[SONY] SRF-M100の修理と使用方法 [AMステレオ対応]
解説動画
SRF-M100
SONYのAM/FMラジオである、SRF-M100。
1991年に発売されたラジオで、SONYのAMステレオ対応ラジオの「1号機」である。
当時の価格はなんと、14,800円!
当然、日本製「MADE IN JAPAN」である。
10年くらい製造されていたらしいが…(1994年のラジオカタログの掲載は確認済)。
単三電池2本で動くが、古い機種のためか、細めの単三電池でないと閊(つか)えてしまう。
充電式電池を使う場合、eneloopは太くてダメな場合がある。
ダイソーに売られているニッケル水素電池であるReVOLTES(レボルテス)は細いので、本機には向くだろうが、それでも若干太く、閊(つか)えてしまうことがある。
電池のサイズは規格で決まっているはずだが、昔と今では「遊び」に差があるので、このような面倒なことが生じる。
故障
電池を入れると、液晶が点き、電源も入る。
ボタン操作も可能だが、何故か音が全く出ない。
スピーカーだけでなく、ヘッドホンからも音が出ない。
コンデンサの液漏れと、漏れ出た電解液で基板上のパターンが切れるのが原因だ。
パターンが切れることで、ラジオ部には通電しないが、マイコンには通電されるので、液晶は点いて操作も可能だが、音が出ないのだ。
ということで、分解する。
以下、動画も参照。
プラスドライバー(#1)で、ケースを開ける。
外すネジには印があるので迷わないが、本体下部のツメに注意。
裏蓋のツメが付いている部分を押し込みながら外す。
裏蓋を外したら、基板を止めているネジやツメ、コネクタを外し、基板を取り出す。
基板裏面。
係るネジとツメを外しても基板が外れない場合、以下の黒いシートとシールドケースが貼り付いているので、力を入れて剥がす必要がある。
以下は基板図である(海外版なので少し違う)。
中波用のバーアンテナの長さは、約10cm。
該当するコンデンサは、以下の4個。
・青丸:4V 470uF×2個(ELNA)
・赤丸:4V 220uF×2個(nichicon)
(u=µ=マイクロ)
これらを外していく。
470uFの片方は、隣のシールドケースに通じており、熱が奪われてなかなか溶けない。
400-450度が出せるハンダごてが必要だろう。
手っ取り早くやらないと、パターンを剥がしたり、周囲のパーツを熱で破壊してしまう。
4個を外したところが、以下。
以下の2点(緑丸)が導通しているか確認する。
切れている場合、ポリウレタン銅線(UEW線)などでつないでおく。
ほとんどの場合、220uFの液漏れによりココの導通が切れているが、導通がなくてもココの接続は不要。
交換用のコンデンサであるが、手持ちには4Vのものがなかったので、16Vのアルミ電解コンデンサを使った。
アルミ電解コンデンサには極性があるので、間違わないように。
基板表側に白い丸が付けられている方が、マイナスである。
例えば上の写真、C72は、左側がマイナスである。
物理的なサイズが大きいと格納できないので、大きさには注意。
手持ちの220uFは大きさ的に問題なかったが、470uFは大きく、そのままでは格納できないので、脚を曲げて格納した。
# 背の低いコンデンサ(=低背品)を使うことで、脚を曲げないで格納できた(後述)。
4個をハンダ付けしたら、6本脚(トランジスタ)の右下と、コネクタの左端をポリウレタン銅線(UEW線)でつなぐ。
6本脚:Q10 8-729-402-16 TRANSISTOR XN4608
↑赤と緑をつなぐ(赤は片方でよい)
関連:ポリウレタン銅線
↑右側
↑左側
6本脚へのハンダ付けは、かなり微細なので注意!
短時間で行わないと、熱で6本脚を破壊してしまう。
コンデンサの交換と断線接続が済んだら、仮組みし、電池を入れ、音が出るのを確認する。
問題がなければ、ケースを閉じて修理完了。
液晶画面にホコリが目に付く場合は、さらに分解してもう一枚の基板も外し、液晶画面と内窓を拭いておく。
スピーカーにつながるバネがあるので、紛失しないように注意。
コンデンサをチェック
除去したコンデンサを見てみると、220uFは漏れているが、
470uFは漏れていない?
電子部品チェッカーで調べてみると、
↑220uF①
↑220uF②
220uFは2個ともダメだが、
↑470uF①
↑470uF②
470uFは、両方とも問題なさそう?
なので、交換するなら、220uFの方だけでもOKかもしれない。
追記:この個体では470uFは問題なかったが、他機では470uFも容量が抜けてダメになっていた。
470uFがダメな場合、220uFの交換だけでも音は出るようになるが、音が小さい。
なので、4個全ての交換が好ましい。
2個だけ交換して音が小さい場合、再度開けて作業をすることになり、二度手間になるからね。
なお、元の470uFのサイズは、直径8mm、高さ6mm。
チップ型や表面実装型を除き、このサイズは手に入らないのではないかな。
なので、上述のように寝かせて格納させることになる。
当方、SRF-M100を2台持っており、同様の修理を行った、動作品である。
コンデンサの大きさ(2023年12月追記)
上述した4個(220uF×2個、470uF×2個)だが、220uF、470uFとも、φ6.3mm、高さ7.8mmのものが格納できることを、実際に作業して確認した。
・4V 470uF → 10V品に交換
・4V 220uF → 16V品に交換
この大きさなら、脚を曲げずに格納することが可能。
高さが6mm以下の低背品は入手が困難だが、高さ7.8mm品なら、何とか手に入るだろう。
まぁ、見えない部分なので、気分の問題と言えるのだが、このような作業をする人間にとっては、そういうところが重要なんだろう?
時刻設定
時計は、電源を切った状態(液晶が時計表示の状態)で、底面の「ENTER/CLOCK」を押しながら、側面の「TUNE/TIME SET」で合わせる。
本機は、電池を外すと、時刻を忘れてしまう。
極めて短時間なら忘れないので、電池を外す前に、新しい電池を用意し、即座に入れ替えられる準備をしておくとよい。
地域選択
前面右上の緑の突起を押しながらボタンを上にスライドさせると、電源が入る。
前面の「AREA」ボタンを押すと、地域が選択できる。
・SPO(札幌)
・TYO(東京)
・NGO(名古屋)
・OSA(大阪)
・FUK(福岡)
・JR(新幹線)
選択後、前面の「AREA MEMORY」を押すと、その地域の局が順に選ばれる。
バンドを変えるには、前面の「BAND」ボタンを押し同様に「AREA MEMORY」で選局する。
「JR」はFMのみであり、BAND変更は不可。
バンド後切替は、「AM」「FM/TV」だが、当然ながら、アナログ放送が終了した現在に於いては、TVは受信できない。
また、後述するように、FM補完放送には非対応である。
「AREA MEMORY」の内容は決まっており、追加や削除はできない。
自分好みにするには「MY MEMORY」を選択し、登録する必要があるが、電池交換の際に消えるので、当方は使っていない。
AREA MEMORY
1991年のラジオなので、新興の局や、コミュニティーFMの類はない。
SPO(札幌)
・567kHz NHK第1放送
・747kHz NHK第2放送
・1287kHz 北海道放送(HBC) AMステレオ放送終了(2010年2月28日)
・1440kHz STVラジオ(札幌テレビ放送) AMステレオ放送終了(2010年3月28日)
・80.4MHz AIR-G'(エフエム北海道)
・85.2MHz NHK FM 北海道
TYO(東京)
・594kHz NHK第1放送
・693kHz NHK第2放送
・810kHz AFN Tokyo(米軍第10報道分遣隊)
・954kHz TBSラジオ(東京放送) AMステレオ放送終了(2011年1月30日)
・1134kHz 文化放送(NCB) AMステレオ放送終了(2012年2月5日)
・1242kHz ニッポン放送(LF) AMステレオ放送実施中(2022年1月時点)
・1422kHz ラジオ日本(RF)
・78.0MHz bayfm
・78.6MHz FM-FUJI(エフエム富士)
・79.5MHz NACK5
・80.0MHz TOKYO FM(エフエム東京)
・81.3MHz J-WAVE
・82.5MHz NHK FM 東京
・84.7MHz Fm yokohama(横浜エフエム放送)
NGO(名古屋)
・729kHz NHK第1放送
・909kHz NHK第2放送
・1053kHz 中部日本放送(CBC) AMステレオ放送終了(2021年1月10日)
・1332kHz 東海ラジオ放送 AMステレオ放送終了(2012年5月13日)
・1431kHz 岐阜放送(GBS)
・78.9MHz レディオキューブ(三重エフエム放送)
・80.7MHz FM AICHI(エフエム愛知)
・82.5MHz NHK FM 愛知
OSA(大阪)
・558kHz ラジオ関西
・666kHz NHK第1放送
・828kHz NHK第2放送
・1008kHz ABCラジオ(朝日放送) AMステレオ放送終了(2010年3月14日)
・1143kHz KBS京都(京都放送)
・1179kHz MBSラジオ(毎日放送) AMステレオ放送終了(2010年2月28日)
・1314kHz ラジオ大阪(OBC) AMステレオ放送実施中(2022年1月時点)
・80.2MHz FM802
・85.1MHz fm osaka(エフエム大阪)
・86.5MHz NHK FM 兵庫
・88.1MHz NHK FM 大阪
・89.4MHz α-STATION(エフエム京都)
・89.9MHz Kiss FM KOBE(兵庫エフエム放送)
FUK(福岡)
・612kHz NHK第1放送
・1017kHz NHK第2放送
・1278kHz RKB毎日放送 AMステレオ放送終了(2010年5月30日)
・1413kHz 九州朝日放送(KBC) AMステレオ放送終了(2007年3月31日)
・80.7MHz FM FUKUOKA(エフエム福岡)
・84.8MHz NHK FM 福岡
JR(新幹線)
・76.0MHz
・76.6MHz
・77.5MHz
・78.8MHz
・79.6MHz
新幹線の車内放送は、今も行われているのだろうか?
MY MEMORY
本体の電源をONにし、BAND(AM/FM)を選択。
本体左側面にある+と-のボタンで選局(受信)し、底面にある「ENTER/CLOCK」ボタンを3秒長押しすると、「MY」と「番号」が点滅する。
前面の「MY MEMORY」ボタンを押し、メモリーしたい1-7の番号を選び、「ENTER/CLOCK」ボタンを押して、その番号に登録する。
番号は1-7まであるので、7局登録可能。
AMとFMは混ぜられる。
登録局の上書きは可能だが、削除はできない。
タイマー
タイマーは、電源ON後、設定した時間が経過したら、電源が切れる機能。
底面の「TIMER」ボタンを長押しすると、「180(分)」が表示されるので、長押しした状態で、左側面にある+と-のボタンで時間を選択する。
設定できるのは、1-180分で、1分単位。
「TIMER」ボタンの短押しで、タイマーのON/OFFができる。
タイマーON時は、液晶に時計マークが出る。
なお、タイマーを設定しなくても、「オートOFF機能」により、90分で電源が切れてしまう。
タイマーで90分以上に設定することで「オートOFF機能」を強引に回避できるが…
AMステレオ放送
1992年3月15日に鳴り物入りで始まったAMステレオ放送であるが、後にどうなったのかは、このサイトを訪問しているようなキミたち(上から目線)には、説明不要だろう。
「FMと比べても遜色のない音質」:嘘!
「AMにマルチバス現象(雑音)がない」というのは、AMが振幅変調であるから(FMは周波数変調なので、反射波等でマルチバス雑音が生じる)。
AMステレオ放送は、対応ラジオが高い、音質が良くない、ステレオだとスピーカーが2個 or ヘッドホンが必要で面倒(滅)
AMステレオ放送実施局
AMステレオ放送は滅びていき、2022年1月時点で、わずか3局しか残っていない。
↑AMステレオ放送実施局(2022年1月時点)
↑過去に実施されていた放送局
残った3局も、機材更新で終了となるだろうが…
当方の環境では、ラジオ大阪が受信できるが、修理後の本機でステレオ受信できた。
AM/FMのモノラル/ステレオは、本体裏面のスイッチで切り替える。
本体のスピーカーは1つしなかくモノラルであり、ステレオで受信できていても、本体前面のSTEREOランプは、ヘッドホンを挿した時しか点灯しない。
本機は、TVの1-3chが受信可能だが、FM補完放送には非対応。
90MHz以上はTVになってしまい、任意の周波数にできないためである。
感度であるが、AMは10cmのフェライトバーアンテナもあって並以上だが、FMはロッドアンテナを引き出してMAXに伸ばしても悪いので、並に遠く及ばず失格、いわゆる「関●学院大学」レベルである。
初期型と後期型
SRF-M100には初期型と後期型があり、本体やキャリングケースの差異がある。
初期型
・右側面の「VOLUME」と「PHONES」が、白のシルク印刷
・左側面のボタンが+/-表示のみ
後期型:右側面の「VOLUME」と「PHONES」が、立体文字(底面のALARM/ENTER/TIMERと同じ)
・左側面のボタンが+/-表示と、各々6点の突起(滑り止め)
キャリングケースも異なる。
・前期型:包み型で、窓ナシ
・後期型:筒形(横差仕様)で、窓アリ
窓アリの方は、窓の透明材が劣化でベタつくので注意。
本機の前面はアルミ外装で、高級感のある外観だが、ケースに入れておかないと、傷だらけになる。
入手時にケースがないなら、100円ショップなどでケースを探し、収納しておきたい。
収納した場合でも、アルミ外装が凹まないよう、取り扱いには注意。
残ったAMステレオ3局、次の廃止はどこか、最後まで残るのはどこか…
直近の廃止は、CBCラジオ(中京広域圏)であり、1992年4月4日に開始、2021年1月10日に廃止。
FM補完放送が進められており、AM放送廃止の話もある中、今さらAMステレオでもなかろう?
前期型と後期型の違い
・本体右側面の「PHONE」と「VOLUME」が印刷(前期型)か、浮文字(後期型)か
・本体左側面の「TUNE/TIME SET」のボタンの形状
・ボリュームの回転時の固さ(後期型が固い)
・スピーカー(前期型の方が音が良い)
・キャリングケース(先述)
電池寿命
本機の電池寿命は以下のように短いので、災害時等の非常用途には向かない。
イヤホン使用時
FM:35時間
AM:45時間
スピーカー使用時
FM:22時間
AM:26時間
スピーカーで短いのは分かるにしても、イヤホンでも短いのは?
これを非常用途に使うつもりなら、予備の電池を大量に保管しておく必要があろう。
90分で勝手に切れる「オートOFF機能」があるが、邪魔?
SRF-AX15
AMステレオ放送対応のポータブルラジオには、アナログチューニングのSRF-AX15もある。
電子部品チェッカー
コンデンサの不良は目視では分からないことも多いので、以下の電子部品チェッカーがあると便利。
コンデンサだけでなく、抵抗やトランジスタ、ダイオード等も調べられる。
ディスカッション
コメント一覧
修理 対応策参考になりました。
有難うございました。ジャンパー線の対応策パターン切れとのことですが写真の追加あればありがたいです。
本当にありがとうございました。