[SONY] ST-S222ESAのレビュー [チューナー]

2023年6月12日



SONYのチューナーであるST-S222ESA(1991年発売)について。

ST-S222ESA_カタログ
↑ST-S222ESA

価格は29,800円、ES機の一番下。

ST-S222ESA:29,800円(1991年発売)
ST-S333ESA:55,000円(1991年発売)

333は、1993年のST-S333ESJまで続いたが、222は本機で最終となった。

各部の名称と機能_ST-S222ESA

前モデルであるST-S222ESR(1989年発売)同様、TV放送(VHF:1-12ch/UHF:13-62ch)の音声も受信できるが、当然ながら、アナログ放送が終了している現在は受信不可。

ST-S222ESR_カタログ

キャリブレーショントーン(FM放送のエアチェック時の録音レベル調節に便利な基準音)が出力できる。

関連:[SONY] CAL TONE [ST-S222ESA]

電源ボタンは、タクトスイッチによる電子的なもの。

電源ボタン_ST-S222ESA

コンセントを挿している限り、電源ボタンでOFFにしても一次側は切れず、リモコンでONにできるが、待機電力がかかっている。

背面は、アンテナ端子と、ライン出力。

背面_ST-S222ESA

FMアンテナ端子は、F接栓。

AMアンテナ端子は、ネジ止め式。

ライン出力は金メッキではない。

AMアンテナが背面に装着できるようになっている。

ワイヤレスリモコン(RM-J70)が付属するはずだが、取扱説明書の「付属品」には記載されていない(後述)。

電波強度は、Fm/AMともFL管の右端に10本の柱で表示されるが、数字(値)では出せない。

信号強度_ST-S222ESA

ST-SE570等とは異なり、プリセットボタンをテンキーとした周波数の直接入力はできない。

メンテナンス

30年前の機種なので、メンテナンスが必要。

天板を外すと…中身はスカスカ!

内部_ST-S222ESA

基板を横にすればもっと小さくできるが、カセットデッキやアンプにサイズを揃えるためにこのサイズが必要なのだ。

空いている左右の空間に貴重品を隠すことができると考えたキミは、非常に前向きである。

中央にある茶色の大きなヒートシンク(IC 701)は、真冬でも触れないくらい発熱するので注意!

ヒートシンクは外装には触れていないので、熱はこのヒートシンクで止まってしまうが、天板に接触させれば、冬場に足を載せる暖房器具としての役割も付加できるだろうに、それができないのが、ソニータイマー擁する「世界のSONY」なのだ。

右上にパックチューナー(ALPSの汎用品)がある。

ALPS_ST-S222ESA

銀色のケースに穴が開いているので、調整はできそうだが…

メイン基板を調べると、明らかに焦げたような箇所がある。

燃えている箇所_ST-S222ESA

D708(ダイオード)付近ね。

明らかに危険そうだが、電源は入り、受信もできる。

チューニングつまみが激重。

エンコーダー内のグリスが固着しているのだろう。

# カセットデッキでも生じる。

つまみを抜くには、六角が必要。

六角_ST-S222ESA

抜いたのち、固定しているナットを外す。

ナット_ST-S222ESA

エンコーダーが内側に外れるので、

エンコーダー_ST-S222ESA

軸の隙間にパーツクリーナーを流し込んで溶かし、回す→流し込む→回す…の繰り返し。

パーツクリーナー プラスチックセーフ

関連:パーツクリーナー プラスチックセーフ

ただ、軸の隙間は無いに等しいので、この方法はかなりの時間が掛かる。

# エンコーダーを分解して手入れした方が確実だが…

作業繰り返しにより、激重ではなくなったが…まだ重い?

(パーツクリーナーが効いてきたのか、翌日には慣性で回るほど軽くなった)

タクトスイッチには、不良は見られなかった。

不良がある場合は、接点復活剤を流し込んで対処する。

接点復活王

関連:接点復活王(ポリコールキング,サンハヤト)

前面パネルを外し、FL管と、

FL管_ST-S222ESA

内側の窓(ウィンドウ)を拭く。

窓_ST-S222ESA

FL管には「LW(長波)」「MW(中波)」のパターンがあるので、海外モデルもあるのだろう。

本機では中波は「MW」ではなく「AM」と表示されるが、パターンを見ても分かるように、「FM」の「F」の右に縦線を付して強引に「A」にしているので、非常に不格好!

FMを受信してみると、周波数ズレがあった。

正規の周波数では受信できず、表示上、0.1MHz下で受信できてしまう。

同調点ズレが生じているので、調整が必要である。

これは、緑丸印の付いた「IFT251」を回して合わせる。

IFT251_ST-S222ESA

聴感で合わせても幅があるので、83MHzを受信し、近くにある「IC LA1235」の7番ピンと10番ピン間の電圧を測りながら、

LA1235_ST-S222ESA

これが0mVとなるようにする。

端子間電圧0mV_ST-S222ESA

0mVピッタリにはできないので、±10mV以内に収める感じで。

実際には、83MHzを出せる機器を持っていないので、83MHz付近の放送を受信しながら行った。

金属のドライバーだと、挿した時点で値が変わってしまうので、プラスチック製のドライバーで行う。

# 木やプラスチックの箸やヘラ等を加工しても作れる。

0mVを狙って回すのだが、少し回しただけで大きく変わるので、キレないように、根気よく行うのが重要なのかは知らない。

苦労して合わせても、数日後に再度測ったら、±10mV以上に増加していた!意味不明!!

FM MPXやステレオセパレーション、AMの調整など、他にも調整箇所は多々あるが、SSG(標準信号発生器)などの調整機器が必要なので、無理!

ステレオセパレーションは、SSGがなくても調整可能だが…

関連:[FM] SSGなしでステレオセパレーションを調整する方法 [チューナー]

製造から30年経過しているので、ズレている箇所は他にもあると考えるべきで、調整できない以上、本来の能力は発揮できない!

周波数等の設定は、コンセントを抜いても、スーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)により、1ヶ月程度は保持されているが、スーパーキャパシタは劣化するので、保持されないなら交換が必要。

スーパーキャパシタはメイン基板上ではなく、前面パネル内の基板上、FL管の右側(C801)にある。

スーパーキャパシタ_ST-S222ESA

一旦切れると、数分程度では十分に充電されず、設定しても再度忘れてしまう。

これが劣化すると、登録した周波数などの設定が保持できなくなる(=電源を切ると消える)ので、本機を常用するなら、交換しておくべきだ。

電気二重層コンデンサ(積層コイン形)
0.1F 5.5V φ12.2mm 端子間5.5mm C型 高さ9mm(基板含む)

電気二重層コンデンサ_ST-S222ESA

0.1Fのものは手に入らないかもしれないので、0.22Fを使うか。

関連:0.22F 5.5v 1個

関連:0.22F 5.5v 2個

関連:0.22F 5.5v 10個

端子間の幅が合わない等で、直接基板に載らない場合は、適当な電線で延長し、空いている場所に設置してやればよい。

電気二重層コンデンサ

・C:水平型(基板に対し平行) コンデンサの底から真下に2本脚が出る
・V(Vertical):直立型(基板に対し垂直)
・H(Horizontal):水平型(基板に対し平行)

スーパーキャパシタの交換に付いては、以下を参照のこと。

関連:[SONY] メモリー保持用のスーパーキャパシタを交換 [ST-S222ESA]

上述の「燃えたような箇所」が気になるが、5時間程度、受信したままで放置したが、普通に動いている(謎)

調べると、同じ場所で発生している例が!

関連:SONY チューナー ST-S222ESAを再入手も…

この先人の機種は、その後トランスが逝った模様…

ホット/コールド(アース)

電源コードに白い線のある方を、アース側に挿す。

アース側_ST-S222ESA

・非接地側:ホット/ライブ
・接地側:コールド/アース

関連:両方ともホット側を示す事案

仕様

TVチューナー部
 受信方式:PLLデジタル周波数シンセサイザークォーツロック方式
 受信チャンネル:VHF 1-12チャンネル、UHF 13-62チャンネル
 アンテナ端子:75Ω不平行型(FMと共用)

FMチューナー部
 受信方式:PLLデジタル周波数シンセサイザークォーツロック方式
 受信周波数:76-90MHz
 アンテナ端子:75Ω不平行型(FMと共用)
 中間周波数:10.7MHz
 S/N:80dB(モノ)、70dB(ステレオ)
 高調波ひずみ率(1kHz):0.045%(モノ)、0.05%(ステレオ)
 ステレオ分離度(1kHz):60dB ←ステレオセパレーション
 周波数特性15Hz-15kHz、+0.2 -0.5dB
 実効選択度:80dB(400kHz)
 キャプチャーレシオ:1.0dB
 AM抑圧比:65dB
 イメージ妨害比:55dB
 IF妨害比:120dB以上
 スプリアス妨害比:100dB以上
 RF相互変調妨害比:65dB(800kHz)、80dB(2.4MHz)
 出力:750mV、1.8kΩ(75kHz dev.)

AMチューナー部
 受信周波数:522-1611kHz
 アンテナ端子:AMループアンテナ 外部アンテナ端子
 中間周波数:450kHz
 感度(999kHz):250μV/m(AMループアンテナ使用時)
 S/N(50m/Vm):50dB
 高調波ひずみ率:0.3%(400Hz)
 選択度:40dB(9kHz)

電源部・その他
 電源:AC100V、50/60Hz
 消費電力:14W
 最大外形寸法:430×85×365mm(幅/高さ/奥行)
 重量:4kg
 付属品
  AMループアンテナ(1)
  FMフィーダーアンテナ(1)
  アンテナコネクター(75/300Ω→F型)(1)
  接続コード(1)
  取扱説明書(1)
  保証書(1)
  サービス窓口・ご相談窓口のご案内(1)

付属品にワイヤレスリモコン(RM-J70)の記載がないのは何故?

海外モデル

ST-S222ESAと外観は似ているが、これらの機種は、ボタンが多く高機能。


↑ST-S505ES


↑ST-S590ES

FL管も表示が細かいドット式である。

シグナルレベル(dB)を数字で表示可能、周波数に局名を付けることも可能。

ST-S222ESA vs ST-S510

下位機種である、ST-S510と比べると…

発売年
ST-S222ESA:1991年発売
ST-S510:1995年発売

価格
・ST-S222ESA:29,800円
・ST-S510:25,000円

4年の差があるが、価格差は小さい?

仕様上の差は、

FM受信範囲
・ST-S222ESA:76.0-90.0MHz
・ST-S510:76.0-90.0MHz

両機とも、FM補完放送には非対応。

ステレオセパレーション(分離度)
・ST-S222ESA:60dB(1kHz)
・ST-S510:50dB(1kHz)

10dBの差。

S/N比(モノラル)
・ST-S510:81dB
・ST-S222ESA:80dB

大差なし。

S/N比(ステレオ)
・ST-S510:76dB
・ST-S222ESA:75dB

大差なし。

全高調波歪率(1kHz/mono/stereo)
・ST-S510:0.07%/0.2%
・ST-S222ESA:0.045%/0.05%

消費電力
・ST-S510:7W
・ST-S222ESA:14W

消費電力は倍!

重量
・ST-S510:2.7kg
・ST-S222ESA:4.0kg

どちらもスカスカ!

生産国
・ST-S510:日本
・ST-S222ESA:日本

世界に誇る「MADE IN JAPAN」であるが、「ソニータイマー」との抱き合わせ販売!

数字上はST-S222ESAの方が上だが、調整がズレているだろうから、現機では不明。

音質も、ST-S222ESAの方が良いような気がするが、ブラインドテストではないので確実ではない。

機能的には、

・ST-S222ESAにはTV受信機能があるが、今は無意味どころか、邪魔。
・ST-S222ESAは局名登録ができない!(ST-S510はできる)
・ST-S222ESAはCAL TONEあり(ST-S510にはない)
・ST-S510はAMステレオ受信可能(ST-S222ESAは不可)
・調整ポイントはST-S222ESAの方が多い(ST-S510はほとんど不可)が、調整ポイントがない方が、ズレる箇所も少ないので良い?
・両機とも、FMの上限が90MHzまでなので、FM補完放送には非対応。

局名登録など不要だろう?ということだが、ST-S510を使っていると、やはりある方が良い。

ST-S222ESAは「A」「B」「C」の「A」にFM、「B」にAM、「C」にTVといった登録が可能だが、空欄とはできないので、FMが5局しかない場合、Aの6,7,8,9,0には何かダミーを登録することになり、プリセットをチューニングつまみで移動した際に邪魔。

「A」だけで必要な場合でも「B」「C」は消せず、10(1,2-9,0)×3=30局は消せないので、チューニングつまみを回した際に邪魔。

「C」に(仮に)TVを入れていると、「B」の後で「C」に入った途端に「ザー」音で不快。

# 中波はMUTING不可(雑音)、TVはケーブルTVの場合は放送ないものの何かしら出ているのでMUTING不可(雑音)。

「プリセットメモリーはランダムに30局まで登録可能」というよりも、「必要なくても30局登録必須」が現状。

ST-S510は、空欄とはできないが、不要な後端は登録する必要がないので、無駄なチューニングつまみの回転は不要。

TV受信がウリだったST-S222ESAだが、今は受信不可であり、係るいくつかのボタンも意味なしで邪魔。

ST-S222ESAのチューニングつまみは、マニュアルチューニング時は適度に変わるが、メモリー局を移動する場合は、約90度も回さないと移動しないので、非常に操作しづらい。

よって、メモリー局を選ぶ場合は、チューニングつまみではなく、FL管の下に並ぶ数字ボタンの使用を強制されることになるだろう。

ST-S222ESAは、チューニングつまみにクリック感がない。

ST-S510のチューニングつまみには細かいクリック感があり、クリック毎に値が変わるので、ST-S510の方が操作しやすい。

ST-S222ESAのチューニングつまみには指先を入れる凹がないので、早回しはできない。

ST-S510のチューニングつまみには凹があるので、指先を入れて早回しできる。

ST-S510_カタログ
↑ST-S510(チューニングつまみに凹が見える)

ただ、チューニングつまみの回した感じについては、ST-S222ESAの方が高級感があるとか、ST-S510は安っぽいなどの感想もあろうが、ST-S510もプラスチックではなく鋳物なので、安い感じはない。

FL管内に電波強度が柱で表示されるが、頻繁に動くものではないので…

信号強度_ST-S222ESA

(ST-S510は切替式で数字での表示で、FMのみ)

ラジオ自体が時代遅れかつ斜陽かつ滅亡へ向かっている令和に於いて、単に聴くならST-S510で十分!と言いたいが、ST-S510のステレオセパレーションのダメさを見てしまうと…

関連:[SONY] ステレオセパレーション(分離度) [ST-S510]

ES機ではないST-S510も、前面はアルミなので、それなりの高級感はある。

ただ、当方のようにTC-K222ESATC-K222ESJを持っている場合は、ST-S222ESAの方がマッチするかは知らない。

全景_SRS-55
↑TC-K222ESA(最下部)と、その上のST-S510

関連:オーディオ構成/接続図(2021年10月)

チューナーとしての上を目指すなら、以下の機種になるだろうね。

 ST-S333ESG:49,800円(1989年発売)
 ST-S333ESA:55,000円(1991年発売)
 ST-S333ESJ:55,000円(1993年発売)
 ST-S555ESX:74,000円(1986年発売)
 ST-SA5ES:55,000円(1995年発売)
 ST-SA50ES:40,000円(1997年10月発売)

関連:[SONY] ST-S510(FM/AMチューナー)レビュー [AMステレオ対応]

関連:[SONY] チューナーの仕様比較 [ラジオ]

関連:α-STATION(エフエム京都) 試験電波

関連:[SONY] ICR-S71の修理(電源SW/バリコン/ボリューム) [ラジオ]



Posted by nakamura