[SONY] ST-S510(FM/AMチューナー)レビュー [AMステレオ対応]
(2021年10月)
SONYのFM/AMステレオチューナーである、ST-S510について。
↑ST-S510
1995年の発売で、定価は25,000円。
1995年だと、ST-SA5ESが同時期。
「AM STEREO CAPABILITY」ということで、AMステレオに対応している。
# CAPABILITYは「能力」「性能」の意
AMステレオの本放送開始は1992年3月15日午前9時なので、対応は前モデルであるST-S500(1992年発売)からである。
↑ST-S500(1992年) 24,800円
価格は200円上がった。
ST-S500にはあった信号強度(SIGNAL)表示が、ST-S510ではなくなったので、ラジオマニアとしてはイマイチ。
「DISPLAY」ボタンを押すと、信号強度が数字で表示される(FMのみ)が、
切替式なので、周波数や局名との同時表示は不可。
受信周波数
FM:76.0-90.0MHz
AM:531-1602kHz
FMの上限が90MHzまでなので、FM補完放送には非対応。
内蔵アンテナはないので、アンテナを接続しないとFMもAMも受信不可。
デザイン
「MENU」「RETURN」「ENTER」「AREA CALL」のボタンの形状から、
・TC-K700S/TC-K710S
・TC-RX711/TC-RX715/TC-RX1000T/TC-RX2000Tなど
のデザインと合わせたものかと思われる。
関連:[SONY] 曲面ボタンのある機種 [1993年-1995年あたり]
これらの4つのボタンは大きくて押しやすいのだが、一度設定すると、もう押すことはない、悲しいボタンなのだ。
ST-S510は、海外モデルではST-S261が見た目が近いが、
RDS(Radio Data System)/EON対応だったり、LW(長波)受信可など、ST-S510とは中身が異なる。
入出力端子
・F接栓×1(FM用)
・AMループアンテナ(AM用)
・LINE OUT(RCA)
AM用は、電線を挟むタイプで、ネジ止め式ではない。
接触不良になったり、電線の先がヨレヨレになって切れたりするものだ。
LINE OUTは、金メッキではない。
ヘッドホン端子はない。
ループアンテナ
AMループアンテナが付属しているが、ES機のように背面には固定できない。
1-501-374-11 ANTENNA, LOOP
当初は、SONYロゴの入ったかなり横長のループアンテナが付属だったようだが、後になって横長ではなくなったのが本品?
ループアンテナは室内に吊って使うことになるが、指向性があるので、AM局によって合う合わないが発生する。
ポータブル型だとラジオの向きを変えることで解消できるが、本機の場合はループアンテナを動かす必要があり…当然ながら面倒である。
スーパーエリアコール
日本全国のFM/AMの周波数が登録されており、地域を選ぶだけで、使い始めることが可能。
アンテナを接続し、「AREA CALL」を押してからチューニングダイヤルで地域を選択(ABCD順)し、「AREA CALL」で決定すると、自動で受信、登録を開始する。
登録にある局は、「DISPLAY」を押すことで、局名が表示できる。
↑NHK第一放送
登録にない局も、受信できれば登録されるが、局名は入らない。
この場合は、手動で局名を入れる必要がある。
局の改廃があるだろうから、スーパーエリアコール機能だけで完結できる地域は少ないだろう。
受信状況が悪い局は登録されない。
当方の環境では、AMの558kHz(ラジオ関西)が登録されなかった。
登録順は、A1にFM局、A2にFM局、A3にAM局、A4にAM局など、順序が意味不明(ランダムプリセット)。
MENU→EDIT→BANDを実行すると、FMを先、AMを後の順に並べてくれるが、並べ方がイマイチ不明なので、手動で並べ替える(MENU→EDIT→MOVE)必要がある。
登録できるのは、(A/B/C)×10局=30局だが、途中に空きを作ることはできず、詰められてしまう。
なので、AにFM、BにAMといった登録は困難。
文字数は最大で8文字まで。
# 前機種であるST-S500は4文字まで。
# ES機であるST-SA5ESも4文字までなので、ESを超えた!
アルファベット、数字だけでなく、ハイフンやアンダーバーなどの記号やスペース(空欄)も使える。
短い場合は左にスペースを置いたり、長い場合は短縮したりなど、センスが必要。
なので、先に周波数と局名を書き出してから登録した方が良い。
進めるのは「MEMORY/NEXT」ボタンだが、戻ることはできない(末尾まで進め、さらに進めて戻す)。
選局方法
まず「BAND」ボタンでバンドを選択。
「TUNE MODE」を押し、「AUTO」の時は、チューニングダイヤルを回すとその方向に自動で動いていき、受信すると止まる。
「PRESET」の時は、A1→A2→A3→…→A9→A0→B1→B2…と、登録順にジャンプしていく。
未表示(マニュアル)の時は、アナログラジオのように回した分だけ上下する。
ステレオ/モノラルは「FM/AM MODE」で切り替え。
なお、ST-SE570等とは異なり、プリセットボタンをテンキーとした周波数の直接入力はできない。
内部
たったこれだけ(笑)
しかも、基板には空きパターンが多く、
右上の緑基板に集中している。
TB101 1-233-355-11 ENCAPSULATED COMPONENT (海外仕様機ST-S261の場合)
「ENCAPSULATE…」いわゆる「パックチューナー」かな?
コンデンサは、ニチコンとELNAのものが使われており、見た目では劣化はなさそうだった。
基板中央奥の銀色のヒートシンクがかなり発熱するので注意!
不良個所
タクトスイッチの劣化(接触不良)により、多くのボタン操作がスムーズにできない!
1-554-303-21 SWITCH, TACTILE
カセットデッキでもタクトスイッチの劣化があるが、これほど重症なものは見たことがない。
外観や内部の様子から、劣悪な環境に置かれていたようには見えないのだが…質の低いタクトスイッチを使った?
ボタンは各群一括で管理されているため、1個でも異常があれば、他は正常でも意図しない操作となる。
プリセットボタン(1/2/3/…/8/9/0)はそれで一つの群を成すが、1を押しても2になったり、2を押しても3になったり、無茶苦茶。
分解し、タクトスイッチに接点復活剤を吹き込んでみたが、多少マシになった程度でしかなく、スイッチの全交換が必要だろう。
その後、吹き込んだ接点復活剤が馴染んだのか、タクトスイッチの誤動作はかなり減った。
また、チューニングダイヤルの劣化(接触不良)により、操作がスムーズにできない!
このエンコーダーは、カチカチとした操作感で永遠に回るタイプで、時計回りで「上がる」のだが、時計回りで上がったり下がったりする。
RV901 1-467-703-11 ENCORDER, ROTARY (TUNING/SELECT)
行ったり来たり…イライラする(笑)
分解し、エンコーダーの隙間から接点復活剤を吹き込んでみると、かなりマシにはなった。
FL管
カセットデッキ同様、パネルを外し、FL管と内側の窓を拭く。
FL701 1-517-141-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
FL管には、本機では点灯しないパターン(TA/NEWS/INFO)がある。
リモコン受光部
SHARPの部品が使われている。
IC702 8-749-923-43 IC GP1U57XB
この機種専用のリモコンがあるのかは不明だが、本体だけで全ての操作ができるので、離れて操作しないなら、リモコンは不要である。
経年によるズレ
チューニングできれば問題なく聴けるが、製造後26年も経過しているので、各所で同調ズレが発生しているだろう。
ズレがあるとチューニングが合ってない状態で聴いていることになるので、音質が劣化していることになる。
ステレオセパレーション
このST-S510のステレオセパレーション(分離度)は、非常に悪い。
関連:FM放送の試験電波を使った ステレオセパレーション調整
ST-S510は廉価モデルにつき、セパレーションの調整はできない?
関連:[SONY] ステレオセパレーション(分離度) [ST-S510]
仕様でのステレオセパレーションは、
・ST-S510:50dB(1kHz)
・ST-S222ESA:60dB(1kHz)
なので、最初からこの有様だとは思えず、やはり経年によるズレが発生しているのだろう。
設定の保持
コンセントを抜いても以下のスーパーキャパシタにより、設定は保持される。
C705 1-104-905-11 CAP, DOUBLE LAYERS 0.22F 5.5V
これが劣化すると、登録した周波数などの設定が保持できなくなる(=電源を切ると消える)ので、本機を常用するなら、交換しておくべきだ。
電気二重層コンデンサ(積層コイン形) H型(脚の形状)
互換品:Panasonic EECS0HD224H 0.22F 5.5V
脚の形状はH型でなくてもよく、直接基板に載らない場合は、適当な電線で延長し、空いている場所に設置してやればよい。
・C:水平型(基板に対し平行) コンデンサの底から真下に2本脚が出る
・V(Vertical):直立型(基板に対し垂直)
・H(Horizontal):水平型(基板に対し平行)
なお、このキャパシタは、短波ラジオであるICF-SW55やICF-SW77にも使われている。
本機は、電源ボタンで一次側が切れるので、コンセントを挿していても、電源を切っていると、スーパーキャパシタ内の蓄電を消費する。
よって、時々電源を入れ、スーパーキャパシタに充電してやる必要がある。
ES機との差
CAL TONE機能はない。
関連:[SONY] CAL TONE [ST-S222ESA]
MPX FILTERのON/OFFもないので、FM放送をDolby ONで録音する場合は、カセットデッキ側で設定する必要がある。
FMのアンテナ端子は1系統のみ。
ステレオセパレーション、S/N比、全高調波歪率等の数字が劣る、詳細は以下参照。
音質
音質だが、レシーバー(チューナーとアンプが一体となったもの)と比べると、良いように思える。
さすがは専用機!…気のせいかは知らない(笑)
ただ、局によっては歪(ひず)みが気になる。
信号強度十分なのに歪む…経年によるズレや劣化か?
AMステレオ
本機は、AMステレオに対応している。
といっても、2021年10月時点では、以下の3局しかない。
ラジオ大阪(1314kHz)を受信したところ、ステレオ受信が可能であった。
↑「STEREO」が点灯
AMステレオ対応のポータブル型ラジオであるSRF-M100と比べたが、
関連:[SONY] 音が出ない故障の修理とAMステレオ放送 [SRF-M100]
ST-S510はステレオ感に乏(とぼ)しく、歪(ひず)みも大きく、期待外れ。
経年によるズレや劣化かは知らない。
「FM/AM MODE」ボタンでモノラルにできる。
いずれにしろ、AMステレオは当初からFMステレオには遠く及ばず、期待してはならない。
その他
前面はアルミパネルで、それなりの高級感がある。
チューニングダイヤルはプラスチックではなく、鋳物風で重量があり、多少の高級感を出している。
今の機種なら、当然プラスチックだろう。
小ボタンは、押すとギシギシし、押した感じが非常に悪い。
大ボタン(「MENU」「RETURN」「ENTER」「AREA CALL」)は、小ボタンと同じタクトスイッチを使っているが、感じは悪くない。
電源ボタンは、カセットデッキのES機と同じ重い感じで、押した感じに無駄に高級感がある。
S901 1-572-267-51 SWITCH, PUSH (AC POWER)(1 KEY)(POWER)
本機のランクを考えると、オートリバース機と同じ、安い感じのスイッチでも良かったのでは?
POWERボタンが押し込まれたままでコンセントを抜き、再度挿すと、そのまま電源が入る。
コンセントの抜く前の局の受信となる。
カセットデッキのPOWERボタンも同様なので、カセットデッキのTIMERをRECにしておくと、コンセント側のスイッチで録音ができる。
つまり、コンセントにタイマーを掛けておくと自動で録音ができるが、今の時代にそんな原始的な録音をする人はいるのかね…
FL管にはピークメーターの類がないので、見た目に面白くない。
カセットデッキにINしてMONITORし、ピークメーターを動かすと見た目に面白くなるが、そのためだけにカセットデッキを通すのは、電気代の無駄!
電池式のラジオは移動が楽だが、何故か面倒で聴かなくなってしまう。
常に同じ場所にある「チューナー」だと聴くようになるのかは、貴殿の性格に訊いてくれ…
ES機には劣るが、インターネット経由で情報が手に入る令和現在に於いては、よほどのマニアでない限り、この程度で十分では?
FM補完放送非対応なのが残念だが…
当然ながら、乾電池では動かないので、災害用には向かない。
停電では動かないし、地震だとラックから落ちてくる危険性が!
テストモード
「1」と「MENU」を押しながら電源を入れることで、FL管に全パターンなどが表示できる。
マイコンバージョン
↓
全点灯
↓
8-Digit テストパターン
↓
2-Digit テストパターン
↓
マイコンバージョン(以下繰り返し)
上記の間、「1」と「MENU」を押し続ける必要がある。
「1」と「MENU」を離すと、キーチェックモードとなる。
数字が表示され、押したキーによって番号が変わる。
「3」と「MENU」を押しながら電源を入れると、工場出荷時に戻る。
「リセットしますか?」などとは訊いてこないので注意。
任意の局に合わせて電源を切り、「4」と「MENU」を押しながら電源を入れると、以下の内容がチェックできる。
・1.TUNED:入感(OK or NG)
・2.IF:IF COUNT(OK or NG)
・3.SIG L:信号強度≧70dB(OK or NG)
・4.ST:ステレオ(OK or NG)
上記項目が2秒毎に自動で切り替わる。
3は、当方の環境では70dBを下回るので「NG」になってしまうが、これは問題なのか?
# ノイズが少ないだろうCATV経由のFMでも「66」止まり。
NGの場合、IC 201(FM SIGNAL DETECTOR)がNG、RV201の調整が必要。
IC201 8-759-812-35 IC LA1235
RV201 1-241-765-11 RES, ADJ, CARBON 22K
RV201は基板茶色部、SIGNALセクションにある、オレンジ色の半固定抵抗だ。
実際には、SSG(標準信号発生器)で以下の信号を入れて、
・frequency:98MHz
・modulation:1kHz,40kHz,deviation
・output level:6.3mV(76dBμ)
本機で信号強度を表示させ、70dBになるようにRV201を回すのだが、SSGなど手元になく…
試しに、FMを受信しながらRV201を時計回りに回すと、表示上の信号強度が上がり、70以上になるが、音には何の変化もない。
反時計回りに回すと信号強度が下がり17以下とかになるが、音には何の変化もない。
何の意味があるんだ、これ?
「5」と「MENU」を押しながら電源を入れると、「CLEAR」と表示され、強制リセットできる。
「リセットしますか?」などとは訊いてこないので注意。
本機は調整箇所が少ない。
調整箇所が少ないということは、ズレる箇所も少ないという理解でOK?
仕様
・実用感度:0.9μV(10.3dBf)
・周波数特性:15Hz-15kHz ±0.3dB
・SN比:81dB(mono)/76dB(stereo)
・全高調波歪率(1kHz):0.07%(mono)/0.2%(stereo)
・ステレオセパレーション:50dB
・消費電力:7W
・サイズ:幅430×高さ85×奥行295mm
・重量:約2.7kg
ES機や、前機種であるST-S500との比較は、以下を参考に。
関連:[SONY] ST-S222ESAのレビュー [チューナー]
関連:[SONY] 音が出ない故障の修理とAMステレオ放送 [SRF-M100]
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