[SONY] TC-K222ESAの不穏な動き(ロータリーエンコーダーの異常) [修理]

2023年6月5日



1991年に発売された、SONYのES機であるTC-K222ESAについて。

TC-K222ESA_カタログ
↑TC-K222ESA(1991年) 60,000円

以下のように、様々な修理を行い、問題なく動いていたのだが、

2023年の春頃から、不穏な動きが発生。

その現象とは、

・カセットを入れて扉を閉めると、勝手にテープが動き出す(再生や録音ではない)。
・再生でも早送りでもないスピードで、テープが動き出す。
・早送り/巻き戻し風のモーター音がするが、テープは止まっている。
・扉の開閉がスローになる。

などというもの。

再生/早送り/巻戻しなどを繰り返すと症状が消えることから、ロータリーエンコーダーの不良と判断した。

ロータリーエンコーダーは、カセットデッキのモードを切り替える部品。

ロータリーエンコーダー

その内部が汚れて接触不良が発生し、意図しない動作となるのだ。

モードを切替を繰り返すと一時的に直るのは、内部の汚れがロータリーエンコーダーの回転で移動して、接触不良がなくなるためだろう。

だが、スグに再発するので、ロータリーエンコーダーに手を入れなければならない。

作業開始

TC-K222ESAの上には4台のオーディオ機器が積み重なっており、TC-K222ESAは最下部。

TC-K222ESAは、5台の中で最も重い(7.1kg)ので、必然的に最下段となる。

TC-K222ESAが一番下
↑TC-K222ESAが一番下(笑)

なので、上の4台を移動させることから開始しなければならない。

当然、背面はケーブルだらけなので、この作業が一番面倒かも。

症状が発生も放置していたのは、これが原因である(笑)

電源を入れ、カセットリッドを外し、コンセントを抜き、天板を開け、メカ部を取り出す。

メカ部

送り側(左側)のピンチローラーのテープパス(21.0mm/21.1mm)を記憶しておく。

テープパス

メカの分解作業を進める途中で、アイドラーにギア欠けがないことを確認する。

関連:[SONY] アイドラーのギア欠け(X-3356-641-1) [カセットデッキ]

ロータリーエンコーダーに到達。

ロータリーエンコーダーに到達

ハンダ(5点)を外し、ネジ(2個)を外し、ロータリーエンコーダーを基板から外す。

ロータリーエンコーダー

これをこじ開け、綿棒で拭いてみる。

ロータリーエンコーダーの内部

新品の綿棒が真っ黒に!

ロータリーエンコーダーの汚れ

過去に何個もロータリーエンコーダーを開けてきたが、ここまで汚れているのは初めてでは?

この時点で、やはりロータリーエンコーダーが原因と確信した。

ロータリーエンコーダーの上下両方を無水アルコール接点ブライトで清掃し、

ロータリーエンコーダーと接点ブライト

ルーペ(10倍程度で充分)で、表面を観察。

ロータリーエンコーダーとルーペ

下の写真は清掃後だが、さらにヤスリで磨く必要がある(後述)。

ロータリーエンコーダーの下側

下の写真の接点も、中心に黒い部分が残っているので、ヤスリで磨く必要がある。

ロータリーエンコーダーの上側

接点研磨後、出た屑をアルコールで除去後、コンタクトグリスで摩耗防止。

ロータリーエンコーダーとコンタクトグリス

上側のピンを少し跳ね上げ、

ロータリーエンコーダーのピン

ロータリーエンコーダーを閉じ、異常なく回転することを確認したら、メカに戻す。

ロータリーエンコーダーの分解については、以下の記事参照のこと。

関連:[SONY] ロータリーエンコーダー(1-466-238-11,1-466-525-11)の分解と清掃 [カセットデッキ]

前回のメンテナンス時は、DirectDriveMotor(DDモーター)基板のコンデンサは、液漏れが見られずキレイだったので交換しなかったが、この際に交換しておく。

そうしないと、知らぬ間に液漏れ発生で被害拡大することになるし、当然、交換の際は、再度4台を移動させるコトになるからね。

コンデンサをニッパーで縦に切って破壊し除去する。

コンデンサをニッパーで破壊

足元のハンダの色が鈍かったので、やはり若干の液漏れはあったのだろう。

足元のハンダ

今回は、チップ型のタンタルコンデンサではなく、セラミックコンデンサを使用した。

セラミックコンデンサに交換

コンデンサの交換については、以下の記事参照のこと。

関連:[SONY] ES機の電解コンデンサの液漏れについて [カセットデッキ]

ついでに、ヘッドとピンチローラー、キャプスタンの掃除もしておく。

分解状態でないと、ヘッドはまだしも、ピンチローラーとキャプスタンの掃除はキッチリできない。

パーツクリーナーを付けた雑巾でピンチローラーを拭くと、かなり黒くなる。

黒くなくなったら無水アルコールで拭いて完了。

キャプスタンは、フライホイールを抜き、パーツクリーナーを付けた雑巾で軸を摘まんで拭き取る。

フライホイールを抜く際は、透明ワッシャー(左右各2枚)の紛失に注意ね。

組んだ状態だと、綿棒で撫でるレベルの力でしか拭けないので、分解の際にやっておくべきだろう。

ロータリーエンコーダーの分解とコンデンサの交換、ヘッド周辺の掃除を終えたので、組み直す。

送り側(左側)のピンチローラーのテープパス(21.0mm/21.1mm)を確実に合わせること。

仮組みの時点で動作確認をし、異常のないことを確認。

テープを入れて閉めても、変な動きをすることはなくなった。

以上で修理完了、そして上に4機を積み重ね、接続(笑)

これで当面は開ける必要はないだろう。

追記

以前よりは格段にマシにはなったが、完全には直っていない!

・ロータリーエンコーダーの基板側パターンの表面劣化及び摩耗
・ロータリーエンコーダーのピンの表面劣化及び摩耗

下の写真では、接点の上に黒い筋(スジ)が残っているが、

ロータリーエンコーダーの下側

この筋がなくなるまで、ヤスリで削るのが正解。


↑13分30秒にヤスリかけのシーン

この動画は荒々しいので、もっとピンポイントで正確にやるべきだろうが。

なお、何らかの理由でロータリーエンコーダーを交換する場合、ES機は高騰で高いが、メカがTCM-200の機種ならRX機にも同じロータリーエンコーダーが入っているので、ジャンクのRX機を手に入れるとよい。

関連:[SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について [カセットデッキ]

その場合は、新しいRX機(TC-RX2000T等)の方が良いだろう。

TC-RX2000T_カタログ
↑TC-RX2000T(2003年)

関連:[SONY] TC-RX2000T(2003年発売) レビュー [全国点字図書館協議会推奨]

新しいといっても20年以上は経過しているので、分解して手入れする必要があるが。

他の原因

今回は、予想の通り、ロータリーエンコーダーの分解/清掃で解決したが、解決しない場合、他に考えられる原因としては、リモコン受光部の故障。

受光部が異常となり、勝手に動作指令を出し、意図しない動きになるというもの。

かつてTC-RX70(1990年発売)で発生したことがあり、受光部の互換品(VS1838B)で対応した。

VS1838Bの現物

詳細は、以下の記事参照のこと。

関連:[SBX 1610-59] リモコン受光部の不具合と互換品との交換 [VS1838B]

他にも、ボタンを押した際に意図しない動きになる場合は、タクトスイッチの接触不良がある。

関連:[SONY] TC-K222ESAの基板修理 [カセットデッキ]

関連:[SONY] カセットデッキの修理について [サービスセンター]

関連:[SONY] 製造打切年/補修用性能部品保有期間/修理対応終了年 [オーディオ]

関連:[SONY] TC-K222ESJのメンテナンス [カセットデッキ]



Posted by nakamura