カセットデッキで録音図書を作る
録音図書対応機種
・TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産)
・TC-RX2000T(2003年発売)
この2機種は、全国点字図書館協議会(現:全国視覚障害者情報提供施設協会)推奨のカセットデッキだが、マイク入力等の機能があれば、他のカセットデッキでもできる。
デッキには素早い動作が求められるので、メカデッキが新しくなったTC-RX70~TC-RX715あたりがよいだろう。
・TC-RX70(1990年)
・TC-RX77(1991年)
・TC-RX79(1992年)
・TC-RX711(1993年)
・TC-RX715(1994年) ←TC-RX1000Tの元になった機種(兄弟機)
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
マイク入力端子とヘッドホン端子、ボリュームは必須。
マイク端子の注意
マイク端子やヘッドホン端子は3.5mmではなく6.35mmなので、細い場合は、以下で変換できる。
関連:標準ジャック変換
TC-RX1000Tの場合、裏面のステレオ/モノラル切替スイッチにも注意。
これがモノラルになっていると、当然ながらステレオ録音ができなくなる。
前面のマイク端子には、LEFT(MONO)とRIGHTの端子がある。
その表記から、LEFTにだけ挿すと自動でモノラルになるのかと思いきや、モノラルのマイクをLEFT(MONO)だけに挿した場合、裏面のステレオ/モノラル切り替えスイッチもモノラルにしないと、左だけしか音が入らないので注意。
関連:[SONY] TC-RX715とTC-RX1000Tの比較 [兄弟機]
TC-RX2000Tの場合は、マイク端子は1つしかないので、単にモノラルマイクを挿すだけでよく、裏面に切替スイッチもない。
関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]
録音レベルをできるだけ高く!
歪(ひず)まない範囲で、録音レベルをできるだけ大きくすることが重要。
録音レベルが低いと、「シャー」というヒスノイズに音声が埋もれてしまう。
録音レベルの調整や確認(メーターの目視)ができないラジカセは不適(=概してレベルが低すぎる仕上がりとなる)。
質の低いテープはヒスノイズが多く、レベルが低く録音されてしまうので避けること。
録音レベルが高すぎると、過大な音は歪んで録音されてしまう。
一般的に、高域及び低域の信号を歪が少なく録音するには、ソースの信号レベルを中域の信号に比べて低くする。
高い周波数及び低い周波数成分の多い曲の場合、録音レベルを上げすぎてはならない。
より良い録音をするためには、再生音を自分の耳で確かめるなど、聴感上の音も重要だ。
TC-RX1000Tの場合は、自動で録音レベルを調整してくれるARL(Auto Rec Level)機能があるが、低めのレベルになるだけでなく、一度下げられたレベルは上がらないので、録音図書では使うべきではない。
ARLを解除するには、手でREC LEVELツマミを回すだけでよい。
関連:カセットデッキでの録音レベルの調節/調整と、ARL(Auto Rec Level)について
TC-RX2000Tの場合は、ARL(Auto Rec Level)機能はない。
途中から録音する(後追い録音)
優秀なアナウンサーのように、読み間違いなく一発で読めるならただ録音を開始するだけで済むが、それは困難なので、以下のような操作が必要となる。
カセットテープは、細い帯(おび)が流れるという完全にアナログな仕組みなので、音声をパソコンに取り込んで編集するような人にとっては、考えられないようなアナログぶりである。
途中から録音する(後追い録音)
1.巻き戻しボタンを押してテープを少し巻き戻し、停止ボタンを押して止める。
2.再生ボタンを押してヘッドホンから聞こえてくる自分の声に合わせて一緒に読み進む。
3.正しく録音されている文章の終わりで、録音ボタンと再生ボタンを同時に押し、そのまま読み続けながら、静かにボタンから手を離す。
途中から録音をやり直す(ポーズ録音)
1.巻き戻しボタンを押してテープを少し巻き戻し、停止ボタンを押して止める。
2.再生ボタンを押してテープを再生させ、正しく録音されている文章の終わりで停止ボタンを押し、テープを止める。
3.録音ボタンを押して、録音ポーズ(待機)状態にする。
4.テープを止めた箇所の少し前から読み始め、訂正箇所に来たらポーズボタンを押して、録音ポーズを解除し、そのまま読み進める。
一部分だけ録音をやり直す(はめ込み録音)
1.前述の「後追い録音」1-3又は「ポーズ録音」1-4で正しい文章を録音する。
2.訂正した文章の終わりで素早く停止ボタンを押し、録音を止める。
訂正した部分を確認するには
巻き戻しボタンを押して巻き戻してから再生ボタンを押して再生し、訂正部分の前後が消えていないか、消し残りはないか、読みの調子や音量、間(ま)などが適切かどうかを確認する。
問題があれば、もう一度やり直し録音をする。
紙の切り貼りのような感じなのだが、音は目に見えないので、訂正部分の前後の不自然さをなくすのには技術が必要だ。
当然、マイクの質や位置、音の反射/反響を防ぐ工夫なども求められる。
録音スタジオであれば全てが揃っているだろうが、録音図書の作成はボランティアの手によるものもあり、一般家庭であるから、その環境、その範囲内のコスト、あとは工夫でやることになる。
カセットの時代ではない
令和時点に於いては、マイク等の機器は安価で手に入り、パソコンがあれば編集もフリーソフトでできるので、カセットデッキ時代に比べると、格段に質の良いものが作成できる。
録音した波形を見ながらカット/コピー/ペーストすれば、不自然さもかなり小さくできるだろう。
無料で使える読み上げソフトの質も上がっているので、もう人が読む必要はないのかもしれない…
1994年前後の情報
TC-RX1000Tは、元は「TC-RX715T」として出てくる予定だった。
↑TC-RX1000T(1994年から2003年8月まで生産)
価格はオープンだが、39,800円程度(TC-RX715と同等)。
TC-RX1000Tの発売は、1994年6月末から開始。
限定生産のため、店頭展示はなく、取り寄せとなる。
発売直後は、以下のような問題が報告された。
1.新品でも雑音が入る。
2.回転が微妙におかしい。
1は、新品なので、ヘッドの磁化ではない。
2は、ピッチコントロール機能の問題?
録音レベルが下がるという事象があり、某所がSONYに問い合わせをしたところ、「あり得ない」との回答。
# TC-RX715と同じなら、確かにあり得ない。
ノーマルテープでも若干録音レベルが下がることが確認できたが、SONYのテープでは生じなかった。
TC-RX1000Tは2003年に製造中止となり、後継機として出たのがTC-RX2000Tである。
↑TC-RX2000T(2003年)
関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]
関連:[SONY] TC-RX715とTC-RX1000Tの比較 [兄弟機]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
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