[SONY] トレイが開かない(ヒューズ抵抗) [TC-RX70]

2022年1月12日



SONYのカセットデッキであるTC-RX70(1990年発売)の故障。

TC-RX70_カタログ
↑TC-RX70

先日まで正常に動いていたが、突如動かなくなった。

現象

・電源が入り、FL管もテープ窓も点灯するが、取り出しボタンが効かない。
・メカ部は、モードベルト含め正常(メカ部をTC-RX77に移して確認)。
・電源を入れると、キャプスタン(=フライホイール)は回っている。
・FADERでREC LEVELが自動で回る。
・稀に電源を入れても、FL管が点灯しないことがある。

テープ窓が点灯しているので、メカ部に通電はしている。

リモコン(RM-J501)で取り出すこともできないので、本体の取り出しボタンの接触不良でもない。

キャプスタンモーターへの電圧を調べると、5V程度しかない。

ここ(CN1052)は通常、12Vのはずである。

CN1052_TC-RX70
↑左下がCN1052

メカ部への電源供給(CN1051)の電圧が低いため、アシストモーター(M1052)が回らず、カセットリッドが開かないのではないか?

ということで、基板が怪しい。

基板調査

基板を取り出す。

基板_TC-RX70

基板裏面を観察し、左奥(POWER SUPPLY)の、Q702とQ703のハンダ割れを発見。

ハンダ割れ_TC-RX70
↑Q703(黒)とQ702(緑)

ハンダ割れ_TC-RX70
↑Q703(黒)

ハンダ割れ_TC-RX70
↑Q702(緑)

Q702 8-729-920-97 TRANSISTOR 2SB1187-EF
Q703 8-729-920-98 TRANSISTOR 2SD1761-EF

ハンダ不良ではなく、ハンダが劣化し、脆くなり、崩れている感じ。

ハンダを盛って修復する。

ハンダ修復_TC-RX70

この2個のトランジスタは、ケース背面に接触しているが、

Q703とQ702_TC-RX70

これは放熱のためである。

発熱によって、ハンダが脆くなったのだろう。

ハンダ割れしやすいLINE IN/OUTは、本機(TC-RX70)では別基板となっており、ハンダ割れはなかった。

LINE IN_OUT_TC-RX70

基板を細かくチェックし、他のハンダ割れがないかを調べたが、他にはなさそうだ。

戻して動作確認するも、事象変わらず。

メカ部への電圧(CN1051)が低い原因を探る必要がある。

着手項目

IC804にR859(ヒューズ抵抗)、IC803にR860(同)が使われているが、切れていないか確認。

R859とR860_TC-RX70

R860 1-212-954-11 FUSIBLE 6.8 5% 1/2W F
R859 1-212-952-00 FUSIBLE 5.6 5% 1/2W F

切れてはいない模様。

この周辺、次機種のTC-RX77やその次のTC-RX79ではヒューズ抵抗が3個使われているが、TC-RX70には2個しかない。

R801_R802_R859_TC-RX77
↑TC-RX77

TC-RX70は、キャプスタンモーターの直前には入っていない。

何らかの対策?

CN1051の2番のライン

CN1052のプラスをさかのぼると、途中で分かれてIC803(リールモータードライブ)とIC804(アシストモータードライブ)の8番に入っている。

IC803 8-759-973-95 IC BA6219B
IC804 8-759-822-09 IC LB1641

さらにさかのぼると、Q709にたどり着く。

Q709 8-729-900-80 TRANSISTOR DTC114ES

Q709の5.1V→5.3V OK。
IC803の8番の5.1V→5.37V OK。
IC804の8番の5V→5.37V OK。

1番のラインが怪しい。

CN1051の1番のライン

R842
R843
R844
R845

切れてはない。

D808 8-719-001-21 DIODE UZL-9H1
D809 8-719-001-21 DIODE UZL-9H1
D810 8-719-933-54 DIODE HZS9A2L
D811 8-719-933-54 DIODE HZS9A2L

切れてはない。

Q817 -0.6V→1.09V 変。

Q816 DTC114ES

Q819とR855の間 -5.2V→+1.44V 変。

Q819 -4.8V →+0.44V 変。

Q819 -6.7V→+0.86V 変。

IC803 1番 -6.7V→0.98V 変。

Q818 Q819 REEL MOTOR TORQUE SWITCH
Q816 Q817 ASIST MOTOR TORQUE SWITCH

Q818とQ811間 -6.8V→5.39V 変。

Q818とR856間 -6.8V→0.78V 変。

Q810とQ816の間 -6.8V→0.85V 変。

IC801の前、Q801 5.1V→5.4V OK。

IC801 8-759-634-80 IC M50963-225SP

C805 5.1V→5.19V OK。

B-の上流

C715 6.9V→6.08V ?

C715が正常でQ819が変ということは、IC701付近が変?

R734とR733_TC-RX70
↑(左)R734とR733(右)

光を当ててよく見ると、R734に比べ、R733が茶色くなっているのが分かる。

R733が切れていた。

R733_TC-RX70
↑切れたR733

R733とR734の2個はヒューズ抵抗(Fusible Resistor)だが、手持ちのTC-RX70のサービスマニュアルでは、回路図にもパーツリストにもない!

目の前の実機とは回路が異なるが、パーツリストでは

R725 1-219-136-11 FUSIBLE 0.22 10% 1/4W F
R726 1-219-136-11 FUSIBLE 0.22 10% 1/4W F

となっているので、おそらくこれだろう。

# 切れたものは「赤赤銀銀(緑)」なので、0.22Ω±10%

このヒューズ抵抗の替えは手持ちがないので、危険だが、単なるジャンパーに交換!

結果、動作復活。

直近の振舞を見ると、突如断絶ではなく、徐々に切れていったのだろう。

搭載ヒューズ抵抗の一例

Fusible Resistor

TC-RX50(1988年)

TC-RX50_カタログ

・R84 1-217-384-00 FUSIBLE 5.6 5% 1/4W F

R84は、MD BOARD上にある。

関連:TC-RX50

TC-RX70(1990年)

TC-RX70_カタログ

・R733 N/A FUSIBLE 0.22 10% ←今回切れたもの
・R734 N/A FUSIBLE 0.22 10%
・R859 1-212-952-00 FUSIBLE 5.6 5% 1/2W F
・R860 1-212-954-11 FUSIBLE 6.8 5% 1/2W F

または

・R725 1-219-136-11 FUSIBLE 0.22 10% 1/4W F
・R726 1-219-136-11 FUSIBLE 0.22 10% 1/4W F
・R859 1-212-952-00 FUSIBLE 5.6 5% 1/2W F
・R860 1-212-954-11 FUSIBLE 6.8 5% 1/2W F

関連:TC-RX70

TC-RX77(1991年)

TC-RX77_カタログ

・R128 1-219-153-11 FUSIBLE 10 5% 1/4W F
・R228 1-219-153-11 FUSIBLE 10 5% 1/4W F
・R801 1-212-954-11 FUSIBLE 6.8 5% 1/2W F
・R802 1-212-952-00 FUSIBLE 5.6 5% 1/2W F
・R842 1-212-958-00 FUSIBLE 10 5% 1/2W F
・R859 1-212-942-00 FUSIBLE 2.2 5% 1/2W F

関連:TC-RX77

TC-RX79(1992年)

TC-RX79_カタログ

・R128 1-219-153-11 FUSIBLE 10 5% 1/4W F
・R228 1-219-153-11 FUSIBLE 10 5% 1/4W F
・R801 1-212-954-11 FUSIBLE 6.8 5% 1/2W F
・R802 1-212-952-00 FUSIBLE 5.6 5% 1/2W F
・R842 1-212-958-00 FUSIBLE 10 5% 1/2W F
・R859 1-212-942-00 FUSIBLE 2.2 5% 1/2W F ←過去に切れたことがある

関連:TC-RX79

TC-K222ESJ(1993年)

TC-K222ESJ_カタログ

R304 1-212-857-00 FUSIBLE 10 5% 1/4W F
R404 1-212-857-00 FUSIBLE 10 5% 1/4W F
R564 1-212-853-00 FUSIBLE 6.8 5% 1/4W F
R565 1-212-853-00 FUSIBLE 6.8 5% 1/4W F

関連:TC-K222ESJ

結論

ゴムベルトやピンチローラーは当然のこととして、回路を追う前に、先に以下を確認した方が良い。

・ハンダ割れ(本記事)
・ヒューズ抵抗切れ(本記事)
ES機の場合は、モーター裏のコンデンサの液漏れ
・ESGはELNAコンデンサの液漏れと周辺への影響
ESL/ESAの場合は、銅板のハンダ割れ

その上で、アイドラー、エンコーダー、モーター、リモコン受光部などの確認に入る。

SONYのカセットデッキでは、水色のヒューズ抵抗がいくつか使われているが、切れていることがある。

切れるということはどこかに原因があり、それを直さない限り、つないだところでまた切れるのだが、このような古い機器の場合、単にヒューズ抵抗の経年劣化で切れることもある。

ヒューズ抵抗

つまり、現在は正常動作の機体も、ヒューズ抵抗の劣化だけでダメになる可能性があるので、留意しておきたい。

関連:[SONY] ゴムベルトの交換(型式と長さ) [カセットデッキ]

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関連:[SONY] キャプスタンモーター(MMI-6S2LKS/MMI-6S2LK/MMI-6H2LWK) [カセットデッキ]

関連:[SBX 1610-59] リモコン受光部の不具合と互換品との交換 [VS1838B]



Posted by nakamura