[A&D] GX-Z5000(1987年発売)のレビュー [カセットデッキ]
GX-Z5000
1987年に発売された、A&Dのカセットデッキである、GX-Z5000を手に入れた。
↑GX-Z5000(1987年) 64,800円
2ヘッド機であるが、リバース機構はなく、片方再生のみ。
前年(1986年)に発売された、SONYのTC-R502が69,800円で価格的に近いが、
↑TC-R502(1986年) 69,800円
関連:[SONY] TC-R502(1986年発売) レビュー [カセットデッキ]
TC-R502はオートリバース機で、キャリブレーション機能もあることを考えると、6.5万円で3ヘッドでもなく、片方再生しかできないGX-Z5000は、魅力が薄く、スルーされるのでは?
SONY TC-R502よりもA&D GX-Z5000が優れる点
・カセットホルダーが電動
・テープ窓が光る
・BIAS調整可
・スーパーGXヘッドで摩耗に強い
・MPXフィルター搭載(OFFも可能)
・SPOT ERASEシステム(A-B間のリピート再生)
・SPOT ERASEシステム(A-B間の消去)
・REC CANCELシステム
・選曲が前後16曲(TC-R502は前後1曲)
・モーターが3個(TC-R502は2個)
・多数のオーディオ用コンデンサ(黄色のコンデンサ=日本ケミコンのAS-I)
・ワウ・フラッター(EIAJ)
GX-Z5000:±0.04%WPeak、0.027%WRMS
TC-R502:±0.07%Wpeak、0.05%WRMS
GX-Z5000のキャプスタン駆動用モーターは「FGサーボDDモーター」であり、ワウ・フラッターが小さい。
A&D(エーアンドディー)
A&D(エーアンドディー)は、1987年から1993年までの間、三菱電機と赤井電機が合同で展開したオーディオのブランド名。
・A:AKAI(アカイ) 赤井電機
・D:Diatone(ダイヤトーン) 三菱電機
本体左上にあるA&Dのエンブレム、Dの方が大きくない?
■A&Dのエンブレム
GX-Z5000は、上位機種のGX-Z7000やGX-Z9000と共に、A&Dとなった初のカセットデッキである。
だが、手軽なラジカセやコンポに押され販売は低迷、1991年に提携解消及び製品の新規開発を完了し、1992年末までに製品の製造を全て完了(=オーディオ分野からの撤退)。
1993年末までに流通在庫製品の完売を以って、名実共にブランド名も消滅。
1994年には山水電気と共に香港のセミ・テック・グループの傘下に入ったが、2000年に民事再生法の適用を申請して経営破綻、赤井電機は消滅した。
なお、大田区にあった赤井本社ビルは1997年に43億円でSEGAに売却されたが、建築基準法に基づく新耐震基準に準拠してないことと、東日本大震災の影響により2012年に退去、翌年に解体され、2016年にニトリ大田大鳥居店となった。
1987年(昭和62年)のイベント
・1月17日:日本初の女性エ●ズ患者を神戸市内で確認
・2月1日:北海道の広尾線(帯広駅-広尾駅)が、この日限りで廃止
・3月14日:SFアニメ映画「王立宇宙軍 オネアミスの翼」日本公開
・3月23日:任天堂から1983年7月15日に発売された「ファミリーコンピュータ」が、国内出荷累計1,000万台を突破
・3月28日:シャープが「X68000」を発売
・3月31日:日本国有鉄道(国鉄)が、この日限りで鉄道事業を終了
・3月31日:筑波鉄道(土浦駅-岩瀬駅)がこの日限りで廃止
・4月1日:国鉄が分割民営化され、JRグループ7社が発足
・7月11日:世界の人口が50億人突破(その後の改訂で1986年に到達と修正) ← 国連の推計では2022年11月15日に80億人に達した
・7月21日:三菱石炭鉱業大夕張鉄道線が、この日限りで廃止
・7月23日:猛暑による電力供給不足により、首都圏一都五県約280万世帯で停電が発生、約1兆8000億円の経済損失(1987年7月23日首都圏大停電)
・8月31日:フジテレビ系列の帯バラエティ番組「夕やけニャンニャン」が、同日の生放送を以て放送終了、2年半の歴史に幕
・9月4日:第二電電(現在のKDDIの前身企業の1つ)が営業開始
・9月20日:おニャン子クラブが解散
・10月1日:日本楽器製造がヤマハに社名変更
・10月1日:小西六写真工業がコニカに社名変更
・10月4日:TBS系列の報道情報番組「関口宏のサンデーモーニング」放送開始
・10月12日:利根川進マサチューセッツ工科大学教授がノーベル生理学・医学賞を受賞
・10月19日:ニューヨーク株式市場が大暴落(ブラックマンデー)、世界同時株安に陥る
・10月30日:NECが家庭用ゲーム機「PCエンジン」発売
・11月6日:竹下内閣発足
・11月9日:後楽園球場の解体工事開始
・11月10日:円高ドル安不安で日経平均株価2万1000円台に暴落。
・11月12日:巨人の江川卓が現役引退
・11月18日:日本航空が完全民営化
・11月29日:金賢姫による大韓航空機●●事件
・11月30日:つくば市が発足(茨城県筑波郡谷田部町・大穂町・豊里町、新治郡桜村の3町1村の合併)
・12月18日:ファイナルファンタジー発売
・4月8日:TM NETWORK 「Get Wild」
・5月1日:アン・ルイス「天使よ故郷を見よ」
・10月25日:森高千里「オーバーヒート・ナイト」
・11月26日:光GENJI「ガラスの十代」 ← 作詞・作曲:飛鳥涼
・12月21日:柴田恭兵「ランニング・ショット」
柴田恭兵も、2022年の8月で71歳である…
特長
「3ヘッドシステムに肉薄するパフォーマンス」
本当に?
掲載カタログ
・A&D 総合カタログ 1987年11月
・A&D コンポーネント総合カタログ 1988年11月
など。
内容
カセットホルダーは電動式で、テープ窓は光る。
カセットホルダーの動きが、単なる開閉だけでなく引き込む動きもあり、秀逸。
ヘッドホン端子があり、音量調整可能。
背面のRCA端子は金メッキではない。
電源ケーブルに極性表示あり(白がコールド/アース側)。
一時停止(PAUSE)ボタンがないが、このデッキは停止状態がSONY機の一時停止状態である。
テープを入れるとヘッドブロックが上昇して待機状態となる。
録音は録音/ポーズキーと再生キーを同時に押して開始。
カセットホルダー内のテープを押し付けるプラ製のバネが経年劣化で変形するので、加熱しながら曲げる必要がある。
古いグリスが固着するので、メカを分解して旧グリスを除去、新たにグリスを塗布する。
カムモーターの角ベルトの交換(φ42 1.6mm)。
リーフスイッチの接点清掃。
各種VOLに接点復活剤。
カムモーターが劣化すると異音が発生するが、モーターの分解/手入れで直るのか?
交換用のカムモーターは手に入るのか?
モードベルトは角型の折長65mmだった。
アイドラーゴムが固くなると、リールが動かなくなるので、交換が必要。
その場合は、以下のパッキンで代替できる。
関連:SANEI 水栓補修部品 ユニオンパッキン 直径16mm×内径12mm×厚さ2mm PP40-16X12
アイドラーギアが欠けて終わるSONY機よりも、水道パッキンで直るA&Dの方がいいね。
関連:[SONY] アイドラーのギア欠け(X-3356-641-1) [カセットデッキ]
状態
電源は入るが、モーター風の異音がし続ける。
ボタンを押しても無反応。
扉も開かないので何もできない。
ケーブルが結束バンド(黄色く変色しているので当時のもの)で各所止められていたので、分解歴はないと思われる。
モードベルトが見当たらない。
モードベルトはケース底に切れて落ちていた(溶けてはおらず、ベタついてもない)。
カセットリッド側のツメ上側2箇所が折れている。
ピンチローラーは磨けば使える感じ。
アイドラーゴムも清掃すれば使える感じ。
ヘッドホンのボリューム(音量)にガリはない。
電源ボタンのON/OFF時に摩擦抵抗を感じる。
とにかく、グリス固着との闘いであった!
メカの背面、ネジ穴が金属の部分はネジが非常に硬く、相当な力で押し込みながら回さないと、ナメて終了するので注意!
テープポジション判別用等のリーフスイッチは、#1000の目の細かいヤスリで磨いた。
カセットホルダーの組上げに何故か手間取る(動きが異常)が、何度か試行して成功。
サービスマニュアル(海外版であるGX-52のもの)は内容が薄く、役に立たなかった。
テープ速度は、厳密には調べていないが、他デッキで録音したテープを再生しても違和感ないので、問題ない模様。
テープ速度の調整は、2階建て基板の2階にあるVR1で行う。
■
修理、メンテナンスを終え、現在、テープを再生し、動作確認中。
録音も可能。
REC BALANCEのツマミを中央にした状態で、LINE INから左右同レベルのテスト信号を入れても、メーターの左右がズレている(Rが小さい)ので、VR201(RCA端子の近く)で調整した。
その他
重い(6.5kg)!
天板は厚みがあり、後方に最後までスライドして外す。
基板が2階建てであったり、結束バンドが多すぎるなど、SONY機に比べると分解が面倒。
背面に「赤井電機(漢字)」の表記はない。
扉を開けたまま電源を切っても、閉じてくれない。
自己録再の音質は悪くないが、ヘッドホン出力が、SONY機に比べると小さい?
SONY機だと、ツマミを12時(正午)にすることはまずなく、10時半程度だが、本機は1時程度まで回す必要がある。
FL管の表示内容的に上が開くので不格好。
前面パネルの角が鋭すぎて凶器。
前面パネルを外すとFL管は明るいが、窓の内側を拭いても付けると暗いので、減光しすぎでは?
ピークホールド機能はない。
待機時もフライホイールは回っているが、DDモーターなのでほぼ無音(SONYのES機と同じ)。
DDモーターかつ片方走行機なので、キャプスタンベルトはない。
ゴムベルトはモードベルトの1本のみ。
モード切替時は、本来は静かなはずだが、手に入れた個体は、カムモーターの劣化により音がする。
だが、切替は短時間なので、あまり気にならない。
扉開閉は非常に高速だが、開く時は雑な感じがある(ダンパーの劣化?)。
操作ボタンの最下部(DOLBY、MPX FILTER)が、SONY機だと1980年代前半の機種風(TC-FX380やTC-FX500R)で、古臭さを感じる。
早送りと巻き戻しの勢いがあり、終端でテープに負荷がかかりそうだが、これは調整可能なの?
仕様
トラック方式:コンパクトカセット・ステレオ
ワウ・フラッター:
・0.027% WRMS
・±0.04% WPeak(EIAJ)
周波数特性:
・25Hz-17kHz ±3dB(ノーマルテープ)
・25Hz-18kHz ±3dB(クロームテープ)
・25Hz-20kHz ±3dB(メタルテープ)
歪率(EIAJ):0.8%(メタルテープ)
S/N比(EIAJ):59dB(メタルテープ)
ドルビーNRシステム使用時
・Bタイプ:1kHzで5dB、5kHz以上で10dB改善
・Cタイプ:500Hzで15dB、1kHz~10kHzで20dB改善
ヘッド:LC-OFCツインフィールドスーパーGXヘッド
・(録音/再生用)×1
・消去ヘッド×1
モーター:
・キャプスタン駆動用:FGサーボDDモーター×1
・リール駆動用:DCモーター×1
・カム・ドア駆動用:DCモーター×1
入力レベル:ライン 70mV/47kΩ
出力レベル:
・ライン:388mV/2.7kΩ
・ヘッドフォン:1.3mW(8Ω)/82Ω
電源:AC100V、50Hz/60Hz
消費電力:16W
外形寸法:幅425×高さ112×奥行352mm
重量:6.5kg
付属アクセサリー:接続コード×2
本機を選ぶ人
カセットリッドに穴が開いていて、そこに電源ボタンが位置するデザインが嫌な人。
以後の機種は高さが高くなるので、高さ112mm程度の低い機種が欲しい人。
録音はせず、再生も少ししかしない人(=たまにカセットに触れたいだけの人)。
オートリバース機が欲しい人は、1989年発売のGX-R3500に注目するかもしれないが、
↑GX-R3500(1989年) 59,800円
GX-R3500はカセットホルダーが手動(手で閉める)であり、テープ窓も光らないので注意。
GX-R3500を選ぶくらいなら、SONYのTC-RX70以降の電動メカ(TCM-200)搭載品を選んだ方が良いだろう。
なお、1989年発売の3ヘッド機であるGX-Z6100(69,800円)も開閉は電動ではなく、テープ窓も光らない。
↑GX-Z6100(1989年) 69,800円
1991年発売の3ヘッド機であるGX-Z6300EV(59,800円)は、電動でテープ窓も光り、スーパーGXヘッド搭載。
↑GX-Z6300EV(1991年) 59,800円
同じく1991年発売の3ヘッド機であるGX-Z5300(49,800円)は、電動でテープ窓も光るが、ヘッドがスーパーGXヘッドではなく、ハードパーマロイ(安物)。
↑GX-Z5300(1991年) 49,800円
1991年のこの2台を以て、AKAI・A&Dのカセットデッキは最後となり、歴史の狭間(ハザマ)に消えて逝ったのである。
上位機種
上位機種に、以下の3ヘッド機がある。
両機とも、GX-Z5000と同じく1987年の発売で「A&D」ブランドである。
↑GX-Z7000(1987年) 79,800円
・クローズドループ デュアルキャプスタン
・ダイレクトドライブ
・キャプスタン駆動モーターはFGサーボDDモーター
・Dolby NR搭載
GX-Z7000はGX-73(1986年)の後継機である。
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↑GX-Z9000(1987年) 99,800円
・クローズドループ デュアルキャプスタン
・ダイレクトドライブ
・キャプスタン駆動モーターはクォーツロックDDモーター
・Dolby NR/dbx NR搭載
・サイドウッド付
GX-Z9000はGX-93(1986年)の後継機である。
海外モデル
海外では「AKAI」ブランドは人気があったのか、A&D GX-Z5000は、海外ではAKAI GX-52として出ている。
AKAI GX-52には、シルバーモデルもあった模様。
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