[SONY] ICF-M702V/ICF-M701のレビューと分解/修理 [通勤ラジオ]
ICF-M702Vは、1991年に発売された、ポケットサイズのTV/FM/AMラジオ。
↑ICF-M702V(税別9,000円)
ICF-M701はその兄弟機で、同年に発売された、ポケットサイズのFM/AMラジオ。
SRF-M100同様、SONYのポケット/通勤ラジオのデザインが最も優れていた時のモデルである。
関連:[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]
日本製(MADE IN JAPAN)。
TV/FM/AMの全てがモノラル。
アナログTV終了によりTV受信は不可、FMは76-90MHzなのでFM補完放送には非対応である。
AM用のフェライトバーアンテナは、本体下部に格納されており、
その長さは約5cmだ。
本体前面はアルミだが、このアンテナのある底部に限っては、遮蔽とならないプラスチックになっている。
発売当初はプラスチックケース入りであったが、後になって、紙箱入りでの発売となった。
↑(左)プラスチックケースと紙箱(右)
途中での変更は、コストダウンの為だろう。
操作方法
取扱説明書は、SONYのサイトにはない。
関連:取扱説明書 ダウンロード (SONY)
「エリアコール」として、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡・新幹線の主要放送局が、予めプリセットされている。
使い方は、同じ1991年に発売され、同じくエリアコール機能がある、SRF-M100を参考に。
関連:[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]
ICF-M702Vの主な仕様
受信周波数
・TV:1-13ch
・FM:76-90MHz
・AM:531-1710kHz(9kHzステップ、変更不可)
アンテナ
・TV/FM:イヤーレシーバーコードアンテナ
・AM:内蔵フェライトバーアンテナ
出力端子:イヤーレシーバー端子(超ミニジャック、φ2.5mm) 1個
実用最大出力:60mW(EIAJ)
電源:DC 3V、単四型乾電池×2本
パワーオートオフ機能:約90分
電池持続時間
・TV(スピーカー):約8時間
・TV(イヤホン):約11時間
・FM(スピーカー):約10時間
・FM(イヤホン):約19時間
・AM(スピーカー):約13時間
・AM(イヤホン):約27時間
最大外形寸法:約59×100×18.3mm (幅/高さ/厚さ) EIAJ
重量:約97g(乾電池含む、他の付属品含まず)
付属品
・ソニー乾電池 UM-4(NU)×2
・リモコン付イヤーレシーバー×1
・イヤーパッド×1
・キャリングケース×1
・取扱説明書・保証書・サービス窓口、ご相談窓口のご案内×1
MDR-ER701M
リモコン付イヤーレシーバー(MDR-ER701M)が付属する。
AREA Memory ボタン
押し続けると、バンドが自動的に切り替わる。
MY Memory ボタン
VOL(音量)ツマミ
本体のVOLで音が歪(ひず)まない程度の音量に合わせた後、リモコンのVOLで好みの音量に合わせる。
本体スピーカーからの音量は、このツマミでは調節できない。
液晶などの表示部はない。
クリップはない。
プラグからリモコンまで約68cm、リモコンからイヤホンまで約41cm。
ケーブルは貧弱なので、丁寧に扱わないと、容易に断線するだろう。
イヤホンとリモコンの分離は不可。
リモコンに電源ボタンはないので、ラジオのON/OFFは不可。
リモコンのボリュームを最小にしても、イヤホンの音は無音にはできない。
ケーブルは経年劣化でベタつくので、アルコールなどで拭き取る必要があるが、それでも再びベタベタになるので、リモコンは使えないと思った方がよいだろう。
MDR-ER701Mは、別売もしていた。
標準価格:2,500円(税別)
対応機種
・ICF-M701
・ICF-M702V
販売開始:1991年8月25日
なお、ステレオの兄弟機(後述)のリモコンは、当然ながら型式が違う(MDR-ER901)。
イヤホン部に被せるスポンジは、100円ショップにあるだろう。
イヤホンでの使用
MDR-ER701Mが故障/紛失した場合でも、市販のイヤホンが使える。
イヤホン端子は3.5mmではなく2.5mm(超ミニプラグ)なので注意。
付属のリモコン付イヤーレシーバー以外を使う場合は、左側面にあるリモコンON/OFFスイッチをOFFにする。
イヤホンから音を出す場合は、左側面にある出力スイッチをイヤホンにする。
イヤホンを挿したまま、スピーカーから音を出す場合は、左側面にある出力先をスピーカーにする。
受信にアンテナ(=イヤホンケーブル)が必要なFMを、スピーカーから出す場合に有効。
イヤホンを挿していない場合は、出力スイッチは機能せず、必ずスピーカーから音が出る。
なので、「スピーカーから音が出ない!壊れてる!」ということはない。
超ミニプラグ
2.5mm(超ミニプラグ)のイヤホンは、今(2022年)でも売られている。
L型プラグで、ケーブル長は1mだ。
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SONY純正のイヤホンならME-L53があり、生産完了品だが、2022年時点でも新品が適価で入手できる。
関連:ME-L53
L型プラグで、ケーブル長は1mだ。
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突起型ではないインナーイヤー型なら、オーディオテクニカのDME-22だ。
関連:DME-22
写真では両耳タイプに見えるが、片方だけである。
L型プラグで、ケーブル長は1.2mだ。
2.5mmのイヤホンは、以前は100円ショップにもあったのだが、さすがに需要がないのだろう、近年は見なくなった。
キャリングケースの劣化
付属のキャリングケースも劣化する。
内部に「謎の油」が発生し、ラジオ本体を入れると、それが付着することがある。
この場合は、重曹(炭酸水素ナトリウム)を溶かした水に1時間ほど漬けた後、しっかりと水洗いし、室内(日陰)で干すと良い。
陽の当たるところで干すと、急激に乾くため、ケースが大きく縮んでしまう。
キャリングケースは、本体を入れるとピチピチ(サイズに余裕がない)であり、経年劣化で裂けてしまうことがあるが、キャリングケースに入れておかないと、外装が傷だらけになってしまう。
前期型と後期型
前期型は、電源ボタンの緑色が凹んでいる。
後期型は、電源ボタンの緑色が凸っている。
↑左が前期型、右が後期型
前期型であっても後期型であっても、後述するコンデンサの交換が必要。
修理
保証書は、取扱説明書と一体。
保証期間は1年間。
補修用性能部品(製品の機能を維持するために必要な部品)の保有期間は、製造打ち切り後、最低6年。
当然ながら、2022年時点ではとっくに切れており、修理不可。
その他
やはりデザインが良い。
AMの受信感度は、この大きさでは悪くない。
FMの受信感度は、イヤホンケーブル必須だが、伸ばすと普通、本体に巻いた状態だとNG。
SONY CXA1280N – AM/FM AUDIO SINGLE CHIP RECEIVER
液晶は光らないので、暗所では使いにくい。
手探りで操作できるよう、ボタンの位置を覚えておく必要がある。
オートパワーオフの90分はOFFにできない。
タイマーは1-180分(1分単位)で設定可能。
アラームも設定できるが、時間ズレや電池切れを考慮すると、今の時代、電波時計やスマホを使うべき。
電池の持ちは、3バンド中、最も長いAMでも
・AM(スピーカー):約13時間
・AM(イヤホン):約27時間
と長くはないので、災害時等の非常用途には向かない。
スピーカーの音量は、当方にとっては十分だが、スピーカーがφ3cmと小さいため、
音量を上げるとビビリ、歪みが出る。
なお、ボリュームを上げてもスピーカーの音量が小さい場合は、コンデンサの容量抜けである(後述)。
取扱説明書には、60秒以内に電池交換すると、設定が消えないとある。
入手の注意点
デザイン的にも、是非とも手に入れておきたいICF-M702Vであるが、以下の注意点が挙げられる。
本機の前面はアルミなので、スピーカーに凹みがあるものは避ける(修復が困難)。
キャリングケースに入れられていた個体は比較的美品となるが、以下のように本体上部は露出するので、
摩擦や衝突により、上部(特に角)にダメージを受けやすいので注意。
電源が入らない個体は、電池の液漏れによる端子不良をまず疑う(後述)。
この時期のSONYのラジオにはコンデンサ不良が多いので、交換が必要なことがある(後述)。
小型ラジオなので内部は細かく、分解及び修理には知識や手先の器用さ、根気だけでなく「眼力」も必要なので、自信がないなら避ける。
当然ながら、液晶が黒く漏れているものは論外(ニコイチ修理を除く)。
実用も考える場合、既に受信不可のTVは不要なので、同じデザインの2バンド(FM/AM)機であるICF-M701でも良いだろう。
兄弟機であるSRF-M901/SRF-M902Vは、スピーカーがない(イヤホン専用)ので注意。
30年以上が経過し、状態の良い個体は少なくなっているため、入手後は、100円ショップ等で袋を手に入れ、保護することをオススメする。
故障
本機は当初、電源が入らなかった。
電池ケースを覗くと、奥の端子に液漏れによる腐食があった。
腐食は強固で、綿棒を挿し込んで拭いたくらいでは除去できないので、分解に着手する。
分解と内部基板
本機の外装にはネジは使われておらず、全てハメコミ式である。
本体下部中央にある切れ込みにプラスチック製のヘラを挿して捩(ね)じり、徐々にこじ開けていく。
# 金属製のヘラは外装に傷が付くので避ける。
裏蓋は外れるも、電池蓋に阻止されてしまうだろう。
ここで電池蓋が処理できないようであれば、諦めることだ。
裏蓋が外れたら、2個のネジ(基板上の白矢印)と、中央少し下にある2箇所の黒いツメと、基板周囲のツメを外す。
基板を取り出す。
スピーカーと基板はケーブル接続ではないので、気にする必要はない。
電池の端子に、液漏れによる腐食がある。
ヤスリで腐食箇所を磨き、
コンタクトグリスを塗布、仮組して電池を入れると、電源が入った。
コンタクトグリスの塗布は、ヤスリで削ったことで錆びやすくなるため、その防止である。
だが、スピーカーから音は出るものの、明らかに音量が小さい。
過去の経験から、コンデンサの容量抜けと推測する。
コンデンサの交換
まずは、SRF-M100でも劣化していた、ELNAのコンデンサを疑う。
関連:[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]
ELNAのコンデンサ(緑色)は、以下の2個。
①左下:4V 470uF
②右上:4V 470uF
# u=μ=マイクロ
電子部品チェッカーで調べると、左下がダメだったので交換する。
耐圧が高いものでも良いが、高さが低いもの(=低背品)でないと、外装が閉じられないので注意。
本機には空きスペースがほとんどないため、SRF-M100のように、空きスペースに寝かして格納することも困難だ。
交換後も音が小さいので、ニチコンのコンデンサも調べる。
③上(C44):2V 220uF
④下(C42):4V 220uF
先に4Vの方を調べるも劣化小のため、2Vの方を調べると、完全にNG!
ということで交換するのだが、この場所(C44)に収まるコンデンサを持っているのか?
↑C44を外したところ
φ5mm、高さ5.7mmという小サイズは、手元にない…
以前、ICF-SW7600Gのコンデンサ交換時に取り出した6.3V 220uF(φ6.3mm、高さ6.9mm)が、手元にある220uFで最も小さいものだが、右隣にあるC45に当たってしまう。
仕方がないので、C45を右に倒し、強引に押し込んだ。
仮組して音を出すと、しっかり音量が出るようになったので、閉じて修理完了。
スピーカーからそれなりの音量が出ている個体でも、音が歪む場合は、コンデンサの容量抜けが疑われるので、調査すべきだろう。
調査すべきなのは、上述の通り、4V 470uFの2個と、2V 220uFの1個、4V 220uFの1個、合計4個だ。
SONYのこの時期(1990年代前半)のラジオは、とにかくコンデンサがダメ!
コンデンサの大きさ(2023年12月追記)
上述した4個(220uF×2個、470uF×2個)だが、220uF、470uFとも、φ6.3mm、高さ7.8mmのものが格納できることを、実際に作業して確認した。
↑4個のコンデンサを外したところ
・C44:2V 220uF → 16V品に交換
・C42:4V 220uF → 16V品に交換
・C47:4V 470uF → 10V品に交換
・C60:4V 470uF → 10V品に交換
↑4個のコンデンサを交換したところ
高さが6mm以下の低背品は入手が困難だが、高さ7.8mm品なら、何とか手に入るだろう。
兄弟機
ICF-M702Vの兄弟機には、以下がある。
ICF-M701
・発売:1991年
・標準価格:8,000円(税別)
・3バンド(TV 1-3ch/FM/AM)
SRF-M901
・発売:1990年9月21日
・標準価格:9,800円(税別)
・2バンド(FM/AM)
・FMステレオだが、本体にスピーカーがない。
SRF-M902V
・発売:1990年9月21日
・標準価格:10,800円(税別)
・3バンド(TV/FM/AM)
・FMステレオだが、本体にスピーカーがない。
SRF-M901/SRF-M902Vの方が、ICF-M701/ICF-M702Vよりも先に出ている。
また、数年後の発売となるが、外観が類似のAMステレオ対応機であるSRF-M911も兄弟機と言えよう。
SRF-M911
・発売:1992年
・標準価格:11,800円(税別)
・3バンド(TV 1-3ch/FM/AM)
・AMステレオ/FMステレオだが、本体にスピーカーがない。
・リモコン機能なし
・タイマー機能なし
SRF-M911に付属のイヤホンは、MDR-E532(φ2.5mmステレオ)である。
実用とするなら、スピーカーのある機種、つまりICF-M701かICF-M702Vということになるが、テレビのアナログ放送は既に終了しているので、ICF-M701がベストなのかは、各自の判断で。
カタログ掲載
1991年2月の「ラジオ/トランシーバー 総合カタログ」に「近日発売」として掲載されている。
このカタログには、上述の兄弟機の他、ICF-M7RV、ICF-M5R、ICF-55R、ICF-M17、ICF-M27V、ICR-EX25、ICF-EX35、ICF-EX55V、ICR-N7、ICR-N1、ICR-N30、ICR-N3、ICF-EX5、ICF-S14、ICR-S4、ICF-M400V、ICF-M300V、ICF-9740などが掲載されている。
↑ICR-N1(短波専用)
1994年11月の「ラジオ/トランシーバー 総合カタログ」では旧モデルとして掲載されている。
よって、約3年程度、販売されていたと思われる。
1994年11月のカタログには、以下が掲載されているが、
SRF-SX100RV
・標準価格:13,800円(税別)
・TV(1-3ch)/FMステレオ/AMステレオ
・スピーカーなし
・巻き取り式ヘッドホン
SRF-SX905V
・標準価格:9,400円(税別)
・TV(1-3ch)/FMステレオ/AM
・スピーカーあり
・7局プリセットが可能
・イヤホンジャック:2.5mm
ICF-SX705V
・標準価格:8,400円(税別)
・TV(1-3ch)/FM/AM
・スピーカーあり
・7局プリセットが可能
・イヤホンジャック:2.5mm
# 1994年(平成6年)の消費税率は3%、1997年(平成9年)4月1日から5%に。
この世代を含め、これ以降の通勤ラジオのデザインは好みではない…
他には、SRF-M100、SRF-AX15、ICF-780、SRF-A300、ICF-EX5、ICR-S71などが、このカタログには掲載されている。
1992年3月15日に始まったAMステレオ放送が、広がろうとしていた時だ。
2007年4月からAMステレオ放送の終了が相次ぎ、2022年5月時点で残っているのは、わずか3局だけである。
関連:[SONY] ST-S222ESAのレビュー [チューナー]
関連:[SONY] ICR-S71の修理(電源SW/バリコン/ボリューム) [ラジオ]
関連:[SONY] ST-S510(FM/AMチューナー)レビュー [AMステレオ対応]
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