[SONY] CDP-990(1989年)とCDP-M99(1990年)の比較 [CDプレーヤー]
CDP-990はフルサイズ(幅430mm)、CDP-M99はミニコンポサイズ(幅355mm)のCDプレーヤーである。
↑CDP-990(1989年) 49,800円
↑CDP-M99(1990年) 37,800円
CDP-990が先に出て、追ってCDP-M99が登場。
価格差は12,000円。
両機とも「9番台」であり、ES機より下のグレードでは、共に最上位。
両機とも、1990年2月の「コンパクト・ディスクプレーヤー 総合カタログ」に「新発売」として掲載されている。
売り文句
CDP-990
熟成されたデジタルテクノロジーを駆使しながら、音も機能もハイグレードにまとめ上げたモデル。
これがCDP-990です。
デジタル信号の時間軸方向の揺れをなくす「デジタル・シンク・システム」をベースに、高分解能を誇る18ビットリニアD/Aコンバーターを贅沢にも4個使用。
ノイズシェイピング・デジタルフィルターの45ビット演算データを平均値補間するスタガード方式を採用して、極めて滑らかなアナログ波形が得られる高精度な16fsD/Aコンバージョンを実現しました。
構造・素材面も、FBシャーシにGトレイ、フローティング電源トランスと、ESシリーズゆずりのハイグレード設計。
そして機能面は、録音レベルの設定に役立つピーク・サーチをはじめとして、テープ編集に活用できる「カスタム・エディット」(マルチディスク・プログラム/タイム・エディット/プログラム・エディット/タイム・フェード)&マニュアル・フェーダーと、自分流に自在な情報ファイルができる「カスタム・ファイル」(レベル・ファイル/ディスク・メモ/カスタム・インデックス/プログラム・バンク)&ファイル・リコールの2大機能をフィーチャー。
この他、動作時間を自由に変えられる可変フェードなども搭載して、音も機能も存分に楽しむことができます。
出力端子は固定/可変の2系統に加え、光るデジタルアウト端子も装備。
20キー・ワンタッチダイレクト選曲をはじめ、ディスプレイ・モード切替、ボリューム調整もできるリモコン付属です。
アルミフロントパネル採用。
FBシャーシ:音質を濁らせる内外の振動を回路部に寄せ付けないよう、シャーシ素材には十分な厚みと強度を持つメタル材を使用すると共に、外周を取り囲むフレーム、そしてフロントとリアを渡す前後のビームによって、シャーシ全体を強固にジョイントする。
Gトレイ:不要な外部振動をディスクに与えないため、組成が大理石と同じ炭酸カルシウムを特殊樹脂に加え、グラスファイバーで強化した素材。
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CDP-M99
場所を取らないミニコンポサイズがいいけれど、音も機能も、グレードはやはり、トップクラスにこだわりたい。
CDP-M99は、フルコンポサイズの上級機に盛り込まれたクオリティをそっくり継承。
デスクサイズのプライベート・オーディオシステム用として、また、お手持ちのミニコンポシステムのグレードアップ用として設計した、幅355ミリの重装備・ハイグレードCDプレーヤーです。
音は、8fs18ビットデジタルフィルター&18ビットリニアD/Aコンバーター。
16ビットの4倍の分解能で最上位ビットから最下位ビットまでリニアにD/A変換。
信号の時間軸方向の揺れを排除、ジッターレス再生を実現した「デジタル・シンク・システム」の採用とも相まって、より一層緻密でクリアな音楽再現が可能になりました。
機能は、「カスタム・エディット」&「カスタム・ファイル」。
複数枚のディスクに渡ってテープ編集ができるマルチディスク・プログラムや、最大音量レベルの箇所を探し出せるピーク・サーチ。
そして、文字・数字が見やすい新開発ドットディスプレイを採用、ディスクの管理に便利な最大185タイトルのディスク・メモなどが自由自在に行えます。
この他、20キ・ワンタッチダイレクト選曲やプログラム選曲、99曲対応「デリートシャッフル」をはじめ、ソニーならではの"使える"機能を余すところなくフィーチャー。
20キー付き・多機能ワイヤレスリモコンに加えて、先進のDSPアンプなどとのシステムアップができる光デジタルアウト端子も装備。
精悍なアルミフロントパネル採用です。
ダイレクト・デジタル・シンク
デジタル信号をきれいなままに、D/Aコンバーターに送り込むこと。
ここで問題になるのが、ジッターの発生です。
ジッターとは、デジタル信号が多数の回路を通過した結果、不規則に揺れ動いている状態で、このままD/A変換を実行すると、その揺れが信号の位相を乱してしまいます。
ダイレクト・デジタル・シンクは、これを解消するものです。
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CDP-X77ES/CDP-X55ES/CDP-X33ES
この回路をパルスD/Aコンバーターのチップ上に形成し、ジッター除去をパルスD/Aコンバーターの最終段である電子スイッチの直前で行います。
つまり、デジタル回路とアナログ回路の境界エリアにこの回路は構成されており、ジッターの発生の要素を原理的になくしました。
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CDP-990/CDP-790/CDP-M99
デジタルシンクICでデジタル信号の電圧時間軸を、ジッターを含んでいないクリーンなマスタークロックの精度に整え直して、D/Aコンバーターに送り込みます。
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これにより、位相が正確で忠実なD/A変換が可能で、聴感上も一段と力強さが増すと共に、音場を見渡せるような深みのある音を実現しました。
16fs 45bit ノイズシェイピング・スタガード 4D/A
CDP-990
SONYが先に開発した8fs 45bit ノイズシェイピング・デジタルフィルター「CXD-1244」を、より熟成した手法のもとに使いこなしたものが、16fs スタガード 4D/Aコンバーターです。
D/Aコンバーターを片チャンネルにつき2個ずつ使用し、1個には8fsのデジタルデータをそのまま、もう1個には半周期遅らせて入力。
そして、後段でこの2個の出力を合成するものです。
これにより、低グリッチを維持したままでの高精度16fs D/A変換を実現。
また、4個のD/AコンバーターICには、それぞれ高分解能18ビットリニアタイプを採用するなど、ノイズの少ないピュアな音質を獲得しています。
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CDP-790/CDP-M99
18ビットリニアD/Aコンバーターは、CDP-790/CDP-M99にも採用しています。
前面の表記
CDP-990
45bit NOISE SHAPING
16fs
16 TIMES OVERSAMPLING / HI-PRECISION D/A
DIGITAL SYNC SYSTEM
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CDP-M99
18bit LINEAR D/A
8fs
18 BIT LINEAR / 8 TIMES OVERSAMPLING
比較
幅だけでなく、高さも奥行も違う。
CDP-990
・ヘッドホン出力レベル:28mW(32Ω)
・消費電力:10W
・外形寸法:幅430×高さ115×奥行340mm
・重量:5.3kg
CDP-M99
ヘッドホン出力レベル:15mW(32Ω)
・消費電力:10W
・外形寸法:幅355×高さ95×奥行310mm
・重量:3.5kg
フルサイズとミニコンポサイズという大きさ以外にも、差が設けられている。
CDP-M99には電動ボリュームがないので、リモコンでは音量調整不可。
CDP-990には、ライン出力が2系統(固定/可変)あるが、CDP-M99には1系統(固定)しかない。
CDP-M99はFBシャーシではない。
CDP-M99には「カスタムファイル>レベルファイル」がない(ボタンもない)。
FL管が異なる
↑CDP-990:FLD801 1-519-554-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
↑CDP-M99:FLD401 1-519-557-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT
FL管が異なるのは、CDP-M99にはカスタムファイル>レベルファイルがないなどの理由による。
CDP-M99は横幅が75mm短いため、CDP-990よりもFL管が短いように思えるが、
CDトレイの幅(緑線)を揃えて比べると分かるが、大きな差はないようだ。
CDP-M99のFL管には「カスタムファイル>ディスクメモ」が見当たらないが、
↑CDP-990の表示内容
↑CDP-M99の表示内容
CDP-M99に「-EUROBEAT-」とあることからも分かるように、CDP-M99にもディスクメモはある。
リモコンも異なる。
・CDP-990:RM-D590
・CDP-M99:RM-D390
CDP-M99には電動ボリュームがないので、それが削除される等している。
再生、一時停止ボタン
この機種から、再生、一時停止ボタンが自照式になった。
CDP-990
・D808 再生 BG5535S 緑 φ5mm
・D809 一時停止 AA5534S 橙 φ5mm
CDP-M99
・D408 再生 BG5535S 緑 φ5mm
・D409 一時停止 AA5534S 橙 φ5mm
両機とも、再生マーク(右向きの三角)と一時停止マーク(||)が光るが、次のCDP-991(1990年)からは、マークではなくボタン左上の点が光るようになった(=コストダウン)。
共通部分
光デジタル出力(角型)あり。
ドットディスプレイ(上記「-BLUE SKY-」「-EUROBEAT-」の部分)。
フロントパネルにアルミフロントパネルを採用。
各々の前機種である
・CDP-970(1988年)
・CDP-M97(1989年)
のフロントパネルは、プラスチックである。
ピークサーチ機能(全曲を高速サーチし、音量レベルの一番大きい箇所の前後約4秒間を繰り返し再生する)が搭載された(前機種のCDP-970/CDP-M97には非搭載)。
消費電力は10W。
この値は、翌年(1990年)に出た後継機であるCDP-991の14Wに比べて小さい。
・CDP-950(1987年):11W
・CDP-970(1988年):11W
・CDP-990(1989年):10W
・CDP-991(1990年):14W
・CDP-997(1991年):15W
・CDP-911(1993年):13W
パルスD/Aコンバーター(後述)を採用したことで、消費電力が上がったのかは知らないが、
・CDP-590(1989年):9W
・CDP-591(1990年):10W
・CDP-597(1991年):10W
CDP-590(1989年)→CDP-591(1990年)の時も、9W→10Wと、1W上がっている。
ピックアップ
両機とも、RFアンプを内蔵した新開発ピックアップを採用。
低インピーダンスの信号出力が可能となり、ローノイズ・高安定化による音質改善を狙う。
ピックアップは「KSS-240A」であり、2023年時点でも互換品の入手が可能。
スーパーキャパシタ
CDP-990、CDP-M99の両機とも、メモリ保持用として使われているのは、容量の大きい電解コンデンサである。
CDP-990
C909 1-126-534-11 ELECT 47000MF 5.5V
基板左奥
CDP-M99
C251 1-126-244-51 ELECT 47000MF 5.5V
基板中央少し奥
巨大な電解コンデンサに変わって、小さいスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)が使われるのは、後継のCDP-991(1990年)からである。
C215 1-125-622-11 CAP, DOUBLE LAYERS 0.10F
基板中央少し手前
関連:[SONY] メモリー保持用のスーパーキャパシタを交換 [ST-S222ESA]
両機前後の流れ
・CDP-950(1987年) 49,800円
・CDP-970(1988年) 49,800円
・CDP-990(1989年) 49,800円
・CDP-991(1990年) 39,800円
・CDP-997(1991年) 39,800円
・CDP-911(1993年) 39,800円
Mシリーズの「9」番台は、CDP-M99で終了となったが、
・CDP-M95(1988年) 47,800円
・CDP-M97(1989年) 41,500円
・CDP-M99(1990年) 37,800円
Mシリーズの「5」番台は、1991年まで続いた。
・CDP-M55(1987年) 32,800円
・CDP-M57(1988年) 29,800円
・CDP-M59(1989年) 24,800円
・CDP-M51(1990年) 24,800円
・CDP-M54(1991年) 24,800円
Mシリーズは2桁のため、「99」の次の番号を振りようがなかったので、終了で良かったのかは知らない。
CDP-790
同時期の下位機種であるCDP-790の価格は39,800円なので、CDP-M99の方が2千円も安い。
↑CDP-790(1989年) 39,800円
CDP-790にはカスタムファイル機能はないが、電動ボリュームがあり、ライン出力が2系統(固定/可変)あるなど、CDP-M99を超えている部分もある。
「18 BIT LINEAR / 8 TIMES OVERSAMPLING」は、CDP-M99と同じ。
1990年2月の「コンパクト・ディスクプレーヤー 総合カタログ」に「新発売」として掲載されている。
より下位の機種
フルサイズとミニコンポサイズに「5」番台が存在し、価格差は3千円。
両機とも、1990年2月の「コンパクト・ディスクプレーヤー 総合カタログ」に掲載されている。
↑CDP-590(1989年) 27,800円
18bit NOISE SHAPING
8fs
8 TIMES OVERSAMPLING / 18 BIT DIGITAL FILTER
DUAL D/A CONVERTER SYSTEM
・消費電力:9W
・外形寸法:幅430×高さ100×奥行280mm
・重量:3.5kg
・ワイヤレスリモコン:RM-D190
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↑CDP-M59(1989年) 24,800円
18bit NOISE SHAPING
8fs
8 TIMES OVERSAMPLING / 18 BIT DIGITAL FILTER
DUAL D/A CONVERTER SYSTEM
・消費電力:9W
・外形寸法:幅355×高さ95×奥行305mm
・重量:3.0kg
・ワイヤレスリモコン:RM-D190
よりコンパクトな機種
コンパクトなCDプレーヤーを探しているがポータブル機は嫌!という人は、ミニコンポサイズ(幅355mm)でも良いが、以下のような、より幅の短い機種もある。
・CDP-P79(1989年) 22,000円 幅225mm
・CDP-P71(1990年) 22,000円 幅225mm
・CDP-P91(1993年) 22,000円 幅225mm
・CDP-S35(1995年) 22,000円 幅280mm
・CDP-A39(1998年) 24,000円 幅280mm
関連:[SONY] CDP-P79とCDP-P71 [CDプレーヤー]
↑CDP-P79(1989年)
↑CDP-P91(1993年)
↑CDP-S35(1995年)
関連:[SONY] CDP-S35(1995年発売)のレビュー [CDプレーヤー]
↑CDP-A39(1998年)
関連:[SONY] CDP-A39(1998年発売) [CDプレーヤー]
これらの機種は、価格からも分かるように、カスタムファイルのような機能はないが、再生するなら十分なので、求める用途に応じて選択すれば良い。
同時期のES機
同時期のES機は、1989年発売の
・CDP-X77ES:180,000円
・CDP-X55ES:89,800円
・CDP-X33ES:59,800円
であるが、
↑CDP-X77ES(1989年) 180,000円
↑CDP-X55ES(1989年) 89,800円
↑CDP-X33ES(1989年) 59,800円
この世代から、パルスD/Aコンバーターが採用された。
関連:[SONY] パルスD/Aコンバーターとは? [CDプレーヤー]
下位機種のCDP-9xxシリーズは、翌年(1990年)のCDP-991から、パルスD/Aコンバーター採用となった。
↑CDP-991(1990年) 39,800円
「マルチビット vs 1ビット」、キミの意見はどうかね?
関連:[SONY] CDP-597(1991年発売)のレビュー [CDプレーヤー]
関連:[SONY] CDP-997(1991年発売) レビュー [CDプレーヤー]
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