[SONY] 異音がする場合の対処 [カセットデッキ]

2022年10月17日



カセットデッキから異音がする場合の原因を挙げる。

機種によっては、テープを動かしていなくても、電源ONの時はキャプスタンモーターが常に回っているので、待機時に異音がすることもある。

モーター内部

キャプスタンモーターに異常がある場合、以下動画のような「キー!」という異音がすることがある。

普段は異音なくとも、突如発したりするので厄介だ。

この場合は、モーターを分解し、グリスを塗布する。

関連:[SONY] キャプスタンモーター(MMI-6S2LKS/MMI-6S2LK/MMI-6H2LWK) [カセットデッキ]

但し、TC-RX70(1990年)などに搭載されているMMI-6S2LKSは、分解して手を入れても直らない場合がある。

また、キャプスタンベルトがキツいと、モーターに負担がかかり、異音が生じる場合があるので、適切な長さのゴムベルトを使うこと。

関連:[SONY] ゴムベルトの交換(型式と長さ) [カセットデッキ]

大きな異音でなくても、動作音が気になる場合がある。

天板を閉め、カセットリッドを付けると音は小さくなるが、それでも気になる場合、キャプスタンモーターのオイル切れなので、上記同様、グリスを塗布すると静まることがある。

ES機は待機時でもほぼ無音なので、モーター音が気になるなら、ES機を選択するのも手。

関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]

フライホイールの偏芯

フライホイールが劣化している場合、偏芯により、後部の金属板に接触し、異音を生じる場合がある。

関連:[SONY] フライホイールの劣化(ひび割れ) [カセットデッキ]

この場合、「シャリシャリシャリシャリ」という、周期的な摩擦音がする。

フライホイールが裏面の金属板と接触

この場合は、ジャンク機などから、正常なフライホイールを移植するしかない。

天板を開けた状態で電源を入れ、フライホイールの回転を観察しよう。

普段は異音がしないが、本体を後方に傾けると異音がする場合は、フライホイールと後部の金属板との接触が疑われる。

フライホイールの汚れ

劣化したゴムベルトの除去が甘く、フライホイールにゴムベルトの残骸が残っている場合、「コトコト/カタカタ」という異音を生じることがある。

ゴムベルトの残骸
↑残骸が残っている

残骸はなかなか取れないので、パーツクリーナーを付けて、残骸を溶かしながら除去しよう。

パーツクリーナー プラスチックセーフ

関連:パーツクリーナー プラスチックセーフ

マイナスドライバーはフライホイールを削るので使用不可、使うならプラスチックのヘラだ。

TC-RX50TC-RX55などの、メカデッキにTCM-170を使ったモデルのフライホイールには、角型ベルトを使用するため、フライホイールに溝があり、劣化ゴムの除去が非常にしづらい!

フライホイールの溝

同様に、モーター側のプーリーにある残骸も、徹底的に除去する。

モーターのプーリー

このパーツクリーナーは、油性ペンの文字消しや、シールはがしにも使えるので、1本持っておくと良い。

軸受け

軸受けのプラスチックが後方に沈み、フライホイールの軸受けを成していない場合、「コトコト/カタカタ」という異音を生じることがある。

軸受けのプラスチック
↑左右の黒い部品が軸受け

この場合は、軸受けのプラスチックを一旦外し、フライホイール側に盛り上げるように曲げ、再び装着する。

プラスチックである軸受け自体のバネの力で前に押し出ているのだが、経年により、その力が失われているのだ。

軸受けとフライホイールが接する部分には、グリスを塗布しておく。

フライホイールにグリス
↑両ホイールの中央にグリス塗布

なお、塗布するグリスは、シリコングリースメイト ペーストが妥当。

シリコングリースメイト

関連:シリコングリースメイト ペースト

このグリスは、プラスチックやゴムを侵さないので、安心して使用できる。

金属用の油系のグリスを使うと、プラスチックを侵したり、時間が経つと固まったりするので危険だ。

録音/再生時

ピンチローラーが劣化して偏芯している場合、周期的な「コトコト/カタカタ」音がすることがある。

ゴム表面は正常でも、以下のように中心部が劣化し、偏芯することもある。

SONY機のピンチローラー

ピンチローラーは音質にも大きな影響を与えるので、新品のピンチローラーに交換しよう。

関連:[SONY] ピンチローラーの交換(型式と大きさ) [カセットデッキ]

早送り/巻戻し時

アイドラーギアにギア欠けが生じている場合、「ギギギ…」といういう異音が生じることがある。

この場合は、ジャンク機などから、正常なアイドラーギアを移植するしかない。

関連:[SONY] アイドラーのギア欠け(X-3356-641-1) [カセットデッキ]

アイドラーギアに欠けが無くても、アイドラーの振り子の動きが悪くなると、早送り/巻き戻しの際にギアが掛からず、異音がして遅れるか、動かず停止してしまう。

関連:[SONY] アイドラーの動作不良 [カセットデッキ]

周期的な異音

周期的な音がする場合は、回転系を疑うが、異音の発生箇所がハッキリしないと、ピンポイントでの対処は困難。

関連:[SONY] TC-RX55(1989年発売)のレビュー [カセットデッキ]

走行音

異音とまでは言えないものの、テープの「走行音」が大きい機種がある。

搭載メカで示すと、以下の通り。

・TCM-150:動作音大 TC-FX380/TC-FX500Rなど
・TCM-170:動作音中 TC-RX50/TC-RX51/TC-RX55
・TCM-200:動作音小 TC-RX70/TC-RX77/TC-RX79/TC-RX711/TC-RX715/TC-RX1000Tなど
・TCM-190:動作音小 TC-RX300など

関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]

TCM-150搭載機は、テープ走行音が大きい。

そのカセットテープをES機で再生すると、走行音はほぼ無音なので、テープ自体に問題はないはずだ。

経年劣化なのか、元々なのか…

TCM-150とTCM-170を比べると、TCM-150の方が甲高い音なので、より耳に付き、不快。

メカ部(表)_TC-FX500R
↑TC-FX500R(1982年)のメカ(TCM-150)

関連:[SONY] TC-FX500R(1982年発売)のレビュー [カセットデッキ]

TC-FX500Rについては、複数のギア(の歯車)にグリスを塗布することで、多少は静かになった気がするが、グリスの粘度により抵抗が増すので動作が重くなるし、正方向再生と逆方向再生での音が異なり、正方向には不快な成分(ウァ~ン…ウァ~ン…という周期的な音)が多いという、意味不明な事案。

メカ部を完全分解し、全部品を洗浄、グリスアップし組み立てると異音は消えるかもしれないが、そこまでするなら、TCM-200搭載機を入手して軽いメンテをした方が楽だし、より静かだろう。

TCM-150/TCM-170/TCM-190の、ソレノイド(電磁石)による「動作音」は、操作時のみなので耐えるにしても、走行音はずっと付いて回るので、静かな機種を選ぶべきだ。

なお、上述したように、ES機は待機時でもほぼ無音なので、モーター音が気になるなら、ES機を選択するしかない。

関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]

意外と面倒

その他は、キャプスタンの根元及び軸にグリスを塗布、ワッシャーの紛失はないか、などである。

面倒なのは「コトコト/カタカタ」という周期的な異音で、それほど大きな音ではないが、気になって仕方がない。

異音の発生源がハッキリとしないため、原因が掴みにくいが、本記事を参考に、究明してほしい。

廉価3ヘッド機やオートリバース機の場合、上に挙げた「軸受け」が盲点になりやすいことを申し述べておく。

関連:[SONY] リーフスイッチの不良と修理 [カセットデッキ]

関連:[SONY] ロータリーエンコーダー(1-466-238-11,1-466-525-11)の分解と清掃 [カセットデッキ]

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Posted by nakamura