テープパスチェック用カセットの作成と調整
「ミラーカセット」がない
ヘッドのアジマス調整の前に、テープが正常に流れているかを確認しておく必要がある。
ヘッドや、送り側のテープガイドに接触していないかを見る。
そのためには、デッキ正面からテープの流れ(テープパス)が見える「ミラーカセット」が必要だ。
・CQ009C 8-909-708-01
・CQ012C 8-909-708-02
だが、持っていないので、テープパスチェック用カセットを作るのが、本記事の内容である。
120分テープを1本潰(ツブ)して作る。
光の透過を考えると、透明のケースが良い。
サービスマニュアルでは、以下の箇所を切り取れ(Cut out)とある。
120分テープを使うのは、テープが薄く、ダメージを受けやすいため。
ダメージ:巻き込まれる、噛まれる、端が折れる、斜めにスジが入るなど
当方の環境でも、90分テープでは問題ないが、120分テープだとダメということが多々あったので、120分テープで「合格」させなければならない。
このテープは巻き込まれる前提なので、不要な120分テープを選択すること。
テープの流れを確認するためのものなので、音声は必要ないが、他にアジマスが信用できるデッキがあるなら、ステレオ録音しておくと、テープパスチェック後、そのままアジマス調整もできるので楽。
作り方
カセットA面にあるネジ(多くの場合は5個)を外す。
# 溶着されていてネジがない場合は知らない。
ニッパー等で、A面の該当箇所を切り取る。
断面が荒いので、ヤスリを掛けておく。
組み立てて終わり。
ケースは薄いので、ニッパーでカンタンに折り取れるが、意図しないところも割れてしまうので注意。
使い方
カセットリッド(挿入口のフタ)を外し、作ったテープを再生しながら、LEDライトとプラスドライバー(#1)を使い、該当箇所のネジを回し、ヘッド、消去ヘッドの位置や角度を調整する。
・Height:高さ
・Declination:傾斜
・Depth:深さ
・Azimuth:角度
ヘッド周辺のネジは、以下の通り。
A/B:録再ヘッドの調整
C:アジマス調整
D/E/F:消去ヘッドの調整
H:送り側のテープガイドの調整
カセットホルダーが邪魔なので、それも外せば、以下のように見やすくなる。
ES機の場合、送り側のテープガイドの位置は決まっている(21.1mm)ので、
まずは「H」を回し、その通りになっているかを確認してから進めること。
1つのネジを回しても、ヘッドは三次元的に動くので、非常に面倒。
互いの調整が影響を及ぼすので、より面倒。
録再ヘッドのテープガイドにテープが触れないようすると、正しいはずの送り側のテープガイド付近のテープが歪み、ピンチローラーに喰われて斜めの筋が入る、といった具合。
さらには、消去ヘッドも関連してくる。
送り側のない、安価な3ヘッド機であるTC-K700S/TC-K710Sや、オートリバース機(TC-RXx)は、巻き取り側だけなので、だいぶ楽。
関連:[SONY] 3ヘッド機対決(比較) [TC-K222ESJ,TC-K710S,TC-K700S]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
とにかく、クローズドループ デュアルキャプスタンは面倒!
テープパスを調整したら、市販の音楽テープを聴きながらアジマス調整を行い、再度テープパスを確認、問題がなければ、緩み止め剤を付けて完了。
関連:[SONY] ヘッドのアジマス調整後の緩み止め剤 [カセットデッキ]
さらに切り取る①
後日、ES機の送り側のテープガイド付近が見えないので、さらにガッツリ切り取った。
これで、送り側テープガイドが確認できるようになった。
送り側テープガイドからテープが逸脱する場合、ここを観察しながら、ヘッドを調整する。
音だけだと、メリメリと喰われるまで分からないが、目視が可能になると、喰われる手前の時点で、テープの揺らぎが確認できるようになり、より正確な(=余裕のある)調整ができる。
さらに切り取る②
B面側も切り取る。
これにより、送り側テープガイドがよく見えるようになった。
テープガイドの上で、テープにシワが寄っている(=手前に逸脱する兆候)のが分かるだろう。
廃棄へのカウントダウン①
送り側テープガイドから逸脱しないように「A」と「B」を調節したら、テープがヘッドのテープガイドの奥側と接触する罠!
接触を防ごうとすると、送り側テープガイドから逸脱する。
このような、ワケの分からない過去の遺物は、躊躇なく投げ捨てるべきである。
廃棄へのカウントダウン②
接触回避は諦め、次にアジマス調整をしようとしたら、「C」のネジを最強に締めても合わず、最適ポイントはその先(=到達不可能)、といった、意味不明な事象が発生する。
今すぐ、即座に、カセットデッキ及びカセットテープといった過去の遺物は、躊躇なく投げ捨てるべきである。
スマホで聴けば、テープパスやアジマス調整も不要、綿棒での掃除も不要、ピンチローラーやゴムベルトの劣化もヘッドの摩耗もコンデンサの液漏れもワウ・フラッターも、面倒な要素は何もかも存在しない!
それでも、キミがカセットデッキを使うつもりなら、送り側が存在しないTC-K710S/TC-K700Sや、オートリバース機を選ぶべきだろう。
関連:[SONY] TC-K710Sの分解とTC-K700Sとの比較 [カセットデッキ]
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