テープパスチェック用カセットの作成と調整

2022年1月12日

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「ミラーカセット」がない

ヘッドのアジマス調整の前に、テープが正常に流れているかを確認しておく必要がある。

ヘッドや、送り側のテープガイドに接触していないかを見る。

そのためには、デッキ正面からテープの流れ(テープパス)が見える「ミラーカセット」が必要だ。

・CQ009C 8-909-708-01
・CQ012C 8-909-708-02

だが、持っていないので、テープパスチェック用カセットを作るのが、本記事の内容である。

120分テープを1本潰(ツブ)して作る。

光の透過を考えると、透明のケースが良い。

サービスマニュアルでは、以下の箇所を切り取れ(Cut out)とある。

テープパスチェック用カセット

120分テープを使うのは、テープが薄く、ダメージを受けやすいため。

ダメージ:巻き込まれる、噛まれる、端が折れる、斜めにスジが入るなど

当方の環境でも、90分テープでは問題ないが、120分テープだとダメということが多々あったので、120分テープで「合格」させなければならない。

このテープは巻き込まれる前提なので、不要な120分テープを選択すること。

テープの流れを確認するためのものなので、音声は必要ないが、他にアジマスが信用できるデッキがあるなら、ステレオ録音しておくと、テープパスチェック後、そのままアジマス調整もできるので楽。

作り方

カセットA面にあるネジ(多くの場合は5個)を外す。

テープパスチェック用カセット

# 溶着されていてネジがない場合は知らない。

ニッパー等で、A面の該当箇所を切り取る。

テープパスチェック用カセット

断面が荒いので、ヤスリを掛けておく。

テープパスチェック用カセット

組み立てて終わり。

テープパスチェック用カセット

ケースは薄いので、ニッパーでカンタンに折り取れるが、意図しないところも割れてしまうので注意。

使い方

カセットリッド(挿入口のフタ)を外し、作ったテープを再生しながら、LEDライトとプラスドライバー(#1)を使い、該当箇所のネジを回し、ヘッド、消去ヘッドの位置や角度を調整する。

Height_Declination_Depth_Azimuth

・Height:高さ
・Declination:傾斜
・Depth:深さ
・Azimuth:角度

ヘッド周辺のネジは、以下の通り。

ヘッド周辺ネジ

A/B:録再ヘッドの調整
C:アジマス調整
D/E/F:消去ヘッドの調整
H:送り側のテープガイドの調整

カセットホルダーが邪魔なので、それも外せば、以下のように見やすくなる。

カセットホルダー除去

ES機の場合、送り側のテープガイドの位置は決まっている(21.1mm)ので、

ヘッド周辺図

まずは「H」を回し、その通りになっているかを確認してから進めること。

21.1mm

1つのネジを回しても、ヘッドは三次元的に動くので、非常に面倒。

互いの調整が影響を及ぼすので、より面倒。

録再ヘッドのテープガイドにテープが触れないようすると、正しいはずの送り側のテープガイド付近のテープが歪み、ピンチローラーに喰われて斜めの筋が入る、といった具合。

さらには、消去ヘッドも関連してくる。

送り側のない、安価な3ヘッド機であるTC-K700S/TC-K710Sや、オートリバース機(TC-RXx)は、巻き取り側だけなので、だいぶ楽。

関連:[SONY] 3ヘッド機対決(比較) [TC-K222ESJ,TC-K710S,TC-K700S]

関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]

とにかく、クローズドループ デュアルキャプスタンは面倒!

テープパスを調整したら、市販の音楽テープを聴きながらアジマス調整を行い、再度テープパスを確認、問題がなければ、緩み止め剤を付けて完了。

関連:[SONY] ヘッドのアジマス調整後の緩み止め剤 [カセットデッキ]

関連:3M TL90J(後浸透,中強度,超低粘度)

関連:3M TL42J(中強度,中粘度)

さらに切り取る①

後日、ES機の送り側のテープガイド付近が見えないので、さらにガッツリ切り取った。

さらに切り取り

これで、送り側テープガイドが確認できるようになった。

送り側テープガイドの観察

送り側テープガイドからテープが逸脱する場合、ここを観察しながら、ヘッドを調整する。

音だけだと、メリメリと喰われるまで分からないが、目視が可能になると、喰われる手前の時点で、テープの揺らぎが確認できるようになり、より正確な(=余裕のある)調整ができる。

さらに切り取る②

B面側も切り取る。

さらに切り取る

これにより、送り側テープガイドがよく見えるようになった。

送り側テープガイドの観察

テープガイドの上で、テープにシワが寄っている(=手前に逸脱する兆候)のが分かるだろう。

廃棄へのカウントダウン①

送り側テープガイドから逸脱しないように「A」と「B」を調節したら、テープがヘッドのテープガイドの奥側と接触する罠!

ヘッド周辺ネジ

接触を防ごうとすると、送り側テープガイドから逸脱する。

このような、ワケの分からない過去の遺物は、躊躇なく投げ捨てるべきである。

廃棄へのカウントダウン②

接触回避は諦め、次にアジマス調整をしようとしたら、「C」のネジを最強に締めても合わず、最適ポイントはその先(=到達不可能)、といった、意味不明な事象が発生する。

ヘッド周辺ネジ

今すぐ、即座に、カセットデッキ及びカセットテープといった過去の遺物は、躊躇なく投げ捨てるべきである。

スマホで聴けば、テープパスやアジマス調整も不要、綿棒での掃除も不要、ピンチローラーやゴムベルトの劣化もヘッドの摩耗もコンデンサの液漏れもワウ・フラッターも、面倒な要素は何もかも存在しない!

それでも、キミがカセットデッキを使うつもりなら、送り側が存在しないTC-K710S/TC-K700Sや、オートリバース機を選ぶべきだろう。

関連:[SONY] TC-K710Sの分解とTC-K700Sとの比較 [カセットデッキ]

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Posted by nakamura