[SONY] PCM-701ES/PCM-501ES/PCM-553ESD [PCMデジタルオーディオプロセッサー]
PCMデジタルオーディオプロセッサー
「PCMデジタルオーディオプロセッサー」というのは、ビデオデッキと接続し、入力された音声をデジタルに変換、デジタルデータとしてビデオテープに記録するもの。
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テープデッキ(コンパクトカセット)での録音・再生では、テープやヘッド、テープ走行などの諸特性に制約され、原音のダイナミックレンジの再現には極めて難しい点があります。
PCMデジタルテープオーディオシステムは、連続的な音声信号をデジタル信号に変換し、2進法の0か1の符号に置き換えてビデオデッキで記録します。
そのため、ダイナミックレンジが広い、低ひずみ率、広周波数帯域特性、高セパレーション特性、ダビングによる音質劣化がない、などを特長とする、優れた音質の録音・再生が可能です。
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DAT(Digital Audio Tape)が登場する前なので、デジタルではこのような面倒な方法でしか録音できなかった?
関連:[SONY] DTC-55ES(1990年発売) レビュー [DAT]
機種
↑PCM-701ES(1982年) 168,000円
・幅430×高さ80×奥行375mm
・消費電力:35W
・重量:8.3kg
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↑PCM-501ES(1984年) 99,800円
・幅430×高さ80×奥行350mm
・消費電力:27W
・重量:6.0kg
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↑PCM-553ESD(1985年) 150,000円
・幅430×高さ85×奥行385mm
・消費電力:27W
・重量:6.0kg
PCM-501ESとPCM-553ESDには、ビデオデッキの長時間モードでの使用を可能にするOVC(Optimum Video Condition)調整機能が搭載されている。
PCM-553ESDは、PCM-501ESにデジタル入出力端子を追加した機種だが、5万円も上がっている。
デジタル入力ができると言っても、CDプレーヤーからデジタル入力すると「COPY PROHIBITING」と表示され、ビデオデッキへの映像が出なくなる(=コピー禁止)。
これは、PCM-553ESDに改造を施すことで回避できるが、令和時点ではそのようなことをしたところで、ビデオデッキへの録音などしないので(笑)
なお、海外機であるPCM-601ESDには、元からこの制限がない。
↑PCM-601ESD
1986年のカタログでは、PCM-553ESDが先に消滅し、PCM-501ESが残っているという事態であった。
PCM-501ESは「Hi-Fi オーディオ 1990年3月」にも掲載されている(上の画像)。
録画された映像
上述のように、録音は、ビデオテープに「録画」されるということになる。
では、記録された映像は、どのようなものなのか?
以下の動画で、録画物を見てみよう。
白黒の砂嵐風の映像だが、音楽が鳴っている時によく見ると、7本の縦線が記録されていることが分かる。
1本が誤り検出(CRCC:Cyclic Redundancy Check Code)で、残る6本で音楽。
関連:CRC(巡回冗長検査)
このような砂嵐系の映像は圧縮が不得手なので、YouTube(圧縮)では、劣化でまともに見れない。
録画機器
PCMデジタルオーディオプロセッサーで録音するためには、ビデオデッキが必要である。
だが、まともに動くビデオデッキ自体が入手困難になっている状況。
ビデオ入力端子(コンポジット/S端子)のある、今となっては古い、HDDレコーダーを使うという手を考えるも、どうも、録画は可能だが、上手く録音できないみたいね…
人の目には同じように見えても、微妙に何かが違うのだろう。
そこまで無理をして、強引に使おうとしなくてもと思うが、そういうのが面白いのだろうね(笑)
ピークメーター
FL管のピークメーターがあるが、本体には再生や録音機能がないため、ボタンが少なく、結果として、長めのピークメーターとなっている。
↑PCM-701ES(FL601 1-519-281-00 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)
↑PCM-501ES(501 1-519-320-11 INDICATOR TUBE, FLUORESCENT)
以下に、ピークメーターの長さを比較してみる。
幅は430mmと同じなので、横幅を合わせて縦に並べた。
ピークメーター左端の「L/R」の表示から、赤色の「OVER」の右端までの長さである。
緑色の線がPCM-701ES、桃色の線がPCM-501ES/PCM-553ESDである。
PCM-553ESDはPCM-501ESにデジタル端子を追加した機種なので、ピークメーターの長さは同じ。
PCM-701ESは、他の2機種に比べてピークメーターが長い。
ビデオデッキが必要
ビデオデッキと接続しなくても、再生機器のみを接続し、ピークメーターの動きを楽しんだり、ヘッドホン端子からの音を楽しむ、という用途もあるかと思いきや、それはできない。
何故なら、PCMデジタルオーディオプロセッサーのVIDEO IN端子と、ビデオデッキの映像出力端子を接続しておかないと、録音はできてもモニターできず、メーターも振れず、ヘッドホン端子からも音が出ないのだ。
つまり、録音しないとしても、ビデオデッキは必要となる。
まぁ、無理にビデオデッキを用意し、ピークメーターの動きを楽しむとしても、消費電力が27-35Wもあるので、電気代高騰の昨今、割に合わないだろう。
また、軽い方のPCM-501ES/PCM-553ESDであっても、重量が6.0kgと激重。
1984年のカセットデッキであるTC-K333ESですら6.2kgなので、それに匹敵する重さ…
入手性
2023年8月時点で調べた、オークションでの落札価格。
・PCM-701ES:5千円-1万円程度
・PCM-501ES:3-5千円程度
デジタル対応のPCM-553ESDは数が少ない上に信じられないほど高く、なんと3-5万円程度で落札されている!
令和にもなって、何のために、PCMデジタルオーディオプロセッサーを入手しているのか?
当時の録音物をデジタル化するためなのか、老人の懐古趣味なのか、ヤング(死語)の変な趣味なのか、それとも、海外への転売(オークション代行も当然含む)なのか。
カセットデッキ/カセットテープ(=コンパクトカセット)でも大概なのに、今頃「PCMデジタルオーディオプロセッサー」とは…
ダビング(コピー)
ビデオデッキとビデオデッキを接続して映像を「ダビング」することで、PCMデジタルオーディオプロセッサーで録音した音もコピーできるが、ビデオデッキの画質は今と比べると格段に悪いので、せいぜい1回のダビングが限度である。
↑14bit(SONY PCM-F1)
↑16bit(SONY PCM-F1)
2023年にもなって、色んなことをする人がいるもんだ…
関連:[SONY] CTD-S100(テキストディスプレイユニット) [CD-TEXT,FM文字多重放送]
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