[SONY] 電源スイッチの不具合 [カセットデッキ]
電源スイッチの不良
SONY機では、概して左側にある、電源スイッチ(POWER)。
最近、この不具合が散見される。
電源が入らない
だけでなく、
・何度かON/OFFしないと電源が入らない
・電源が切れない
・何度かON/OFFしないと電源が切れない
・勝手に電源が入る
・勝手に電源が切れる
などである。
原因は、スイッチ内部の銅接点の表面に錆などが生じたことによる、接触不良だ。
もちろん、多湿等、劣悪な場所に保管されていたものには、この種の不具合が生じやすいが、良好な環境であっても、長い間、スイッチを動かさずにいると、摩擦が生じず、表面の錆が残ってしまい、蓄積され、取れなくなってしまう。
つまり、スイッチを動かしていない(=使われない状態が長く続いた)カセットデッキに生じがちでもある。
以前は問題なく動いていたが、10年前に使わなくなり押し入れに保管、整理のために出したら、電源が入らなくなっていた、というような場合は、この不具合の可能性が高い。
劣化必至のゴムベルトが伸びて/切れて/溶けてしまっても、電源は入るからね。
関連:[SONY] ゴムベルトの交換(型式と長さ) [カセットデッキ]
当然、100%電源ボタンが原因とは限らないが(Fuse切れ等)、
↑1-212-942-00 FUSIBLE 2.2 5%
電源操作の大元である以上、原因として疑うのは普通である。
謎の振舞
TC-RX70(1990年発売)は、電源スイッチの先が二又に分かれているため、不良のスイッチで電源を切ると、FL管は消えるが、モーター音とテープ窓は消えず、メカ側は動いたまま、という謎の現象が生じることがある。
また、順調に再生していたと思ったら、突然停止、かといって電源OFFかと思いきや、電源は入っている。
おそらく、勝手に電源が切れた後、再び電源が入ったのだろう(=スイッチ不良による瞬断)。
ゴムベルトの劣化やロータリーエンコーダーの不良、リモコン受光部の不良により、おかしな振舞をすることもあるが、電源ボタンの不良でも変な動きをすることがある。
関連:[SONY] ロータリーエンコーダー(1-466-238-11,1-466-525-11)の分解と清掃 [カセットデッキ]
関連:[SBX 1610-59] リモコン受光部の不具合と互換品との交換 [VS1838B]
瞬断は気付きにくいので、非常に厄介だ。
スイッチの分解と不具合解消
カセットデッキの天板を開け、前面パネルの裏にある基板を外す。
ネジ(機種により数が違う)とツメで固定されているはずである。
基板を取り出し、「POWER」のカバー(4-922-921-01)を引き抜くと、スイッチが見える。
スイッチは、簡単に分解できる。
スイッチの構造は、銅板をコの字型のブラシで挟み、ブラシが動いてON/OFFを切り替える、というもの。
銅板2枚にブラシ2枚、よって2組が格納されている。
接触不良の解消方法としては、銅板やブラシの表面を磨くことだが、銅板はまだしも、ブラシは微細かつ貧弱なので、磨くのは困難。
以下の動画のように、歯間ブラシを使って磨けないことはないが…
分解/組立時に注意しないと、ブラシは簡単に変形してしまい、その修復は困難。
なので、スイッチは分解せず、表面側の白い突起の隙間から、接点復活剤を流し込み、ON/OFFを繰り返すのが、確実ではないが安全。
# よくやる、ボリュームのガリを直す方法ね。
接点復活剤で狙うポイントは、以下。
↑赤矢印のポイントを狙う
銅板とブラシの接触面を狙うのだ。
だが、表面劣化の具合が悪いと、接点復活剤程度では直らないだろう。
その場合は、ジャンク機を手に入れ、他機から移植するという方法もあるが、それもダメになっている可能性がある。
同じスイッチ部品が採用されているRX機
・TC-RX70とTC-RX77とTC-RX79
・TC-RX711とTC-RX715とTC-RX1000T
関連:[SONY] TC-RXシリーズの変遷と比較 [オートリバース機]
但し、スイッチ周辺のケーブルや基板が異なる場合、スイッチのハンダを外し、スイッチだけを入れ替える必要がある。
↑基板やケーブルが異なるので丸ごとの入れ替えはできない
ハンダ箇所は5点。
ES機は、スイッチを押した感覚からも分かるように、上記のRX機とは異なるスイッチが使われているので、ES機の修理にRX機のジャンクは使えない。
なお、スイッチを動かした際の「カチカチ」という感触は、ブラシではなく別の部分で出しているので、カチカチ音の具合で不良を判断することはできない(=不良があってもカチカチ音はする)。
ついでに、TIMERとDIRECTIONに不良が出ている場合は、スライドスイッチに接点復活剤を吹き込んでおこう。
組立後、TIMERがRECになっていると、電源を入れた途端に録音が開始されるので注意!
必ず「OFF」にしておくこと。
SONYが修理を受けていた頃だと、SW BOARD(スイッチを含む一式)を交換して修理完了、となるのだが、2021年時点で、既に修理を受け付けていない。
関連:[SONY] カセットデッキの修理について [サービスセンター]
このスイッチはSONY独自のもので、汎用部品は使えず、新品は手に入らない。
生産から30年以上経過しており、各部の劣化は確実にあるので、自力で対処できるだけの知識や道具は持っておきたい。
関連:[SONY] モーター分解と静音化 [カセットデッキ]
関連:[SONY] アイドラーのギア欠け(X-3356-641-1) [カセットデッキ]
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