[AKAI] 知っていると便利な情報 [A&D]



AKAI(A&D)のカセットデッキであるGX-Z5000(1987年発売)の取扱説明書に記されている、「知っていると便利な情報」の内容。

GX-Z5000
↑GX-Z5000(1987年) 64,800円

関連:[A&D] GX-Z5000(1987年発売)のレビュー [カセットデッキ]

デジタルカウンターの使い方

カセットデッキのデジタルカウンターは、録音・再生の経過時間をMIN(分)SEC(秒)で表示します。

録音や再生を始める前にRESETボタンを押すと、総経過時間が表示できます。

また、曲ごとにRESETボタンを押すと、1曲の録音または再生時間が表示できます。

ピークレベルメーターについて

ピークレベルメーターは、短時間に次々と変化する信号のピーク値(最大値)を表示することのできる、応答速度の速いレベルメーターです。

常に信号のピーク値を表示しますから、特にダイナミックレンジの広く、しかもレベル変化の激しい信号を含む、デジタル録音ソース(コンパクトディスクなど)の録音レベルの監視に最適なメーターです。

このカセットデッキのピークレベルメーターは、IEC(International Electrotechnical Commission)規格に準拠して設計されています。

従って、規準レベル250nWb/mで記録した場合0dBを表示します。

このため、従来のVUメーターの規準レベルである160nWb/mを0として記録した場合のレベルを、このメーターでは-4dBの位置に0VUとして表示します。

また、ドルビーシステムの規準レベルである200nWb/mのレベルを-2dBの位置にドルビーマークで表示してあります。

これに対してVUメーターは、入力信号の平均値を表示します。

音量に対する人間の感覚(聴感)は、平均値に近い特性のため、VUメーターの目安に音量や録音レベルを調整すると、メーターの表示に比例してレベルを増減しているように感じられるというわけです。

このような理由から、VUメーターは放送局をはじめ、広く音量の監視に利用してきました。

しかしVUメーターでは信号のピークレベルを表示することはできません。

ノイズリダクションシステムについて

ノイズリダクションシステムは、録音に使用したものと同一のタイプで再生することにより効果があります。

再生の時に必ず録音に使用したノイズリダクションシステムを確認してセットしてください。

ノイズリダクションシステムを使用しないで録音したテープの場合は、ノイズリダクションシステムセレクターをNR OFFにセットします。

ドルビーB/Cタイプ NRシステムについて

ドルビーNRシステムは、テープヒスに代表されるノイズを低減するシステムです。

録音時は高域の弱い信号のレベルを高めて録音します。

再生時は、録音時に高くした量と同じ比率で高域の信号レベルを下げて元のレベルに戻します。

こうすると、テープのヒスノイズのレベルだけが下げられるため、S/Nの良い録音が可能になります。

Bタイプは、ドルビーNRシステムが登場した初期からのもので、特に高域(1kHzで5dB、5kHz以上で10dB)でのノイズ低減に効果があります。

Cタイプは、Bタイプと比べてさらにノイズ低減効果を高めています。

その違いは、Cタイプは中(500Hzで15dB)・高域(1kHz~10kHzで20dB)に渡ってノイズ低減を図り、低減量もBタイプより多く、さらに、大きな入力信号に対しても歪(ひず)みの少ない録音ができるアンチサチュレーション回路なども内蔵しているため、ダイナミックレンジの広い録音が楽しめます。

HXプロについて

HXは、ヘッドルームエクステンションの略称で、ヘッドルーム(飽和レベル)をエクステンション(拡大)することを意味します。

つまり、カセットの録音飽和特性を改善するシステムです。

ドルビーの名称が含まれますが、ノイズリダクションシステムではありません。

録音の場合、周波数が高くなるほど、録音する信号が録音の際に必要とする録音バイアスの性質を帯びてきます。

低・中域では最適な録音バイアスに調整されていても、レベルの大きな高域の信号が加わると、録音バイアスが増加したことになり、高域の飽和レベルが下がります。

このことは、特に高域成分の多く含まれるコンパクトディスクなどの録音では不利になります。

一般のデッキでは、全体の周波数帯域に渡ってバランスのとれる録音バイアスに調整されています。

HXプロシステムは、録音の時に録音信号に含まれる高域成分を検出し、その検出した信号を電圧制御のアンプに加えて、録音バイアスを微妙にコントロールします。

高域成分の多い録音信号の場合、バイアスを標準より少なくして飽和特性を改善して録音します。

この結果、ノーマルポジションテープを使用しても、メタルポジションのカセット並みの飽和特性に改善することができる録音システムです。

このように、ドルビーHXプロシステムは、バイアスを調整するシステムで、ノイズを低減するためのノイズリダクションシステムとは異なります。

また、ドルビーHXプロシステムは、録音用の回路に組み込まれていて、録音を行う場合、常に動作しています(スイッチでオン・オフすることはできません)。

このデッキで録音したカセットは、どのノイズリダクションシステムを録音に使用したのかを確認してセットするだけで、他のデッキでも問題なく再生することができます。

ノイズリダクションシステムを使用してFMエアチェックしたテープを再生すると音が変わってしまう場合

FMチューナーの出力信号にπろっを信号やサブキャリア信号が含まれ、ノイズリダクションシステムが誤動作しています。

このような症状の場合、MPX FILTERスイッチをオンにセットして録音をします。

FMステレオ信号とMPX FILTERスイッチについて

FMステレオ信号は、左右チャンネルを1つにした複合オーディオ信号と共に、独立した左右の信号に変換する場合に必要な可聴帯域外のパイロットトーン(19kHz)や、サブキャリア信号(38kHz)などが含まれます(FMのオーディオ帯域の上限は15kHz)。

多くのチューナーはFMステレオ信号からパイロットトーンやサブキャリア信号だけを取り除くMPXフィルターやパイロットローンキャンセラーなどが内蔵されています。

しかし、チューナーに内蔵したこれらの回路の機能が十分でないと、変換された左右のオーディオ信号の中にわずかに含まれ、ノイズリダクションシステムの誤動作の原因になります。

このパイロットローンやサブキャリアなどを取り除くのが、カセットデッキに内蔵されたMPX FILTERスイッチです。

通常の録音や再生では、オフにセットします。

テープダビング(テープからテープへのコピー)をするには

通常、テープダビングをする場合、アンプに2台のカセットデッキを接続してアンプを経由して行います。

アンプの説明書を参考に、接続や操作を行ってください。

カセットデッキ同士を直接接続してもダビングすることができます。

この時、録音レベルは、マスター(再生)デッキのメーターの表示レベルと同じになるよう調整します。

また、できるだけ録音条件が同じになるようセットします。

カセットデッキの電源をオンにすると

テープ走行が安定にしかも規定のスピードで録音・再生できるよう、キャプスタンが回転を始めます。

また、FLディスプレイ(蛍光表示管)が点灯します。

オートストップ

テープが一方のリールに巻き取られると、自動的にストップ状態になります。

バイアス・イコライザーについて

カセットテープをはじめ、オーディオ用テープには、テープポジション(ノーマル、クローム、メタル)に合わせて、バイアス、イコライザーについて表示されています。

バイアスは、オーディオ信号をテープに録音する時に加える交流信号の強さを表示したものです。

テープのポジション、性能に合わせて、一般には3種類が選択できるようになっています。

また、イコライザー(EQ)は、録音しようとするオーディオ信号の劣化を防ぐために必要な回路です。

録音の際に、オーディオ信号のある周波数以上の信号を強めてテープに録音し、再生の時には、逆に強められた同じ比率で弱め、元のオーディオ信号と等しく(等価に)する機能を持っています。

これをイコライザー(等価器、等価回路など)と呼び、バイアスと同等にテープポジションごとに設定されています(70μS、120μSなどとも表示されています)。

これらの2つの要素を使用するテープに正しく合わせないと、テープの性能はもちろん、カセットデッキの性能も十分に発揮できません。

また、正しい状態で録音しても、イコライザーを正しく使用しないと、正しい状態(正しいレベル)で再生することができません。

このカセットデッキには、カセットテープに設けられているテープポジション検出孔(CrO2、METALポジションテープなど)を利用して、最適なバイアスやイコライザーを自動的に切り替えセットするオートテープセレクターが内蔵されています。

カセットテープを入れるだけで、わずらわしいスイッチの切り替えの必要がありません。

すぐに録音や再生の操作が行えます。

ご注意

ツメの押されたテープに再び録音を行う場合、特に、クロームポジションやメタルポジションテープは、検出孔を塞がないよう、セロハンテープを貼ります。

録音バイアスと音質について

使用するテープに最適な録音バイアスより多めの場合は、テープに録音された音は、高域の信号に対して中域の信号が強調され、高域の音が減少します(中域のMOL:Maximum Output Level特性の改善)。

この時、歪みは、最適な録音バイアスで録音した場合より、わずかに減少します。

使用するテープに最適な録音バイアスより少ない場合は、テープに録音された音は、中域の信号に対して高域の信号が強調されます(高域の周波数特性の改善)。

この時、歪みは、最適な録音バイアスで録音した場合より、わずかに増加します。

基本的なバイアス調整のしかたについて

高域の音の変化に注意すると、バイアス調整の効果が分かりやすくなります。

以下の操作の調整用の信号には、FM放送のザーという局間ノイズを利用した例です。

①-20dB程度の一定の録音レベルで録音します。

②巻き戻して再生をします。

この時の音を確かめます。

バイアスが多いと・・・ゴーという低くこもったような音になります。

バイアスが少ないと・・・シャーというように高域の音が強調された音になります。

バイアスが適度・・・ザーという同じ音になります。

③BIASコントロールを調整します。

④もう一度録音と再生をして、バイアスの調整の効果を確かめます。

このデッキのリファレンステープ(調整用規準テープ)を使用して規準のバイアスで録音する場合は

BIASコントロールを0(ゼロ)に合わせます。

リファレンステープ

・NORMポジション:MAXELL UDI C-60
・CrO2ポジション:TDK SA C-60
・METALポジション:TDK SA C-60

ツインフィールドスーパーGXヘッドについて

このカセットデッキには、ツインフィールドスーパーGXヘッドが採用されています。

ツインフィールドスーパーGXヘッドは、1つのヘッドに録音専用のギャップと再生専用の2つのギャップを設けた、ユニークな構造のヘッドです。

外観は従来の2ヘッドシステムとは変わりませんが、電気的な構成はテープデッキの理想ともいえる3ヘッドシステムと同じ構成です(但し、同時モニターはできません)。

つまり、録音時には録音に最適なギャップ幅の録音ギャップ(4μm)でテープ上に記録、再生時には再生に最適なギャップ幅の再生ギャップ(1μm)でテープ上に記録された信号を取り出します。

このように、ツインフィールドスーパーGXヘッドは、1つのヘッドに録音や再生に最適な2つのギャップを備えたことが、このヘッドの最大の特長です。

しかも、ツインフィールドスーパーGXヘッドのヘッド材には、独自のローノイズフェライトを採用しています。

優れた動特性、電磁変換特性、耐摩耗性、ゴミが付きにくいなどの機械的な特性も長期に渡って維持することができる理想的なヘッドです。

従来のヘッドシステムでは、1つのギャップで録音や再生を行っています。

そしてそのギャップの幅は、録音と再生のバランスのとれる範囲の幅に選ばれています。

このため、録音や再生の特性を本当に満足しているとは言えません。

ツインフィールドスーパーGXヘッドは、さらにヘッド自体の音質を改善することからLC-OFC(リニアクリスタル無酸素銅)を巻線に使用しています。

ダイレクトリードイン・パワーイジェクトについて

このカセットデッキのカセットホルダーの開閉を、マイクロコンピューターと組み合わせた専用のメカニズムコントロール用のモーターで行っています。

開いたカセットホルダーは、AUTO MUTEボタンを除くテープ操作ボタンで閉じることができます。

カセットホルダーを開いた状態でカセットデッキの電源をオンにすると、自動的に閉じます。

もし、何らかの原因で約2秒以上カセットホルダーが閉じない場合、動作を自動的に中止し、カセットホルダーを開いた状態にします。



Posted by nakamura