赤▲に合わせるのだが、意外と短いので素早く行う。
マクセルURで行ったが、ツマミを最大にしても届かなかった。
経年でズレているのだろう(後述)。
録音レベルキャリブレーションは、再生方向が逆方向だと何故かできないので、正方向に戻す必要がある。
なお、BIAS調整は、機能がないのでできない。
操作ボタン
Play、Rec、Pauseが自照式。
Playは緑、Recは赤、Pauseは橙。
関連:[SONY] テープオペレーション・インジケーター [カセットデッキ]
見下ろす角度だと隠れるが、真正面から見ると、隙間が見えて不格好、現在だと中華レベルの設計。
↑この写真では分かりにくいが、再生や録音等、上段ボタンの上に隙間がある
ボタンには傷が付きやすく、摩耗で文字が消えている個体も多い。
録音
「REC」を押してから「再生ボタン」ではなく、「REC」を押しながら「再生ボタン」を押す。
後の機種を使っていると、録音できず「?」となることがある。
クイックリバース
クイックリバースは、テープ終端を検知して即座にリバースする機能で、録音時にも働く。
クイックリバース搭載なので、テープ端を検出するセンサーがある。
↑左側のピンチローラーと消去ヘッドの間にセンサーがある
掃除の際は、このセンサーだけでなく、その上にあるミラーも拭くこと。
↑写真中央に反射用の鏡がある
TCM-170ではクイックリバースは廃止され、TCM-200で復活した。
関連:[SONY] クイックリバース(QUICK REVERSE)機能 [カセットデッキ]
テープ種別
NORMAL、CrO2、METALの自動判別で、FL管「外」(右)に表示される。
内部では、LEDの光を筒で他に漏れないようにし、表に導いている。
↑FL管の右にある2個と3個の穴の奥にLEDがある。
判別スイッチの突起が曲がっている場合は修正しておく。
ドルビーNR
BとCを搭載。
ドルビーNRの種類がFL管に表示されるのが良い。
ドルビーHX PRO
搭載しているが、OFFにすることはできない。
MPXフィルター
非搭載だが、FMラジオを録音しないから無問題。
関連:MPX FILTER(マルチプレックスフィルター)の使い方
DIRECTION MODE
片面で停止、両面で停止、繰り返しの3種類。
現在のモードはボタンの具合で判別することになるが、それならもう一回押せばよい。
ヘッドホン端子
左下にヘッドホン端子があり、音量調整も可能。
関連:[SONY] ヘッドホン端子と音量調整が可能なオートリバース機 [カセットデッキ]
アンプやスピーカーを用意せずとも聴けるのは、大きな利点である。
エンブレム
SONYのロゴは部品ではなく印刷。
関連:[SONY] エンブレムの種類と交換 [カセットデッキ]
底面
底板はネジ2本で開けることができ、基板の裏を見ることができるが、端は隠れて見えない。
この時期のES機ではない機種の脚は、ないに等しいフェルト貼りなので、自分で脚を用意して固定しても良いだろう。
穴は開いているので、ボルトとナット、ワッシャーで固定できる。
ネジが長すぎると、左手前と右奥が基板に接触するため、長さに注意。
CAL Oscillation Level
基準レベル信号の調整は、基板右奥にある半固定抵抗で行う。
・Lch:RV105
・Rch:RV205
キャプスタンモーター
EG-500AD-2Bが使われている。
・マブチモーター株式会社(Mabuchi Motor Co., Ltd.)
・DC12V
・2400rpm
・CCW(反時計回り)
関連:キャプスタンモーター(MMI-6S2L)と互換品(EG-530AD-2B)
アジマス調整
正方向(FWD)は左のネジ、逆方向(REV)は右のネジ。
テープ速度調整
モーター裏面にある穴にマイナスドライバーを挿し、回して調整。
・時計回り:速くする
・半時計回り:遅くする
3kHzのテストテープを再生した時、±1%、つまり2970-3030Hz内に収めること。
テープの始端と終端の差は、0.84%(25Hz)以内に収めること。
ワウ・フラッターは、両面とも0.1%前後と優秀であった。
キャプスタンベルトとピンチローラーを交換したTC-RX77(1991年)があるが、0.2-0.3%前後であり、速度も両面で差がある。
ソレノイド
ソレノイド(電磁石を使った部品)が搭載されているが、これが固着していないかを調べる。
固着していると、ガチャガチャと引っかかるような音がして、再生できないことがある。
# リバース動作に失敗するとか。
本機もそのような現象があったが、ソレノイドに固着は見られなかった。
念のため、ソレノイドの穴の内側をアルコールで清掃しておく。
清掃後、引っかかるような現象はなくなったが、何故なのかは謎である。
リールギア
再生/録音は可能だが、早送り/巻き戻しが遅い場合は、リールの回転に抵抗がある可能性がある。
リールを引き抜くには、先にある固定用の黒いプラスチックのワッシャーを外すのだが、これがかなり難しい。
爪を犠牲にして根気よく外す。
ワッシャーが外れたら、白いY字型のロック(175)を上にスライドさせ、リールギアを外す。
175 X-3391-108-1 BRAKE ASSY
リールギアは左右同じように見えるが、パーツナンバー的には異なるので注意!
正面向かって左:168 X-3391-106-1 REEL ASSY
正面向かって右:169 X-3391-107-1 REEL ASSY, T.U
また、リール軸の根元に黒いワッシャー(170)があるので、紛失しないように!
170 3-327-708-31 WASHER
リールギアの歯が、黒く汚れている。
これは、Y字型のロックの両腕にある、慣性による回転を止めるためのブレーキを加えるゴム材が、加水分解で溶けたためである。
ブレーキを与えないと、早送りや巻き戻し後、それらを止めた際に、慣性で回りすぎてしまい、テープが飛び出してしまう。
それがケース内で留まればよいが、万一ケース外に出てしまうと、デッキに巻き込まれてしまうことになる。
10分テープなどの短いものはテープが少ないため、慣性が弱く、あまり問題にならないが、分数(ふんすう)が増えるとテープが増え、リールの重量が大きくなり、慣性が増すので、ブレーキは重要となる。
溶けたゴムを除去し、小さく切ったゴムを瞬間接着剤で貼り付けて対応する。
ゴムに向かう側はギア(歯車)なので、フェルトは解(ホグ)れてしまうので不適。
リールの回転は、そのゴムとリール軸の間にある、センサーで行っている。
リールを外したついでに、このセンサーと、それを反射するリールの内側の「銀/黒」の面も掃除しておく。
センサーから赤外線を出し、その反射を読み取り、回転を検知しているのだ。
反射がないとか、反射されたままだと、リールが止まっていると認識する。
リールが回転していると、「銀/黒」が交互に変わるため、反射の「有/無」で回転だと判断している。
カセットホルダー
カセットホルダーの右側にはピストン機構(203)がある。
203 X-3391-115-1 DAMPER ASSY
これが経年劣化すると、高速に開く(ロケットオープン)になる。
↑正常なオープン(じわっと開く)
↑ロケットオープン気味
これでもまだマシな方で、もっと「ガツン!」と開くこともある。
ロケットオープンを放置すると、「ガツン!」の衝撃で、上述したようなホルダー機構の歪(ゆが)みが発生し、開閉がガタガタになる。
この箇所は、O(オー)リングではなく、特殊な形状のゴム(傘型)となっており、先端を閉じた注射器を引く要領で負荷を掛けている。
そのため、交換は不可能。
筒の内径は6.4mm。
関連:[SONY] ダンパー(ピストン)のゴムリング交換 [カセットデッキ]
Record Level調整
基板上
・Lch:RV103
・Rch:RV203
両端まで回し切ったところで調べると、両端ともRecord Levelが下がるので、途中に山がある?
メーターレベル調整
モノラルラジオを録音したテープを聴いていて、音は確かに中央なのに、メーターの振れが異なる場合は、メーターレベルを調整する。
基板右奥
・Lch:RV106
・Rch:RV206
これはテープ再生ではなく、LINE INから音を入れて調整すべき。
ヒューズ
ガラス管のヒューズ(125V 1.25A)が2本使われている。
↑ヒューズを取り外したところ
・F501 1-532-741-11 FUSE, GLASS TUBE(1.25A)
・F502 1-532-741-11 FUSE, GLASS TUBE(1.25A)
大きさは5×20mm。
125V 1.25Aのヒューズは入手困難なので、交換する場合は250V 1.0Aのもので問題ない。
F501とF502のヒューズ(1.25A)が、電源を入れた瞬間に切れる問題。
交換しても、すぐに切れてしまう。
トランスの二次側、10Vが入ってすぐのところ。
基板図/回路図を追い、C512(コンデンサ)が異常なことを確認。
C512 1-124-897-11 ELECT 3300uF 20% 16V
見た目には、全く問題ない。
↑一番手前がC512
底板を外して調べると、容量が「O.L」となってしまう。
基板から取り外し、電子部品チェッカーで調べると、Resistor(抵抗)と判断され、不良確定。
他の16V 3300uFに交換すると、ヒューズが切れることはなくなった。
取り外したC512を見るも、膨張や液漏れもなく美品で、見た目には全く問題がない。
このような不良は、非常に困るね…
(コンデンサ一覧は後述)
リモコン
WIRELESS REMOTE CONTROL RECEIVER
別売:RM-88(10,000円)
受光部を、背面中央にある「コントロールS」の「入力」に挿す。
当然、これに付属するリモコンがないと遠隔操作はできない。
ボタンは非常に少なく、
FWD、REV、早送り、巻き戻し、REC、REC MUTE、STOP、PAUSE、カウンターのリセット、MEMORY
しかない。
令和に於いて、本機でそこまでしてリモコン操作したい者はいないだろう(笑)
製造打切年等
・製造打切年:1987年7月
・補修用性能部品保有期間:8年
・修理対応終了年:1995年7月
修理対応終了年から25年以上経過しており、SONYは修理を受けない。
関連:[SONY] 製造打切年/補修用性能部品保有期間/修理対応終了年 [オーディオ]
その他
カセットホルダーが最後まで開かない時は、ホルダー前面の方向用LEDの黒ケーブルに遊びがあるか確認し、ない場合は遊びを作る。
ゴムベルトを交換し、ヘッドを手で上げると抵抗なく上がるのに、ヘッドが上がらず再生できない場合は、ソレノイドの固着を疑う。
メカの隙間からドライバーを挿し込み、ソレノイドのピンを何度か動かすと改善することがある。
1-454-428-11 SOLENOID, PLUNGER
再生中の最も高温な部位は、基板中央奥にあるQ504(室温22度で50度)である。
↑Q504 8-729-180-93 TRANSISTOR 2SD809
同じく2SD809が使われているQ516も高温になるが、2SD809に不良が発生する。
関連:[SONY] トランジスタ(2SD809)の故障 [TC-R502]
FL管の窓は高さが短かく、下から見上げる位置に置くと下部が隠れてしまう。
テープ窓が広いのは良いが、テープ窓が光らないのがね…
カセットホルダーを閉じる時に抵抗があり、ガタガタ。
金属が削れ、指に鉄粉が付くほど。
グリスを塗布しても、削れるのは防げない。
前面はプラスチックだが、その質が低く、スグに割れが発生する。
特に「枠(ワク)」になっているメカ周辺の下部、カセット部を口(クチ)とすると、アゴの部分が割れる。
カセットリッドやFL管の前にある透明プラスチックの質が低いのか、傷が付きやすい。
IC304の手前にPL301(パイロットランプ)があるが、
PL301 1-518-386-00 LAMP, PILOT
これは、REC CAL中にのみ、点灯する。
↑REC CAL中のFL管
筐体内に常時点灯しているパイロットランプなどないだろうから、それで正常だと思われるが、暗くて分かりにくい!
調整箇所
・Tape Speed:モーター裏面
・Azimuth:ヘッド
・Playback Level:RV101/201:10kΩ
・Record Bias:RV104/204:22kΩ
・Record Level:RV103/203:33kΩ
・Meter Level:RV106/206:22kΩ
・CAL Oscillation Level/CAL Meter:RV105/205:47kΩ
・Quick Reverse Sensitivity:RV501:22kΩ
後のオートリバース機(TC-RX70等)とは異なり、METER LEVEL単体の調整用の半固定抵抗(RV106/206)がある。
最初に、モーター裏面でテープ速度を調整すること。
そうしないと、LINE OUTからのAC電圧がズレ、後の調整がやり直しとなる。
↑315Hzのテストテープを使用
LINE OUTをSZ02に入れ、AC(mV)モードに切り替えると、この写真のように、AC電圧(mV)と周波数(Hz)が同時に確認できる。
Tape SpeedとAzimuthの調整は何とかなるが、全てを調整するのは機材的に不可能。
# 信用できるテストテープがない。
CDを録音してみると、レベルを抑えめにしているにもかかわらず、音が歪(ひず)む。
他機で録ったテープの再生は問題ない模様。
本機は再生専用として使うつもりだが、録音に問題はあるのは気に障るので、他のデッキ(TC-K222ESA)と、パソコン、WaveGeneなど、あるものを使って調整。
録音レベルキャリブレーションが、マクセルURでもツマミを最大にしても届かないのも、おおよそ中央で揃うように調整。
録音の歪みは、Record Biasを上げることで抑え込んだ。
上述のように、Record Levelは、半固定抵抗の回転で一方的に上がる/下がるではなく、途中に山があるような感じなのが意味不明。
周辺のトランジスタがダメになっている可能性もある。
結局、Quick Reverse Sensitivity以外、全て変えることになったが、互いに関連しているので、調整は困難を極めた。
こんなにズレるとは思えないので、前所有者によって変えられていた?
トリマーの劣化
調整箇所(11箇所)には、3本脚のトリマー(半固定抵抗)が使われており、これを回して調整を行う。
だが、トリマー自体の劣化で、回しても意図した結果にならない場合がある。
この場合は、トリマーを交換することになる。
例えば、Record Levelを調整するRV103とRV203には、上のように「333」と書かれたトリマーが使われている。
数字の最後の「3」は「10の3乗」を表すので、33×1000=33kΩとなる。
↑最大で35kΩ程度
だが、203(20kΩ)や503(50kΩ)のトリマーは入手可能だが、33kΩは入手困難。
大は小を兼ねるということで50kΩで置き換えると…少し回しただけで大きく抵抗値が変わることになり、調整がシビアになるだろう。
30kΩで妥協する?
・秋月電子:TOCOS GF063P B303K
・千石電商:TOCOS GF063P B303 旧タイプのGF06Pシリーズとほぼ同等
接点復活剤をトリマーに数滴落としてグリグリ回すと改善することがあるが、
トリマーを基板から取り外し、テスターの値を見て判断することになる。
重要なのは、最小値/最大値だけではなく、滑らかに値が上下するかだ。
回している途中で異常な値を示せば、それは除去しなければならない。
また、トリマーには物理的な破損(外装の割れ)が見られることが多いが、
この程度であれば、値が正常であれば問題ないだろう。
ゴチャゴチャ考えるよりも、問答無用で全部交換した方がサッパリするが(笑)
LED
カセット下にある、再生方向を示すLED部品は取り外し可能で、LEDの交換も可能。
元は緑だが、他の色にすることもできる。
但し、色により順方向電圧(VF)が異なるので注意。
LEDの交換
カセット下にある、再生方向を示すLEDが暗く感じたので、交換する。
このLEDは、テープ走行なくとも、電源が入っている状態で常時点灯しているので、劣化が進み、暗くなっていると思われる。
36年前のLEDに比べ、今のLEDは、さぞかし明るいだろう(罠)
D551とD552が相当し、容易に交換できる。
5×7×2(厚)mmの角型LEDを用意し、そのまま交換するだけ。
↑上が旧、下が新
透明グリーンのLEDにしたら、明るすぎて不自然(笑)
↑旧LED
↑新LED
光量を落とすため、白色の詰物をしてみたが、それでも明るい。
色も、旧は緑だが、新はエメラルドグリーンで不一致。
↑再生ボタンと色が違う
なお、交換後のLEDには3V掛かっている模様。
これらを解決するには、
①LEDに係る抵抗(R543 110Ω)を抵抗値の高いものに交換し、電流値を下げる
②暗いLEDに交換
③他のLEDも替える
の方法がある。
①は面倒なので除外。
②透明ではなく、緑のLEDは光量が低いようなので、目下手配中。
これで「それなりに」明るいようなら、交換して終了、暗いなら③へ。
追記:角型緑は暗かった。
③透明砲弾型のLED(3mm)を入手し、基板上のLEDと交換すると、全てが明るくなり、明るさや色の不一致は解消する(前衛的思考)。
交換する箇所
・TAPE OPERATION(FL管右):緑×2個
・TAPE TYPE(FL管右):緑×3個
・再生ボタン:緑×2個
・録音ボタン:赤×1個
・一時停止ボタン:橙×1個
ボタンのLEDの交換は、CONTROL SW BOARDを外せば容易だが、
TAPE OPERATIONとTAPE TYPEのLEDは、FL管の台の裏にあるため、交換には注意が必要。
↑FL管の右の穴の奥にLEDがある
↑5本のLEDがある
LEDの多数の端子を曲げないと交換できないため、FL管を壊す恐れがある。
LEDのコネクタ
・CN507:再生方向のLED
・CN511:操作ボタン
・CN708:TAPE TYPEとTAPE OPERATION
抜くと該当箇所のLEDが消えるが、動作には影響なく、抜いたままでも機能はする。
緑→青
緑のLEDを青のLEDに交換しても光る。
↑緑
↑青
青の方が現代風でナウい(死語)が、明るすぎるので、白い紙を噛ますなどして減光する必要がある。
なお、青色LEDの量産技術が中村"アンガー"修二氏によって開発されたのが1993年だから、1986年当時、青色LEDは一般には存在しなかった。
オーディオ用コンデンサ
オーディオ用のコンデンサが使われている箇所を示す。
使われているのは、全て両極性品。
(基板奥から手前に)
METER AMP:4.7uF 50V
・C137
・C237
DOLBY AMP:10uF 50V
・C136
・C236
REC:10uF 50V
・C120
・C220
PB AMP:10uF 50V
・C103
・C203
緑色(nichicon MUSE BP)の個体もあれば、ELNAが使われている個体もある。
コンデンサ(キャパシタ)一覧
現物やサービスマニュアルの基板図にはC2xxが存在するが、パーツリストには存在しないなど、意味不明な点が多々あるので注意。
(テキストでの一覧は表の下部)
C101 MYLAR 0.0012uF 5% 50V 1-110-196-00
C102 FILM 0.022uF 5% 50V 1-136-157-00
C103 ELECT 10uF 20% 50V 1-124-186-00
C104 FILM 0.027uF 5% 50V 1-136-158-00
C105 CERAMIC 0.0022uF 30% 16V 1-162-302-31
C106 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C107 MYLAR 0.0047uF 5% 50V 1-110-203-00
C108 FILM 0.47uF 5% 50V 1-136-173-00
C109 FILM 0.15uF 5% 50V 1-136-167-00
C110 FILM 0.015uF 5% 50V 1-136-155-00
C111 FILM 0.22uF 5% 50V 1-136-169-00
C112 FILM 0.068uF 5% 50V 1-136-163-00
C113 FILM 0.047uF 5% 50V 1-136-161-00
C114 MYLAR 0.0068uF 5% 50V 1-110-205-00
C115 FILM 0.01uF 5% 50V 1-136-153-00
C116 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C117 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C118 ELECT 22uF 20% 25V 1-124-481-11
C119 FILM 0.047uF 5% 50V 1-136-161-00
C120 ELECT 10uF 20% 50V 1-124-186-00
C121 CERAMIC 180pF 10% 50V 1-162-285-31
C122 FILM 75pF 5% 630V 1-136-273-91
C123 MYLAR 0.0056uF 5% 50V 1-110-204-00
C124 FILM 0.01uF 5% 50V 1-136-153-00
C125 FILM 0.012uF 5% 50V 1-136-154-00
C126 MYLAR 0.0056uF 5% 50V 1-110-204-00
C127 MYLAR 0.0056uF 5% 50V 1-110-204-00
C128 FILM 0.01uF 5% 50V 1-136-153-00
C129 FILM 0.022uF 5% 50V 1-136-157-00
C130 FILM 0.1uF 5% 50V 1-136-165-00
C132 FILM 470pF 5% 630V 1-136-478-11
C133 FILM 100pF 5% 630V 1-136-433-11
C134 MYLAR 0.001uF 5% 50V 1-110-195-00
C135 ELECT 10uF 20% 50V 1-124-907-00
C136 ELECT 10uF 20% 50V 1-124-186-00
C137 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-185-00
C138 ELECT 3.3uF 20% 50V 1-124-905-11
C139 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C301 ELECT 220uF 20% 10V 1-124-444-00
C302 ELECT 220uF 20% 10V 1-124-444-00
C303 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C304 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C307 ELECT 220uF 20% 10V 1-124-444-00
C308 ELECT 220uF 20% 10V 1-124-444-00
C309 ELECT 1uF 20% 50V 1-124-903-00
C310 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C312 FILM 0.022uF 5% 50V 1-136-157-00
C313 FILM 0.022uF 5% 50V 1-136-157-00
C314 ELECT 470uF 20% 6.3V 1-124-470-11
C315 FILM 0.12uF 5% 50V 1-136-166-00
C316 FILM 0.1uF 5% 50V 1-136-165-00
C317 CERAMIC 18pF 5% 50V 1-162-205-31
C318 CERAMIC 18pF 5% 50V 1-162-205-31
C319 ELECT 47uF 20% 10V 1-124-892-11
C320 ELECT 47uF 20% 16V 1-123-332-00
C321 FILM 0.0033uF 5% 100V 1-130-285-00
C322 FILM 0.0033uF 5% 100V 1-130-285-00
C323 FILM 0.0068uF 5% 100V 1-130-293-00
C324 ELECT 10uF 20% 50V 1-124-907-00
C325 MICA 10pF 5% 500V 1-107-202-00
C326 FILM 0.0082uF 10% 630V 1-129-713-00
C327 ELECT 1uF 20% 50V 1-124-903-00
C328 ELECT 1uF 20% 50V 1-124-903-00
C329 ELECT 1uF 20% 50V 1-124-903-00
C330 CERAMIC 0.0022uF 30% 16V 1-162-302-31
C331 ELECT 0.47uF 20% 50V 1-124-902-00
C332 CERAMIC 0.022uF 30% 25V 1-161-494-00
C333 ELECT 47uF 20% 10V 1-124-892-11
C501 ELECT 2200uF 20% 25V 1-124-563-11
C502 ELECT 2200uF 20% 25V 1-124-563-11
C503 ELECT 100uF 20% 10V 1-124-443-00
C504 ELECT 1000uF 20% 10V 1-124-473-11
C505 ELECT 1000uF 20% 10V 1-124-473-11
C506 ELECT 2200uF 20% 35V 1-124-618-11
C507 ELECT 4700uF 20% 16V 1-124-898-11
C509 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C511 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C512 ELECT 3300uF 20% 16V 1-124-897-11
C513 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C514 ELECT 2200uF 20% 6.3V 1-124-888-11
C515 ELECT 100uF 20% 50V 1-124-122-11
C516 ELECT 100uF 20% 50V 1-124-122-11
C517 ELECT 100uF 20% 100V 1-124-932-11
C518 ELECT 100uF 20% 50V 1-124-122-11
C519 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C520 ELECT 47uF 20% 16V 1-123-332-00
C521 ELECT 33uF 20% 16V 1-124-896-00
C522 CERAMIC 33pF 5% 50V 1-162-211-31
C523 CERAMIC 33pF 5% 50V 1-162-211-31
C524 CERAMIC 150pF 10% 50V 1-162-284-31
C525 CERAMIC 150pF 10% 50V 1-162-284-31
C526 ELECT 4.7uF 20% 50V 1-124-927-11
C527 ELECT 100uF 20% 10V 1-124-443-00
C528 CERAMIC 0.001uF 10% 50V 1-162-294-31
C529 ELECT 100uF 20% 10V 1-124-443-00
C532 CERAMIC 0.001uF 10% 50V 1-162-294-31
C533 CERAMIC 0.001uF 10% 50V 1-162-294-31
C535 ELECT 47uF 20% 10V 1-124-892-11
C536 ELECT 47uF 20% 10V 1-124-892-11
C537 FILM 0.12uF 5% 50V 1-136-166-00
C760 ELECT 100uF 20% 6.3V 1-123-661-00
C761 CERAMIC 0.01uF 30% 16V 1-162-306-31
ELECT(電解コンデンサ):53個
FILM(フィルムコンデンサ):27個
CERAMIC(セラミックコンデンサ):14個
MYLAR(マイラー(ポリエステル)コンデンサ):7個
MICA(マイカコンデンサ):1個
合計:102個
オペアンプ
PB(PlayBack)
・IC301 三菱 5220 (PB EQ AMP)
REC
・IC303 NEC C4570C (REC AMP)
ヘッドホン
・IC307 C4570HA (HEADPHONE AMP) 4本×2列ではない
仕様
ヘッド:消去×1、録再×1
モーター:DCサーボモーター×1、DCモーター×1
SN比
・56dB(EIAJ)
・59dB(Dolby off、ピークレベル、メタルテープ)
・72dB(Dolby NR C)
周波数特性:30Hz-17kHz ±3dB(EIAJ、メタルテープ)
周波数範囲:20Hz~18kHz(EIAJ、メタルテープ)
ワウ・フラッター(EIAJ):±0.07%Wpeak、0.05%WRMS
歪率:0.5%(EIAJ、メタルテープ)
消費電力:17W
外形寸法:幅430x高さ105x奥行285mm
重量:4.7kg
別売:ワイヤレスリモコン RM-88(別売、10,000円)
機種選択
TCM-200以降を使っているなら、本機は動作速度的に厳しい。
何か特別な思い入れでもなければ、本機を選ぶ必要はない。
海外モデル
海外には「TC-R503」「TC-R503ES」というモデルが存在し、メカは「TC-CMAY B-12」で、TC-R303と同じメカ。
↑TC-R503ES
DIRECTION MODEが2種類しか選べないが、BIAS調整(BIAS ADJ)ができる!
カセットテープ全盛期
本機は1986年の発売。
80年代半ばが、カセットテープの全盛期だろう。
80年代半ばから90年にかけて、レベッカがヒットしていた時だが、SONYのコンポであるLiberty(リバティ)の広告に出ていた。
↑女の人は還暦手前
1982年にCDが登場、CDをカセットに録音して楽しむ時代。
カセットテープも、実に様々な種類が発売されていた。
↑1983年9月のSONYのカセットテープ
関連:カセットテープの履歴
そのような時期を思い出すなら、TCM-200以降では新しすぎであるから、本機を選ぶ理由となる!
↑TC-R502(1986年) 69,800円
1992年にMD(MiniDisc)が登場し、ヘッドの掃除や消磁、ワウ・フラッターなどといった面倒なことから解放され…
だが、令和で生き残っているのは、MDではなくカセットテープであった!
関連:[SONY] TC-R302とTC-R303の比較 [オートリバース]
さぁ、君もTC-R502を携行し、12月9日の午前3時過ぎに、ビート君(75)を先頭に、東京都文京区音羽の編集部に突撃せよ!!
関連:[SONY] TC-K501ESとTC-R502の比較 [オートリバース]
関連:電子部品チェッカー(LCR-T4/MTester)の故障と再購入
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