[SONY] DTC-55ES(1990年発売) レビュー [DAT]
1990年に発売された、SONYのDAT(Digital Audio Tape)デッキである、DTC-55ESについて。
↑DTC-55ES 98,000円
後に書くように、ヘッドを破壊するスポンジ、複数の割れるギア、固着するグリス、液漏れするコンデンサ、ツメが割れるカセットリッド等、SONYタイマーをこれでもかというほど贅沢に満載する、豪華機である。
SONYのDATデッキでは、SCMS(Serial Copy Management System)に対応した最初のモデル。
SCMSに対応することで、従来機は不可であった44.1kHzのデジタル録音が可能となった。
1990年というと、カセットデッキでは…
・TC-K222ESL/TC-K333ESL/TC-K555ESL
・TC-RX70
あたりになり、メカデッキがTCM-200へ一新された前後に相当する。
関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]
DTC-55ESの価格は98,000円だが、カセットデッキの方は
・TC-K222ESL:59,800円
・TC-K333ESL:79,800円
・TC-K555ESL:99,800円
・TC-RX70:39,800円
となっており、DTC-55ESはES機の最上位であるTC-K555ESLに並ぶ価格。
↑1993年2月の某店のチラシ
旧メーカー希望価格:95,000円の品
特価:税別45,700円=税込47,071円(消費税3%)
TC-K555ESLは銅メッキシャーシなどがあるが、メカ部はTC-K222ESLやTC-K333ESLと同じ。
メカ部だけをDTC-55ESを比べると、明らかにDTC-55ESの方が高く、組立も手間がかかる。
コンパクトカセットに比べてDATが普及しなかったというのもあるが、儲けが少なく、止(や)めたかったというのが本音ではなかっただろうか。
SONYに限らず、日本のオーディオ各社は、DATのようなゴチャゴチャしたメカではなく、ソフトウェアとデータ(音楽ファイル)で全てこなせるよう、開発を進めるべきだったのだ。
定期的な清掃が必要、デジタルにしろアナログにしろテープが巻き込まれ損失、経年劣化し故障、修理時に面倒な調整が必要、それでも数年で再生できなくなるようなメカものは、長く続かないことくらい分かろう?
それを「日本人の得意芸」であるメカにこだわり、MD(MiniDisc)などの開発に注力した結果、Appleなどの台頭を許し、日本のオーディオ機器は全滅した。
内部
同時期のカセットデッキに比べると、何か古臭い…
天板にスリットがあるため、基板にホコリが載る!
底板が内部も外部も、錆の斑点が多数!
メカ部
見るからに面倒なメカ部!
側面にはゴムベルト(角型 折長100mm)が1本使われている。
細くはなるが、以下のセットの中のが使えた。
不良箇所
ピンチローラーはツルツルで固化しているが、
カセットデッキとは異なり互換品がないため、表面をアルコールで掃除して再使用せざるを得ない。
ヘッドクリーニング用のスポンジが劣化しボロボロになり、ヘッドに悪影響を与えている。
ボロボロの粉は回転ヘッドの側面に染み込み、除去は不可能だ。
ヘッドは抵抗なく回るので、固着はない模様。
ロータリーエンコーダーのギアに割れが生じている。
↑右下に割れ
これを放置すると、反対側も割れてギアが脱落、不動となる。
ロータリーエンコーダーは、詳細なギアの位置と取り付けの位置決めが必要となるので注意。
テープをロードさせるための金属製の環状ギアに固着は見られず、
↑左の黒いのが環状ギア
白いプラスチック製ギア2個に割れはなかった。
↑隙間のあるギアとその隙間から見える小さいのが割れるギア
環状ギアに固着があると、モーターと環状ギアの間にあるプラスチック製ギアは、力を受けて割れてしまう。
RFユニットを取り外し、分解。
金属板でシールドされており、ハンダで4点が止められているので、分解するにはハンダを除去する必要がある。
金属ケースを外し、基板上のコンデンサ(表面実装型)を見ると…
22uF 6.3Vのコンデンサのハンダ部が変色しており、液漏れの疑い大。
2個のコンデンサを撤去し、22uF 16Vを付ける(極性に注意)。
↑この後、脚に絶縁紙を敷く
表面実装型のコンデンサはこの時期の短波ラジオにも多数使われており、液漏れで悲惨な状況。
関連:[SONY] ES機の電解コンデンサの液漏れについて [カセットデッキ]
ボロボロになるスポンジや液漏れするコンデンサ、割れるギア、経時で固着するようなグリスを意図的に使用することで不動にする、これが世界に誇る「ソニータイマー」なのだ!
ヘッドホンボリュームに酷いガリがあったので、接点復活剤で対処、ガリは消えた。
REC LEVELにガリがあったので、接点復活剤で対処、ガリは消えた。
前面ボタンにも不良があるかもしれないので、接点復活剤を流し込む。
前面パネルを外す/付ける際、ヘッドホン端子の下にある銅箔に注意。
これがケースに接していないと、ヘッドホン端子の音がおかしくなる。
つまり、これはアースなのだが、こんな意味不明な設計、さすがは世界に誇るソニーの製品である!
リールメカ
リールメカのブレーキパッドが脱落しているので分解して貼り直す。
カセットリッド
ツメが4箇所あるが、全てプラスチックのためスグに割れる不良設計!
# カセットデッキも同じ。
FL管
時間を表示する7セグ+のパターンが、間延びしていて格好悪い。
カセットデッキにも7セグが使われているが、本機のそれは非常に格好悪い。
背面
・アナログ:IN/OUT
・デジタル:IN/OUT
・同軸デジタル:IN/OUT
DATとDDS
DATテープがない(笑)ので、動作確認ができていない。
DATテープは高いので、中古の入手を考えるが、中古でも高い。
DATをコンピュータ用に転用したのがDDS(Digital Data Storage)であり、テープカートリッジは同じで、互換性がある。
なので、DAT用にDDSテープを入手するという手がある(若干安価で手に入る)。
但し、DATで使えるDDSテープは、DDS-1の以下に限られる。
(テープ幅は全て3.8mm) ←コンパクトカセットとほぼ同じ
・DDS-1 60m 13.GB/2.6GB 120分
・DDS-1 90m 2GB/4GB 180分
・DDS-2 120m 4GB/8GB (240分)
・DDS-3 125m 12GB/24GB (250分)
・DDS-4 150m 20GB/40GB (300分)
DDS-2、DDS-3、DDS-4も形状は同じなのだが、テープ長が長すぎるので…
上記からも分かるように、テープ長の2倍が、録音可能時間(標準時)となる。
関連:[SONY] ESシリーズの変遷と比較(ESG→ESL→ESA→ESJ→KA*ES) [カセットデッキ]
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
追記:廃棄
隙間のあるギア裏面にギア欠けを確認、テープ届くもロードしないため、即座に廃棄いたしました。
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