カセットデッキでの録音レベルの調節/調整と、ARL(Auto Rec Level)について
カセットデッキでの録音で重要なのは、録音レベルの調節である。
録音レベルが低いと、「サー」というヒスノイズが目立ってしまうからだ。
音が歪(ひず)まない範囲で、できるだけ大きな録音レベルに調節することが重要である。
カセットデッキに於いて、REC LEVELのツマミが大きいのは、そのためである。
↑右上にあるのがREC LEVEL(TC-RX70)
ラジカセなどでは、録音レベルの調節ができないものが大半だが、その場合、歪(ひず)まないように無難な(=低めの)録音レベルになっており、音質が損なわれてしまう。
録音レベルの調節方法
FL管のピークメーターの右下に、録音レベルの調整範囲(バー)が表示される。
ノーマルとハイポジの場合は同じ範囲が示され、メタルの場合は異なる範囲が示される。
メタルの場合は、バーがより短くなるので、録音レベルをより上げてもOKということになるが…
TC-RX70の取扱説明書
テープの種類により特性が異なります。
このデッキでは、ピークレベルメーターにテープの種類(TYPE I、II、IV)による録音レベルの調整範囲が指示されています。
一番大きい音の時にピークレベルメーターの先端が各テープの調整範囲内に入るようにREC LEVELつまみで調節すると、雑音やひずみの少ない録音ができます。
解説:TC-RX70(1990年発売)
TC-KA3ESの取扱説明書
Turn REC LEVEL to adjest the recording level.
The recording level should not exceed the recommended level for the indicated tape type.
After doing the all adjestments, stop playing the program source.
関連:TC-KA3ES(1995年発売)
TC-KA5ES/TC-KA7ESの取扱説明書
テープの種類に応じて、最大入力時の録音レベルがイラストの範囲内になるように調節します。
関連:TC-KA5ES(1995年発売)
関連:TC-KA7ES(1995年発売)
いずれの説明も、録音レベルの調整範囲(バー)についてのしっかりとした図示と説明がされていない!
上述のように、メタルの場合は、録音レベルをより上げてもOKということになるが、指示通りに上げてしまうと、音が歪むことが多いので、バーが示す限度よりも低めにしておく方が安全である。
ARL(Auto Rec Level)
オートリバース機には、ARL(Auto Rec Level)機能が付いた機種がある。
ARL搭載機種
・TC-RX70:1990年発売
・TC-RX77:1991年発売
・TC-RX79:1992年発売
・TC-RX711:1993年発売
・TC-RX715:1994年発売
・TC-RX1000T:1994年から2003年8月まで生産
ARLはその名の通り、入力を監視し、自動でREC LEVELのツマミが回り、録音レベルを調節してくれるものだが、無難な(=低めの)調節になるので、ARLは使わずに手動で調節した方が良い。
特に録音図書作成には、低い録音レベルは厳禁なので、ARL(Auto Rec Level)機能は使わない方がよい。
AUTO REC LEVELの開始方法
(以下、TC-RX70の取扱説明書での説明)
AUTO REC LEVELを押す(AUTO REC LEVELのランプが点滅)。
REC LEVELつまみが自動的に動いて、録音レベルが調節される。
AUTO REC LEVELの点滅が終われば設定完了。
AUTO REC LEVELを解除するには、AUTO REC LEVELボタンをもう一度押す。
REC LEVELつまみを手動で回すと、AUTO REC LEVELは解除される。
サウンドオートフォーカス機能
サウンドオートフォーカス機能は、AUTO REC LEVELランプが点滅を始めた後に入力される音のうち、最大の音がひずまない範囲で、できるだけ高い録音レベルに設定します。
録音開始後に過大な音が入って来た場合には、違和感のないようにゆっくり録音レベルが下がります。
このため、ひずみや雑音の少ない録音ができます。
この機能を十分に生かすためには、録音を始める前に、プログラムソースの音量の大きい部分を演奏してレベルの設定を行うことをおすすめします。
そうすることで、録音を始めてから録音レベルが変化することが少なくなり、より自然な録音ができます。
知っていると便利な使い方
サウンドオートフォーカス機能では、AUTO REC LEVELランプの点滅が終了した後も、過大な音に対しては録音レベルを下げるように働きます。
この調節は、録音開始前であれば、素早く行われます。
録音を始める前に、AUTO REC LEVELボタンを押してから録音するプログラムソースをいったん最後まで演奏してみると、最大の音が確実に盛り込まれ、適正なレベルに設定されます。
録音レベルが正しく調節されない
プログラムソースに大きなノイズが含まれているときは、REC LEVEL(録音レベル)が正しく調節されないことがあります。
例えば、アナログレコードに針を落としたりするときに出るノイズや、レコード上の傷やゴミからのノイズが原因になります。
このようなときにはAUTO REC LEVELを解除してください。
録音レベルがなかなか上がらない
例えば、クラシック音楽のピアニシモの部分のように極端にプログラムソースの音が小さい時は、録音レベルの上昇に時間がかかることがあります。
これは、後に大音量が入ってくることをある程度予想して録音レベルの上昇を控えているためです。
このような時は、大きい音の部分を再生するか、そのまま待ってください。
それでも調節されない場合は、手動またはリモコンで録音レベルを上げて設定してください。
注:何度もARL(Auto Rec Level)機能を使っているが、自動で録音レベルが下がることはあっても、上がったのは見たことがない。
録音レベルが下がらない
REC LEVELつまみは、約3の位置以下には下がりません。
グラフィックイコライザーを使って音量を上げている場合などで、プログラムソースのレベルが非常に高い場合には、サウンドオートフォーカス機能ではレベルを調節しきれない場合があります。
そのような場合には、手動またはリモコンで調節してください。
そんなに都合よくは働かない
ARLをONにしている状態で、ソースの音量を上げると、自動で録音レベルが下がるのは確認できたが、ソースの音量を下げても、自動で録音レベルが上がるのは確認できていない。
「後に大音量が入ってくることをある程度予想して」とあるが、予想など不可能でしょ…
結局は、大音量が入ってから対処するしかないのであり、それを恐れてなかなかREC LEVELを上げられないのだ。
例えばCDを録音するとして、1曲目が大きめの音だと、自動で録音レベルが下げられるが、その後上がらないので、2曲目以降が静か目の曲だと、下げられた小さなレベルのままで録音されてしまい、結果、ヒスノイズが目立った最悪なテープが出来上がる。
ARLは「複雑な操作は面倒/嫌/できない!」という人向けの機能であり、質を求める場合には全く向かない。
だが、録音レベルが小さくても気にならない、AMラジオでのトークの録音などでは使ってもいいだろう。
TC-RX715やTC-RX1000TにはAUTO RECボタンがあり、これを押すと、AUTO CALからARLまで全部自動でやってくれるので、まさに一発ボタン、非常に楽ではある。
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