[SONY] ICF-M702V/ICF-M701のレビューと分解/修理 [通勤ラジオ]

2023年12月15日



ICF-M702Vは、1991年に発売された、ポケットサイズのTV/FM/AMラジオ。

ICF-M702V
↑ICF-M702V(税別9,000円)

ICF-M701はその兄弟機で、同年に発売された、ポケットサイズのFM/AMラジオ。

ICF-M701_ICF-M702V

SRF-M100同様、SONYのポケット/通勤ラジオのデザインが最も優れていた時のモデルである。

SRF-M100_カタログ

関連:[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]

日本製(MADE IN JAPAN)。

TV/FM/AMの全てがモノラル。

アナログTV終了によりTV受信は不可、FMは76-90MHzなのでFM補完放送には非対応である。

AM用のフェライトバーアンテナは、本体下部に格納されており、

ICF-M702V

その長さは約5cmだ。

ICF-M702V

本体前面はアルミだが、このアンテナのある底部に限っては、遮蔽とならないプラスチックになっている。

発売当初はプラスチックケース入りであったが、後になって、紙箱入りでの発売となった。

ICF-M702V
↑(左)プラスチックケースと紙箱(右)

途中での変更は、コストダウンの為だろう。

操作方法

取扱説明書は、SONYのサイトにはない。

関連:取扱説明書 ダウンロード (SONY)

「エリアコール」として、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡・新幹線の主要放送局が、予めプリセットされている。

エリアコールシリーズ

使い方は、同じ1991年に発売され、同じくエリアコール機能がある、SRF-M100を参考に。

SRF-M100

関連:[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]

ICF-M702Vの主な仕様

ICF-M702V_カタログ

受信周波数
・TV:1-13ch
・FM:76-90MHz
・AM:531-1710kHz(9kHzステップ、変更不可)

アンテナ
・TV/FM:イヤーレシーバーコードアンテナ
・AM:内蔵フェライトバーアンテナ

出力端子:イヤーレシーバー端子(超ミニジャック、φ2.5mm) 1個

実用最大出力:60mW(EIAJ)

電源:DC 3V、単四型乾電池×2本

パワーオートオフ機能:約90分

電池持続時間
・TV(スピーカー):約8時間
・TV(イヤホン):約11時間
・FM(スピーカー):約10時間
・FM(イヤホン):約19時間
・AM(スピーカー):約13時間
・AM(イヤホン):約27時間

最大外形寸法:約59×100×18.3mm (幅/高さ/厚さ) EIAJ

重量:約97g(乾電池含む、他の付属品含まず)

付属品
・ソニー乾電池 UM-4(NU)×2
・リモコン付イヤーレシーバー×1
・イヤーパッド×1
・キャリングケース×1
・取扱説明書・保証書・サービス窓口、ご相談窓口のご案内×1

MDR-ER701M

リモコン付イヤーレシーバー(MDR-ER701M)が付属する。

ICF-M702V

AREA Memory ボタン
 押し続けると、バンドが自動的に切り替わる。

MY Memory ボタン

VOL(音量)ツマミ
 本体のVOLで音が歪(ひず)まない程度の音量に合わせた後、リモコンのVOLで好みの音量に合わせる。
 本体スピーカーからの音量は、このツマミでは調節できない。

液晶などの表示部はない。

クリップはない。

プラグからリモコンまで約68cm、リモコンからイヤホンまで約41cm。

ケーブルは貧弱なので、丁寧に扱わないと、容易に断線するだろう。

イヤホンとリモコンの分離は不可。

リモコンに電源ボタンはないので、ラジオのON/OFFは不可。

リモコンのボリュームを最小にしても、イヤホンの音は無音にはできない。

ケーブルは経年劣化でベタつくので、アルコールなどで拭き取る必要があるが、それでも再びベタベタになるので、リモコンは使えないと思った方がよいだろう。

MDR-ER701Mは、別売もしていた。

MDR-ER701M

標準価格:2,500円(税別)

対応機種
・ICF-M701
・ICF-M702V

販売開始:1991年8月25日

なお、ステレオの兄弟機(後述)のリモコンは、当然ながら型式が違う(MDR-ER901)。

リモコン付イヤーレシーバー

イヤホン部に被せるスポンジは、100円ショップにあるだろう。

イヤホンでの使用

MDR-ER701Mが故障/紛失した場合でも、市販のイヤホンが使える。

イヤホン端子は3.5mmではなく2.5mm(超ミニプラグ)なので注意。

付属のリモコン付イヤーレシーバー以外を使う場合は、左側面にあるリモコンON/OFFスイッチをOFFにする。

イヤホンから音を出す場合は、左側面にある出力スイッチをイヤホンにする。

イヤホンを挿したまま、スピーカーから音を出す場合は、左側面にある出力先をスピーカーにする。

受信にアンテナ(=イヤホンケーブル)が必要なFMを、スピーカーから出す場合に有効。

イヤホンを挿していない場合は、出力スイッチは機能せず、必ずスピーカーから音が出る。

なので、「スピーカーから音が出ない!壊れてる!」ということはない。

超ミニプラグ

2.5mm(超ミニプラグ)のイヤホンは、今(2022年)でも売られている。

RE-04L

関連:ELPA ラジオイヤホン RE-04L

L型プラグで、ケーブル長は1mだ。

RE-04L

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SONY純正のイヤホンならME-L53があり、生産完了品だが、2022年時点でも新品が適価で入手できる。

ME-L53

関連:ME-L53

L型プラグで、ケーブル長は1mだ。

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突起型ではないインナーイヤー型なら、オーディオテクニカのDME-22だ。

DME-22

関連:DME-22

写真では両耳タイプに見えるが、片方だけである。

L型プラグで、ケーブル長は1.2mだ。

2.5mmのイヤホンは、以前は100円ショップにもあったのだが、さすがに需要がないのだろう、近年は見なくなった。

キャリングケースの劣化

付属のキャリングケースも劣化する。

ICF-M702V

内部に「謎の油」が発生し、ラジオ本体を入れると、それが付着することがある。

ICF-M702V

この場合は、重曹(炭酸水素ナトリウム)を溶かした水に1時間ほど漬けた後、しっかりと水洗いし、室内(日陰)で干すと良い。

陽の当たるところで干すと、急激に乾くため、ケースが大きく縮んでしまう。

キャリングケースは、本体を入れるとピチピチ(サイズに余裕がない)であり、経年劣化で裂けてしまうことがあるが、キャリングケースに入れておかないと、外装が傷だらけになってしまう。

前期型と後期型

前期型は、電源ボタンの緑色が凹んでいる。

後期型は、電源ボタンの緑色が凸っている。

前期型と後期型_ICF-M702V
↑左が前期型、右が後期型

前期型であっても後期型であっても、後述するコンデンサの交換が必要。

修理

保証書は、取扱説明書と一体。

保証期間は1年間。

補修用性能部品(製品の機能を維持するために必要な部品)の保有期間は、製造打ち切り後、最低6年。
当然ながら、2022年時点ではとっくに切れており、修理不可。

その他

やはりデザインが良い。

AMの受信感度は、この大きさでは悪くない。

FMの受信感度は、イヤホンケーブル必須だが、伸ばすと普通、本体に巻いた状態だとNG。

CXA1280N
SONY CXA1280N – AM/FM AUDIO SINGLE CHIP RECEIVER

液晶は光らないので、暗所では使いにくい。

手探りで操作できるよう、ボタンの位置を覚えておく必要がある。

オートパワーオフの90分はOFFにできない。

タイマーは1-180分(1分単位)で設定可能。

アラームも設定できるが、時間ズレや電池切れを考慮すると、今の時代、電波時計やスマホを使うべき。

電池の持ちは、3バンド中、最も長いAMでも

・AM(スピーカー):約13時間
・AM(イヤホン):約27時間

と長くはないので、災害時等の非常用途には向かない。

スピーカーの音量は、当方にとっては十分だが、スピーカーがφ3cmと小さいため、

ICF-M702V

音量を上げるとビビリ、歪みが出る。

なお、ボリュームを上げてもスピーカーの音量が小さい場合は、コンデンサの容量抜けである(後述)。

取扱説明書には、60秒以内に電池交換すると、設定が消えないとある。

入手の注意点

デザイン的にも、是非とも手に入れておきたいICF-M702Vであるが、以下の注意点が挙げられる。

本機の前面はアルミなので、スピーカーに凹みがあるものは避ける(修復が困難)。

キャリングケースに入れられていた個体は比較的美品となるが、以下のように本体上部は露出するので、

ICF-M702V

摩擦や衝突により、上部(特に角)にダメージを受けやすいので注意。

電源が入らない個体は、電池の液漏れによる端子不良をまず疑う(後述)。

この時期のSONYのラジオにはコンデンサ不良が多いので、交換が必要なことがある(後述)。

小型ラジオなので内部は細かく、分解及び修理には知識や手先の器用さ、根気だけでなく「眼力」も必要なので、自信がないなら避ける。

当然ながら、液晶が黒く漏れているものは論外(ニコイチ修理を除く)。

実用も考える場合、既に受信不可のTVは不要なので、同じデザインの2バンド(FM/AM)機であるICF-M701でも良いだろう。

兄弟機であるSRF-M901/SRF-M902Vは、スピーカーがない(イヤホン専用)ので注意。

30年以上が経過し、状態の良い個体は少なくなっているため、入手後は、100円ショップ等で袋を手に入れ、保護することをオススメする。

故障

本機は当初、電源が入らなかった。

電池ケースを覗くと、奥の端子に液漏れによる腐食があった。

腐食は強固で、綿棒を挿し込んで拭いたくらいでは除去できないので、分解に着手する。

分解と内部基板

本機の外装にはネジは使われておらず、全てハメコミ式である。

本体下部中央にある切れ込みにプラスチック製のヘラを挿して捩(ね)じり、徐々にこじ開けていく。

ICF-M702V

# 金属製のヘラは外装に傷が付くので避ける。

裏蓋は外れるも、電池蓋に阻止されてしまうだろう。

ここで電池蓋が処理できないようであれば、諦めることだ。

裏蓋が外れたら、2個のネジ(基板上の白矢印)と、中央少し下にある2箇所の黒いツメと、基板周囲のツメを外す。

ICF-M702V

基板を取り出す。

ICF-M702V

スピーカーと基板はケーブル接続ではないので、気にする必要はない。

電池の端子に、液漏れによる腐食がある。

ICF-M702V

ヤスリで腐食箇所を磨き、

ICF-M702V

コンタクトグリスを塗布、仮組して電池を入れると、電源が入った。

ICF-M702V

関連:コンタクトグリス(サンハヤト)

コンタクトグリスの塗布は、ヤスリで削ったことで錆びやすくなるため、その防止である。

だが、スピーカーから音は出るものの、明らかに音量が小さい。

過去の経験から、コンデンサの容量抜けと推測する。

コンデンサの交換

まずは、SRF-M100でも劣化していた、ELNAのコンデンサを疑う。

関連:[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]

ELNAのコンデンサ(緑色)は、以下の2個。

ICF-M702V

①左下:4V 470uF
②右上:4V 470uF

# u=μ=マイクロ

電子部品チェッカーで調べると、左下がダメだったので交換する。

耐圧が高いものでも良いが、高さが低いもの(=低背品)でないと、外装が閉じられないので注意。

本機には空きスペースがほとんどないため、SRF-M100のように、空きスペースに寝かして格納することも困難だ。

交換後も音が小さいので、ニチコンのコンデンサも調べる。

ICF-M702V

③上(C44):2V 220uF
④下(C42):4V 220uF

先に4Vの方を調べるも劣化小のため、2Vの方を調べると、完全にNG!

ICF-M702V

ということで交換するのだが、この場所(C44)に収まるコンデンサを持っているのか?

ICF-M702V
↑C44を外したところ

φ5mm、高さ5.7mmという小サイズは、手元にない…

以前、ICF-SW7600Gのコンデンサ交換時に取り出した6.3V 220uF(φ6.3mm、高さ6.9mm)が、手元にある220uFで最も小さいものだが、右隣にあるC45に当たってしまう。

ICF-M702V

仕方がないので、C45を右に倒し、強引に押し込んだ。

仮組して音を出すと、しっかり音量が出るようになったので、閉じて修理完了。

スピーカーからそれなりの音量が出ている個体でも、音が歪む場合は、コンデンサの容量抜けが疑われるので、調査すべきだろう。

調査すべきなのは、上述の通り、4V 470uFの2個と、2V 220uFの1個、4V 220uFの1個、合計4個だ。

SONYのこの時期(1990年代前半)のラジオは、とにかくコンデンサがダメ!

コンデンサの大きさ(2023年12月追記)

上述した4個(220uF×2個、470uF×2個)だが、220uF、470uFとも、φ6.3mm、高さ7.8mmのものが格納できることを、実際に作業して確認した。

全コンデンサ除去_ICF-M702V
↑4個のコンデンサを外したところ

・C44:2V 220uF → 16V品に交換
・C42:4V 220uF → 16V品に交換
・C47:4V 470uF → 10V品に交換
・C60:4V 470uF → 10V品に交換

全コンデンサ交換後_ICF-M702V
↑4個のコンデンサを交換したところ

高さが6mm以下の低背品は入手が困難だが、高さ7.8mm品なら、何とか手に入るだろう。

兄弟機

ICF-M702Vの兄弟機には、以下がある。

ICF-M701
・発売:1991年
・標準価格:8,000円(税別)
・3バンド(TV 1-3ch/FM/AM)

SRF-M901
・発売:1990年9月21日
・標準価格:9,800円(税別)
・2バンド(FM/AM)
FMステレオだが、本体にスピーカーがない。

SRF-M902V
・発売:1990年9月21日
・標準価格:10,800円(税別)
・3バンド(TV/FM/AM)
FMステレオだが、本体にスピーカーがない。

SRF-M901/SRF-M902Vの方が、ICF-M701/ICF-M702Vよりも先に出ている。

また、数年後の発売となるが、外観が類似のAMステレオ対応機であるSRF-M911も兄弟機と言えよう。

SRF-M911
・発売:1992年
・標準価格:11,800円(税別)
・3バンド(TV 1-3ch/FM/AM)
AMステレオ/FMステレオだが、本体にスピーカーがない。
・リモコン機能なし
・タイマー機能なし

SRF-M911_カタログ

SRF-M911に付属のイヤホンは、MDR-E532(φ2.5mmステレオ)である。

実用とするなら、スピーカーのある機種、つまりICF-M701かICF-M702Vということになるが、テレビのアナログ放送は既に終了しているので、ICF-M701がベストなのかは、各自の判断で。

カタログ掲載

1991年2月の「ラジオ/トランシーバー 総合カタログ」に「近日発売」として掲載されている。

ICF-M701_ICF-M702V_SRF-M901_SRF-M902V

このカタログには、上述の兄弟機の他、ICF-M7RV、ICF-M5R、ICF-55R、ICF-M17、ICF-M27V、ICR-EX25、ICF-EX35、ICF-EX55V、ICR-N7、ICR-N1、ICR-N30、ICR-N3、ICF-EX5、ICF-S14、ICR-S4、ICF-M400V、ICF-M300V、ICF-9740などが掲載されている。

ICR-N1
ICR-N1(短波専用)

1994年11月の「ラジオ/トランシーバー 総合カタログ」では旧モデルとして掲載されている。

よって、約3年程度、販売されていたと思われる。

1994年11月のカタログには、以下が掲載されているが、

SRF-SX100RV
・標準価格:13,800円(税別)
・TV(1-3ch)/FMステレオ/AMステレオ
・スピーカーなし
・巻き取り式ヘッドホン

SRF-SX905V
・標準価格:9,400円(税別)
・TV(1-3ch)/FMステレオ/AM
・スピーカーあり
・7局プリセットが可能
・イヤホンジャック:2.5mm

ICF-SX705V
・標準価格:8,400円(税別)
・TV(1-3ch)/FM/AM
・スピーカーあり
・7局プリセットが可能
・イヤホンジャック:2.5mm

# 1994年(平成6年)の消費税率は3%、1997年(平成9年)4月1日から5%に。

この世代を含め、これ以降の通勤ラジオのデザインは好みではない…

他には、SRF-M100、SRF-AX15、ICF-780、SRF-A300ICF-EX5ICR-S71などが、このカタログには掲載されている。

1992年3月15日に始まったAMステレオ放送が、広がろうとしていた時だ。

2007年4月からAMステレオ放送の終了が相次ぎ、2022年5月時点で残っているのは、わずか3局だけである。

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Posted by nakamura